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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:邦画(12~)
今月の映画評「新聞記者」 薄暗い内閣調査室の中の無数の所員が延々とパソコンに向かってカタカタカタカタやっている。内閣情報調査室官僚・杉原(松坂桃李)は、葛藤しながらもニセ世論作りのためのフローチャートを作っていました。 「こういう仕事増えましたよね」 官僚のひとりが呟きます。 「犯罪者でもないのに、公安が尾行して俺たちがスキャンダルをつくる仕事」 上司の多田参事官(田中哲司)は 「これも国を守る大事な仕事だ」 とうそぶきます。 悩む杉原はかつての上司に悩みを語ります。 「神崎(高橋和也)さん、言っていましたよ。官僚の仕事は国民に誠心誠意尽くすことだったって」 「過去の自分に責められるのは辛いな」 「杉原、俺のようにはなるなよ」 そして神崎は謎の自殺を遂げて、物語が動き始めるのです。 この内閣調査室の現状については、ウソかホントはわかりません。けれどもここまで突っ込んで描いた作品は今までありませんでした。SNSで現政権反対勢力を揶揄したり、フェイクニュースで埋まってしまうことがよくあります。まさかその震源地があそこなのだろうか、などと想像できる場面でした。一方、新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)は、切り込んだ記事を書いても「ベタ記事」とされてしまいます。そして告発情報をもとに、政府の恐るべき陰謀を暴こうと動き出すのです。 現政権批判は、「前川事件、詩織さん事件、文書改竄、森本問題」を彷彿させるものが出てきます。また、森本事件文書改竄に関わって自殺した財務局職員赤木さんの手記が今年3月に公表されましたが、正に同じような構造がこの映画でも展開されます。 ただし、ベトナム戦争時の機密文書を扱った米国作品「ペンタゴン・ペーパーズ」と比べると、こちらは純然たるフィクションとして作りました。私は、それに徹するならばラストはもう一捻り足りない。エンタメ的な仕掛けがほしい。韓国映画ならば、必ずあと二転三転ぐらいはやる。と、思っていました。邦画で、昨年のマイベストに選ばなかった理由です。 この映画の一番の驚きは、こんな作品でさえ、封切り時にテレビが一切タイアップをかけなかったことです。この見事な忖度社会。この作品が今年の日本アカデミー賞の主要部門(作品賞、主演男優賞、主演女優賞)をとると、一転、岡山県のシネコンは全館で上映という変り身も見せました。それでも、コロナ禍もあり、未だ観ていない方も多いでしょう。観ておくべき作品だと思います。(2019年藤井道人監督作品、レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年05月17日 07時47分22秒
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