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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:邦画(12~)
映画評「洗骨」 昨年観た邦画ではマイベストです。監督・脚本は照屋年之(ガレッジセール・ゴリ)さんです。初めて作品に接しましたが、とても老練なつくりでした。郷里に帰った家族が絆を確かめ合う、という縮めれば身もふたもないないストーリーですが、実はそうではなくて、日本人が遠い新石器時代から延々築いてきた営みを振り返る壮大な叙事詩にも見えました。あるいは、良質な喜劇にも。 「風葬」は、酸性土壌の本土では古墳時代以来絶えて無くなった風習ですが、沖縄の離島、粟国島(あぐにじま)では残っています。風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらい、ようやく「この世」と別れを告げることになるそうです。 新城家の長男・新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の「洗骨」のために、4 年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきます。妻と子供は何故かついてきませんでした。実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)がひとりで住んでいます。生活は荒れており、恵美子の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末です。そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来るのですが、優子は妊娠していて、1人で産むと言い張ります。 奥田瑛二が、ホントにダメダメなオヤジを演じていています。途中まではありきたりな展開なのですが、優子の恋人(鈴木Q太郎)が登場した辺りから、笑いの「間」が絶妙に処理されていて、監督の芸人としての面目躍如たるものがあります。 「何故洗骨するのか、わかった。ぼくたちは、自分自身を洗っていたんだ」という作品を観なくてはわけのわからない長男の呟きは、実際そうなんだと思うし、沖縄の人でなくてもきちんと伝わります。証拠に映画館の観客の半分は、最後にはみんな泣いていました。全国の日本人の中にも風葬習俗は深層意識の中にあるのではないでしょうか。三回忌などの法事の習慣、村のはずれに結界を持つ田舎の村の構造、多くの部分で私たちは風葬を受け継いでいると思います。‥‥すみません。民俗学や考古学が大好きな、私の趣味満載のレビューになってしまいました。(2019年日本作品 レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年04月17日 10時49分49秒
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