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テーマ:本日の1冊(3684)
カテゴリ:読書(ノンフィクション12~)
「禁忌習俗事典」柳田国男 河出文庫 面白かった事例をメモするとキリがないので、我が郷土に関する部分だけを記録する。いつか、話のタネになるかもしれない。 〈忌を守る法〉 ・「金忌(カナイミ)」阿哲。春分に近い戊(つちのえ)の日を地神の祭日とし、農耕は休み、鋤鎌などの金物を一切使用せず。 ・備中真鍋島では、忌小屋に女が入ることを山上がりと謂う。村は浜にあり、小屋はいずれも高い所に設けるからである。 〈忌の害〉 「産負け(サンマケ)」備前和気。 産の火に負けること。赤子祝い以前の家の者が漁の仲間に入ると、産負けして怪我をしたり、漁が当たらなかったりして人から忌まれる。故にこの祝いを早くすませて、世間を広くするという。 〈土地の忌〉 ‥‥今までは産血の忌が多かったが、ここではバラエティ様々。ホラー小説アイデアの宝庫(^^;)。 「袖もぎさん(ソデモギサン)」 薬師の辻堂のある処で、そこで倒れたら草履を捨てるか、または片袖をちぎって帰らぬと死ぬともいう(佐用)。 「縄目の筋(ナワメノスジ)」 岡山県では主にこの筋にあたる土地に家普請をすることを忌むが、或いはここで転ぶと病気になると言って、近寄らぬ様にしている処もある(佐用)。 この筋にあたる山々や尾根通りに、所々目立って大きな松があり、天狗が夜中に松から松へ飛び回る。これを天狗の羽音という。(備中吉備郡)。 普請するには何よりも先にこの筋にかかっておらぬか否かを確かめる(岡山歴史地理)。 「ナメラ筋」 縄目の筋を備前東部では魔筋、昔魔の通った跡という(邑久) 或いはナマムメスジまたは、ナメラスジといい、作州でもナマメスジ(久米)もしくは魔物筋という(苫田)。家作がこの筋にかかっていると病人が絶えぬといい、新たに建築する者は十分に警戒するのみでなく、単に通り合わせただけでも気分が悪くなることがあるといい、また化け物の出る処だと思っている者さえある。和気郡のそこの魔筋では、火の玉が通るともいう(岡山文化資料)。 「池鏡(イケカガミ)」 家の影が水に映る地形をいう。従ってまた川鏡も忌まれる。「神の正面・仏のまじり」という諺もこの地方にはあるという。仏のまじりとは墓場の後のことである(美作苫田)。 「物の忌」 ‥‥これもまた、バラエティ豊か。 「片目黒(カタメグロ)」 猫の一方の目のまわりは毛が白く、一方の目のあたりに色毛のあるものを飼うことを忌んだ(岡山方言)。 「忌まる行為」‥‥葬礼に関する忌が多い。つまり、葬礼には様々な作法があり、反対に平日ではその作法を絶対行わない様にした。そうやって、人びとは死の忌から注意深く逃れようとしてきたのである。 「一杓子飯(ヒトサジメシ)」 サジは飯杓子のこと。ヒトサジで盛った飯を食えば様々な悪いこと(継子にかかる‥‥つまり家族の何人か死ぬ等々)に遭うということ。此処で岡山の例は無いが、私はこれを一生涯守っている。ヒトサジメシは、お葬式だけにするもので、普段は必ず2回以上で盛らなくてはならない。と教わった。コレはいまだご飯を盛るという行為が無くならない限りは、日本全国で行われている言い伝えだろうと確信する。だよね?みんなしてるよね? 「一本箸」「一本花」 これも、お葬式の作法なので、平日は現代でも忌むのが普通。ただし、花を一本だけ立てるのは霊をこれに憑らしめる方式であって、古くは必ずしも葬礼の日だけに限らなかったのである。 岡山県に関する忌だけでも、ここまでで本書の約半分にあたる。書き出せばキリがないので此処で終わりにする。本書に選ばれた忌は多いが、それでもおそらく全国の忌行為の一部だろうと思える(箸の忌行為は多いが、此処には殆ど載っていない)。そのほとんどは、今は失われている。多くが、道具が無くなったり生産行為をしなくなったり又は科学的知識によって不要になったからである。反対に、新たな忌行為が出現している気がする。 「ラインにすぐ返事しないと悪いことが起きる」 「‥‥の家は祟られている」 「‥‥の道を一人で歩いてはいけない」 「‥‥をするとハゲる」 と、一部地域では言われている気がする。 100年前にはなかった忌は、ホントに、もっともっとたくさんあるだろう。 この100年で、 人の生活は大きく変わった。 人の気持ちは少しも変わらない。 だから、この本は3月に発行されて、決して安くはないのに10日で忽ち重版出来した。私もつい買ってしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年06月14日 09時18分09秒
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