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テーマ:映画館で観た映画(8350)
カテゴリ:邦画(05・06)
監督:是枝裕和 出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太、國村準、中村嘉葎雄、浅野忠信、原田芳雄、香川照之、田畑智子、上島竜平、千原靖史、木村祐一、加瀬亮、平泉成、絵沢萠子、夏川結衣、寺島進、石橋蓮司、
あだ討ちは必ずしも「恨みを晴らす」行為ではない。米を作る百姓、米を売る商人に対し、何も生産しない武士が「義」つまり「我は美しい」ということを示すための、社会的な示威行為としてのいわば「価値観の生産」行為なのである。(という言い方も出来るかもしれない。) あだ討ちのため長期出向している青木宗左衛門は剣は弱いし、とっくの昔に見つけていたあだ討ち相手には家族があるしで、あだ討ちする気がうせていた。 さて、日本人はイスラエルやパレスチナ、あるいはアメリカ帝国と比べると、「憎しみの連鎖」からは遠く離れている。けれども日本人には「世間体」がある。しかも「経済」までくっついてくるから、あだ討ちから逃げれない、と思っている。無責任な世間様はちょっとした「噂」にも過剰反応するし。(監督が現代日本の状況を憂えて作っているのは、もう誰が見ても明らかである。) にっちもさっち行かなくなったとき、青木宗左衛門がとった手段とは…… 「桜は散り際が美しい。だけど、孫さんが言っていたように、来年も咲くことがわかっているから、美しいと感じるのよ。」「私は嘘っぱちを奨励したのではないか……」と悩む宗左に、宮沢りえはそのように、優しく慰める。あだ討ちは観客がいてこそ、あだ討ちなのだ。「美しい物語」を作ることは罪ではない。その考えからは「寝込みを襲うようなテロリズム」は広がらない。「忠臣蔵」は美しい物語になる。陣太鼓は雪の降る12月14日の朝方にのみ鳴らされる。 木村祐一か古田新太に助演男優賞を! 監督の願いは私には届いた。でも、みんなには届くだろうか。 残念なのは、美術。がんばっているのだが、私はおもっいっきりリアルにつくってしまったほうが良いと思う。セットでつくりました、という映像の狙いはわかる。落語みたいな寓話を作りたかったのかもしれない。でも「貧困」がチープに感じる。貧困の場面ももっと深刻に描いても良かったのではないだろうか。その方が最後の場面で開放感を得られる。私のイメージは山中貞夫監督の「人情紙風船」。面白おかしく、やがて哀しい紙風船。あの長屋のセットは本当にリアルだった。まあ、あんな作品つくれ、というほうが無理か。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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