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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:邦画(05・06)
地元のシネコンが七周年ということで、現在ワンコイン上映というのをしている。今週は『三丁目の夕日』で500円で見ることが出来る。世評のように大傑作とは思ってはいないのだけど、幾つか確かめたいことがあって二回目の鑑賞をすることにした。
もともと山崎監督は特殊撮影の専門家なので、昭和30年代の風景はほとんどCGになるのではないか、と去年私は勘ぐっていた。ところが、たしかにCGも使っているが、それに負けないぐらい美術が素晴らしい。セットで町並みを再現しただけでなく、多くをロケで撮影したことで誰が見ても30年代の昭和を懐古できる内容になっており、そこが素晴らしかった。そして、滋賀やいばらぎでも撮影されたのであるが、多くは岡山県で撮影されたのである。そのあたりは私の「三丁目の夕日」ロケ地めぐり(写真付き)に書いてある。今回確かめたのは、それ以外の岡山県のロケ地である。以前記事に書いたロケ地以外に、一平が夏休み登校日であったことを忘れて走って向かう小学校が真庭の小学校らしい。竜之介と淳之介がやっぱり一緒に暮らそうと、ひしと抱き合うところは裸祭りで有名な西大寺の旧道である。そしてあとひとつ、玉島の通り町商店街の近くでやはり撮影しているらしい。どこかなあ、と思って気をつけてみていたのだが、どうも氷屋が冷蔵庫がきたため捨てられた昔の冷蔵庫(?)を恨めしそうに見ているところだと思う。あんな感じの井戸を見たことがある。改めて見て、つくづく美術と撮影は素晴らしいと思った。普通に撮ればいくら古い町をロケ地に選んでも30年代の雰囲気は出ない。映画とはやはり総合芸術なのだ。 もうひとつ確かめたかったことは、安倍首相の唯一の著書『美しい国へ』という書物の中で、この『三丁目の夕日』が絶賛されているのだが、それは正当な評価なのかどうかということだ。この中で安倍さんは書いている。 「家族のかたちは理想通りにはいかない。それでも「お父さんとお母さんと子供がいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ。」という家族観と、「そういう家族が仲良く暮らすのが一番の幸せだ」という価値観は、守り続けていくべきだと思う。」 という記述のあとにその例として、この映画のことを取り上げているのである。 ちょっと待てよ、と思う。 実はこの映画におじいちゃんおばあちゃんは出てこない。一平の家もいわゆる「核家族」である。田舎からの上京組なのか、戦争で失ったのか、都会ではこれ以降核家族が爆発的に増えていくのである。もうひとつの話の大きな柱として三流小説家茶川竜之介と身寄りのない少年・淳之介の「擬似家族」がある。淳之介は本当の母親に捨てられ、最後には本当の父親を捨て、竜之介を選ぶ。 安倍さん、あなたの言うように、「家族のかたちは理想通りにはいかない」。それでも、柔軟な形で幸せの形はあるのだ、そのことを明確に示したのがこの映画であって、「家族観」や「価値観」を「守り続けていくべき」などとは一国の首相が軽々しく言うことではないのだ。それでも「価値観」を国が押し付けようとしているのが、今度の教育基本法の改悪である。 安倍さん、あなたの言う「美しい国」というのはたとえば「三丁目の夕日」みたいな町なのだろうか。でもそこには、「二度と戦争はいやだ」という想いが満ち満ちている。一平の父親は戦場から帰ってきて、10数年、やっと家庭にテレビを迎えることが出来たことを一言演説しようとして、近所のみんなから「そんなことはいいから早くテレビをつけろ」とせっつかれる。医者の宅間先生は防空壕に逃げようとしたときに最愛の妻と娘を失ってしまい、心に大きな傷を負っている。集団的自衛権を認めて、憲法を変えて、「戦争が出来る国」に変えることが、あなたの言うイメージなら、ここの住民からはそっぽを向かれることでしょう。 19日に私は【転載歓迎】重大情報!共謀罪は10月24日法務委員会法案審議冒頭に強行採決か!? という情報を載せた。共謀罪が通ってしまったあとの世界は、あなたのいう「人と人とのあたたかいつながり」とは、無縁の世界が出来てしまいます。いわゆるスパイ奨励法であって、何しろよからぬことを企んだ時点で逮捕されるわけですから、一平の父親と竜之介のような本音の付き合いなんかも出来ようはずがない。とりあえず、日曜の補選で自民が負ければ、この流れを少しはせき止めることが出来ます。それ以降は、このようなよからぬ法案の芽を早くから摘み取ることが必要です。ものすごく大変なことですが。 この映画の最後、一平は叫びます。「当たり前ジャン。明日もあさっても、50年後だって、夕日はきれいに決まっている。」昭和33年から50年後まで、あと2年しかありません。本当に夕日はきれいに見えるのでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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