|
カテゴリ:洋画(12~)
9月に観た映画の後半です。9月は夏休み後で、例年2月と9月は、映画の力作が多い傾向があります。この9月もそうでした。
「天地明察」 滝田洋二郎 監督 出演 岡田准一、宮崎あおい、市川亀治郎、中井貴一 宮崎あおいは可愛いし、色っぽいし、しっかりしているし、最高の嫁さんだなあ。え?そんな話じゃあない? どうして一介の碁打ちがあそこまで才能を見出され優遇されたのか。その謎が解けなかった。 山崎闇斎が戦死を遂げたり、予め解っているはずの日食に大袈裟な演出を施すなど、白ける演出が鼻に付く。職人滝田監督の悪いところが出た。 洋書を借りて地図をつくったのはいいけど、あんな不完全な世界地図でどうして北京と日本で緯度が15度違っていたと正確に測れたのか。映画ではわからない世界だったような気がする。 in movix倉敷 2012年9月16日 ★★★☆☆ 「バイオハザード5 リトリビューション」 主演 ミラ・ジョヴォヴィッチ たまたま、券が手に入ったので、映画館でこのシリーズを初めて見た。内容は無いがシリーズ化されるのも理解出来た。全く退屈しないのである。昨日の敵は今日の味方、昨日の味方は今日の敵。日本マンガ(ゲーム)では当たり前の常識が世界の常識になりつつある。神と悪魔では通用しない価値観が世界を席巻しつゝある。まるでアンデッドの様に。 in movix倉敷 2012年9月16日 ★★★☆☆ 「夢売るふたり」 今のところ、邦画で「わが母の記」を抜き今年ベストの作品です。結婚詐欺は犯罪である。しかし、結婚前に恋人が男の開業資金を提供して援助するのは、美談である。貫也(阿部サダヲ)の妻の里子(松たか子)は言う。「何もウソをつく必要はないのよ。彼女たちの夢を少し後押ししてあげるだけ」 やっている事は立派な詐欺でも、火事で開業資金が足りないこと、妻もいることも隠さない、借用書も作成し借金のつもりでお金を貰っているから貫也は自然体のままで「ウソ」をつく。女性も多くは雲隠れされても「何か事情があったのよ」と自分に言い訳している。 「ウソ」と「真実」の違いは何なのか。「ゆれる」「ディアドクター」以来のテーマを、西川美和監督は俳優の見事な演技とスタッフ陣に支えられて、絶妙な作品に仕上げた。流石だ。風で揺れる木の葉から天気の移り変わりによる時間の経過の描写まで、ひとつとして無駄なコマがない。現代の邦画で、一コマ一コマにここまで緊張感持って観れる作品はほとんど無い。監督作品を見慣れていない人は、あいまいなラストに戸惑いを覚えるかもしれなあが、私にとっては明確だった。多くの観客は多くの解釈を持つかもしれない。人に語りたくて仕方なくなる。それが西川作品の魅力である。 唯一意味がわからなかったのは、里子がトイレから出てナプキンを装着する場面なのだが、誰か教えて欲しい。後で色々教えてもらった処によると、里子は「子供が出来ていない」ことに相当焦っていたみたいだ。それが、その後の展開に大きなドラマを生み出す。そういう意味で非常に重要な場面だったみたいだ。 貫也と里子は「夢を売る」商売を始めたのだから、それなりの報酬を得る。しかしこの商売はおそらくどこかで「人間性」をも売っていたのだろう。貫也よりも参謀役の里子の人間が壊れて行く様がこの映画の見どころのひとつだ。「告白」の時にはあの演技は偶然かと思ったが、松たか子、いい役者になった。 一方、田中麗奈は今回も脱がなかった。「源氏物語」の時は監督が悪いのだと思っていた。しかし今回で田中麗奈のわがままだと確信した。別に大勢に影響しないが、私は脱ぐべきだったと思う。そうでないなら、こんな役など引き受けなければいい。鈴木砂羽や松たか子の体当たり演技を見習え、と言いたい。 in TOHOシネマズ岡南 2012年9月18日 ★★★★★ 「こうのとり、たちずさんで」(91年作品) 監督 テオ・アンゲロプロス 出演 マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンヌ・モロー TVレポーター(作者の分身)が、アルバニアとの国境の町に難民の取材に出かける。そこで、突然失踪したある大物政治家に出会う。彼は何故失踪したのか、というタテ糸のストーリーはおそらく重要ではない。 