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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:洋画(12~)
今月の県労会議の機関誌に投稿した映画評はこれです。 「レヴェナント 蘇えりし者」 私はこれまで米国と日本のアカデミー賞の主要賞を獲った作品を、その年のマイベスト3に推した事はほとんどありません。それだけ私の映画評は偏っている事を先ず認めます。しかし、映画体験というモノは、一期一会です。人と人が恋に落ちるのと同じように、最終的には相性が合うかどうか、なのです。そして私のように年間129作(去年実績)観るような者でも機会を逸すれば見逃す事が多々あるのです。ちなみに、今年だけは結果としてマイベスト3(あと二つは「シン・ゴジラ」と「この世界の片隅に」)が、日米の主要賞を獲ってしまいました。 去年のアカデミー監督賞(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ)と主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)を獲ったこの作品を初めて観た時に、私の心は震えました。ずっと観たかった映像がそこにあったからです。 私は映画館で二回観ました。自然光のみで撮ったこの作品、リバイバル上映はまず無いと思ったので、映画館でもう一度観たかったからです。DVDで観る時には少なくとも次のことをお願いします。必ず部屋を真っ暗にして、雑音が無い環境で観ること。私もDVDで試してみましたが、不満はありますが、なんとか伝わるモノはありました。 シベリアで息子を殺された男の復讐劇というあらすじは、実は大きな意味を持ちません。 1800年代、人間が自然を破壊する直前、人間の文明が等身大で自然と相対することの厳しさを見事に映し出す作品でした。 灰色熊と互角に渡り合うディカプリオはすごいです。ここで彼は人間の持つ極限の能力と生命力を体現します。無から火を生み出し、馬を使いこなし、マイナス20度の極寒の地で生き延びる知恵を持ちます。納得の主演男優賞です。しかし、それでも彼が生き延びたのは偶然に過ぎない。キリスト教精神に満ちた隊長の判断と、インディアン族の知恵が示した助け合いが、彼を救いました。人間は、共同体の中でしか生きられないのです。 一方で、人間は争い殺し合う。ディカプリオの復讐と、酋長の娘が攫われたインディアン族の復讐劇が、同時並行で進みます。人間的な営みを嘲笑うかのように、隕石はシベリア平原に落ち、雪崩は一つの森をなぎ倒すだろう。「人間は野蛮だ」これは見事な文明批判の作品です。(米国2016年作品、レンタル可能) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年03月18日 13時21分37秒
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