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カテゴリ:読書(09~フィクション)
【送料無料】峠うどん物語(上) 「大事な話ってものは、たいてい辛気臭いものだと思うけどね、私は」 「……淑子にはもっと大事なものがあるんだよ、中学三年生なんだから。人が死んだとか、霊柩車がどうだとか、そんなものどうでもいいじゃないか。今は学校の勉強をしっかりやる時期なんだからな」 「ひとの生き死にってのは、一生モノの勉強だよ」 ぴしゃりと言った。「そんなことわからないで、あんたよく学校の先生なんかやってるね」-みごとに決まった。 淑子の祖父母は峠の斎場の前でうどん屋をしている淑子はそれを小さい頃からよく手伝っている。父母はいい顔をしない。峠うどん屋はホントは職人肌のおじいちゃんがつくる飛び切り美味しいうどん屋なんだけど、お客はみんな斎場に来た人ばかりだ。それも、亡くなった人の近親者じゃない、けれどもそのまま帰るには心が落ち着かない人たちばかり、「辛気臭い人たち」ばかりだ。それでも職人肌のおじいちゃんは黙々とうどんを打ち、世話好きのおばあちゃんは気を使い、時々忙しいときに手伝う淑子はそれとなく「一生モノの勉強」をするというわけである。 上巻では第四章の「トクさんの花道」がよかった。30年前に別れた妻が認知症で、死ぬ前になってトクさんのことしか言わなくなって会いたがっているという。トクさんは斎場の霊柩車の運転手をずーとしていた。けれども決してトクさんは会おうとしない。その理由が最後になってわかる。全く職人肌の男っていうのは、寡黙である。 霊柩車の車というは上のキンキラを外すと例外なくリンカーンだったり、ベンツだったり、高級車ばかりだ。だから利用するのはとてつもなく高い。これは単なる外見のこだわりだとばっかり思っていた。けれども、そうじゃない。トクさんが丁寧に車を運転するテレビ特番の「職人グランプリ」で優勝したように、中の棺を決して動かさないで運ぶにはやっぱり外車じゃないとダメなんだと納得したのでありました。「最後の最後ぐらいは、すごい車に乗るんだよ」というわけだ。 珍しく新刊本の感想です。図書館でたまたま借りれたので。けれども(下)のほうはちょっと油断したら予約がいっぱい。下手をすると、半年後になりそうなので、早々と感想をアップしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年10月11日 01時43分49秒
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