|
テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:読書フィクション(12~)
「健康で文化的な最低限度の生活9」柏木ハルコ 小学館コミックス 小説で生活保護問題を扱うと大抵は「貧困ビジネス」が出てくるから、生活保護費を不正に盗る貧困ビジネスはセットだと勘違いする読者を意識してか、9巻目にしてやっと出てきた。制度と貧困ビジネスは、決してセットではない。ということを前提にして読んで欲しい。どうも今回はその序章っぽい。 10年前、労働運動との関係で、ひとつの貧困ビジネスの現場を見た。目の前に、倉庫の2階を薄い板で仕分けしてひと部屋として住まわせていた鰻の寝床があった。 「すごい!こんな地方都市にもあるんだ」 と、思った。 いつもしっかり実地調査をして、生活保護制度の実態を描くこのシリーズは、そんなわかりやすい場面は、過去の一コマとしてでしか描かない。 ここに登場する角間さんは、埼玉の無料定額宿泊所から逃げてきた生保受給者だ。生保が切れていないので、埼玉に帰るように勧める主人公・義経えみるを、角間さんは無言で振り返る。無口な男ではあるが、このシリーズを読んできた読者には、いろんな反論、言い訳、訴えを語っている事を「想像」することができるだろう。結局彼は埼玉に帰らず、空腹で雨に濡れているところを、貧困ビジネスのブローカーらしき人物に拾われる。 角間さんが無言で思っていた事はいったい何なのか。おそらくこのマンガの中では全面的に明らかにならないと思う。生保受給者には、その受給者の数だけのいろんな人生があり、そのひとつひとつの事情は、育成環境だったり、色や欲からくる人生の間違いだったり、運の無さだったり、病気だったり、ホントに様々で、ケースワーカーの仕事は、それを解決することではないからだ。ただ「勘違い・思い違い」は正すことができる。それが、それだけでも、正しい知識や判断を知らされる事はもしかしたら男の人生にとってはとてつもない人生の岐路になるのかもしれない。というようなことを、貧困な私の経験から思ったりもする。このマンガは、その経験を少しだけ豊かにしてくれる。 だから、この作品は出版されると取り寄せて読むようにしている。毎度のことながら、巻末の「教えて半田さん 住まいの貧困編」は、肯(うなず)ける事ばかり書いていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書フィクション(12~)] カテゴリの最新記事
私は今、海外で暮らしていますが、「健康で文化的な最低限度の生活」が憲法で保障されている国なんて、一体世界でどのくらいあるのだろうかと思います。
日本は本当に素晴らしい国です。 (2020年07月08日 14時14分38秒)
はんらさんへ
こんにちは。 それはね、お題目だけです。 ヨーロッパの映画なんて見ていると、やはり遅れているなあと思います。 例えば、本来給付を受けなくてはならない生活水準にもかかわらず受けていない人たちの割合は、ほぼ8割です。100%の国はありませんが、ヨーロッパは2-3倍は受けています。その他いろいろ。 でも、コロナでヨーロッパもどうなるか。 (2020年07月08日 16時28分41秒)
KUMA0504さんへ
>本来給付を受けなくてはならない生活水準にもかかわらず受けていない人たちの割合は、ほぼ8割 そうなんですね。@@ 知りませんでした!!! 常々、ヨーロッパの人たちは日本や韓国のように労働時間も長くないのにどうしてあんなに豊かなんだろう?と不思議に思っております。 (2020年07月09日 08時24分20秒)
はんらさんへ
実質賃金は、欧米諸国がずっと20年間右肩上がりなのに、日本だけ少し下がっている。それはおそらく、対等な議論ができない日本の教育のせいだと思うのだけど、日本はますますマス教育と詰め込み教育に舵を切っています。嗚呼! (2020年07月09日 18時26分14秒)
生活保護受給者は一律ではありません。この間、元暴力団の受給者が若い市役所職員を脅して死体遺棄事件に巻き込んだ悲劇的な事例もありました。若い女性職員が一人で活躍するというこの物語には嘘っぽさも感じます。
(2020年07月14日 18時32分08秒)
七詩さんへ
その一点だけで、ウソだというのはおかしなことです。 それとも、女性職員はいつも2人で男の部屋に入るという原則が、他の自治体にはあるという事実でも掴んでいるのですか? 私も危なかっしいなあ、と思っていますが、もしことが起きた時の対処の仕方に何か工夫があるのだろうか、とも思っていました。普通忙しい職員が2人原則で訪問するのは効率的じゃないですよね。その詳細まで描くのも、漫画の描き方としては違う気がします。 根拠が有れば、私は考えを改めますが。 (2020年07月14日 18時50分45秒) |
|