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南伸坊「おじいさんになったね」(海竜社) 部屋でごろごろしていて、「無聊をかこつ」という古いいい方がありますが、こういうのを言うのでしょうかね。
チッチキ夫人もお出かけで、外のお天気はやたらによくて、でも、動く気がしない。パジャマから服だけは着替えてはみたのだけれど、畳の上に寝転んでしまって・・・、ふと棚を見ると、高野文子の「ドミートリ―ともきんす」(中央公論社)というマンガがはみ出ていて「ちょっと読んでみません?」と声をかけるので、引っ張り出してパラパラやっていると、なんだか偉い人がいっぱい出てきて、ちょっと、本格的に座り直そうかと姿勢を変えると、そこに、隣にあった本が落ちてきて、開いてみると、こっちが字ばっかりなのに、なんだか引き込まれてしまった次第で、こうして「案内」しています。 落ちてきた本が南伸坊の「おじいさんになったね」(海竜社)でした。装丁もイラストも文章も、みんな伸坊さんの仕事です。で、こんな「はじめに」から始まっています。 「ゲンぺーさん、おじいさんになったネ」とクマさんは言った。 先程、最初に手に取った「ドミートリ―ともきんす」というマンガには、湯川秀樹、朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎というビッグネームが登場するのですが、「おじいさんになったね」に登場するビッグネーム(?)は、「老人力」の赤瀬川原平、通称「クマさん」の篠原勝之です。マア、南伸坊も加えて三人ですね。 「うん?!こっちの方が面白そう。」 この気分は、本当は変ですね。両方とも、ただ並んでいたわけじゃなくて、一度は読んだことがあるはずなんですから。 で、まあ、そんなことは忘れていて、初めて読む気分でパラパラと読み始めて、笑うに笑えないことなのですが、なぜか笑ってしまったのがこの話です 「メガネに注文がある」 この辺りで、「案内」のまとめにすすもうかと思っていたのですが、ここまでお読みいただいて、あとは本をお探しくださいでは、ちょっとなあ、というわけで、とりあえず最後まで引用しますね。 〈引用つづき〉 2015年に出版された、このエッセイ集は「月刊日本橋」という雑誌に「日々是好日」と題して、2021年の今も連載が続いているエッセイをまとめた本です。 南伸坊さんは当時67歳、今のぼくと同い年で、エッセイで話題になっている「メガネの逃亡譚」はリアルな実感で理解できます。「おそるべき不条理」の世界も、笑いごとではありません。 そういえば、最近、後期高齢者の仲間入りをした知人が「毎日、新しいことばかりで、楽しいよ!」とおっしゃっているのを聞いて、「勇気づけられ(笑)」ましたが、まあ、「うれしい」ような、「かなしい」ような、恐るべき不条理の「大冒険」が、待っているのかもしれませんね。 残念ながら「はじめに」で登場した「クマさん」と「ゲンぺーさん」のエッセイ中での出番はありません。特に赤瀬川原平さん、別名、芥川賞作家尾辻克彦さんは、この本が出される前年、2014年に亡くなっておられて、まあ、残念ですが、思い出以外では登場しようがないということなのですね。 というわけで、このエッセイ集は「南伸坊とその家族」の「日常」の物語です。無聊をかこっていらっしゃる前期高齢者の方に最適かと思うのですが、いかがでしょう? こちらが「ドミトリ―ともきんす」です。お暇ならどうぞ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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