冷戦の「崩壊」を受けて、とりあえず作れるところまで作った。そんな感じがする。当時のギリシャの政治状況が分からないので、上手く言えない。 大切な人は去っていく。難民の苦労と哀しみ。そんな曖昧なモノだけが、廃墟みたいな町を背景に語られていく。 相変わらず、長回しの映像は多くを語る。 男と女の出会いの場面。ダンスで騒がしいホテルの酒場で、男は様々な謎に囚われ、ただ酒を飲みに席につく。その最初から少女といってもいいような女がずっと背を伸ばして男だけを見つめている。隣あって座っても暫く男は女に気がつかない。一回見ても、物思いに囚われて直ぐに目をそらした。二回目、女が見ていると認識するが、直ぐに無視する。三回目、初めて女をしげしげと見つめる。その間女は塑像のように男を見つめている。男は、興味はもつが、やはり何を思ったか席を立つ。ふと振り返る。女は騒がしい酒場の中で男だけを見つめている。男はもう一度振り返る。気持ちが通じ合う。女が席を立つ。近づいてゆっくり男について行く。次の場面、男は黙って女を自分の部屋に招き入れる。次の場面、女のうなじに男が触ろうとして果たせない。次の場面、夜明けの酒場。男と女のセリフがそこで初めてなされる。男は女が誰かの名前を呼んでいたのを訊く。女は逃げるように去っていく。その間、約10-15分、饒舌なラブストーリーより、よっぽど内容があった。 最後の有名な(難民に振り与えられる仕事の)電柱作業人が処刑された人のように一列に空の中に浮かんでいるラストシーン。 一回見ただけではわからない映画でした。でも、もう一度見たいと思わせる映画。フィルムの劣化がかなり進んでおり、映画館で見るのは、これが最後だったかもしれない。それは、人と人との出会いに似ている。 inシネマクレール 2012年9月21日 ★★★☆☆ 「鍵泥棒のメソッド」 「メソッド」とは論理的に体系づけた方法。功術。功法。(はてなキーワードより) 映画にとって「冒頭」はとっても大事である。創る側にとってはそこで観客をどれだけ引きつけるか決まるし、観客にとっては「面白み」を冒頭である程度想像する。冒頭、部下10人ほどの前でキャリアウーマンらしき女性がびっしりのスケジュール帳を見ながら「二ヶ月後に結婚する事にした。相手はまだいない。候補があれば教えて欲しい」と宣言する。部下たちも冷静に反応する。美人で優秀だけど、ひとつ抜けている。面白いキャラである。私は末広涼子は好きじゃないのだが、これでこの映画楽しめると確信した。 さてこの作品、題名から見て「泥棒モノ」と勘違いしてはいけない。ネタばらしは出来ないのであるが、内田監督の作品は今までも、いかに観客を気持ちよく「騙す」か、というエンタメだった。今回も実に気持ちよく騙された。一番気持ち良かった。という事だけ言っておこう。おしまい。では、身も蓋もないので、この作品は演技という究極の「騙す」映画であるという事だけ言っておこう。 実際の主役である堺雅人について。彼は今回実にむつかしい役をしている。演技する役を演技しながら、いつもより下手に見せる役である。香川照之も演技を演技する場面はあるのだが、それよりも他の場面で我々を騙してくれる。更に凄いのは、それよりも凄い演技者がいた、という事だ(笑)。 (解説より) 第58回カンヌ国際映画祭フランス作家協会賞、鉄道賞、最優秀ドイツ批評家賞、最優秀ヤング批評家賞の4冠に輝いた「運命じゃない人」や「アフタースクール」でトリッキーな構成を構築し、国内外で高い評価を受けた内田けんじ監督のコメディ。殺し屋が転倒事故により記憶を失う場に居合わせた売れない役者が、こっそり立場を入れ替えてしまうことから起こる騒動を描く。「アフタースクール」「ツレがうつになりまして。」の堺雅人が後先考えずに行動してしまう売れない役者を、「キサラギ」「劔岳/点の記」の香川照之が殺気みなぎらせる殺し屋だったものの記憶を失くし自分が役者だと思い込む男を演じる。他、「おくりびと」の広末涼子らが出演。 in movix倉敷 2012年9月28日 ★★★★☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[洋画(12~)] カテゴリの最新記事
|
|