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2024.09.01
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カテゴリ:小説

滔々と紅 (本のサナギ賞受賞作)【電子書籍】[ 志坂圭 ]

 このレベルで本のサナギ賞つまり新人賞を取ったというのだから、日本における小説界は将来が頼もしい。
 まずよくできた話で感動した。
 東北の寒村から吉原に売られてきた駒乃の一代記だ。
 彼女は様々なエピソードをまといながら花魁まで上り詰める。
 そして真に彼女を思ってくれる男性と足抜けして都落ちし、長崎に至る。
 何より女郎街のしきたりをきちんとグリップして文章化した点、評価に値する。
 何より筆力が素晴らしい。
 映像が私の眼の前にはっきりと出てきた。
 難しい言葉と言えるのは特別な女郎街のしきたり等に関することくらいで、そのほかは、実にわかり易い言葉で書かれていた。
 だから、途中下車せずに一気に読むことができたのである。
 本作の魅力は、タイムマシンに乗って江戸時代の江戸吉原に行ったが如き描写だ。
 あるときは駒野が中心になり、またあるときは他の花魁の話になり、そして最後はクリスチャンになる。
 それらが淡々と語られる。
 本作は、新人賞を通り越した名作だと私は思う。
 小説家は、そもそも最初から生地が違うんだなとつくづく思った。
 傑作と呼ばれるためにまず新人賞を、なんて規制はまずないもんな。
 本作を書くための作者の取材力はなみなみならぬものがあった。
 そして特筆すべきはその筆力。
 これだけの作品を一気読みできたのはひとえに作者の筆力による。
 今後の作品がとても楽しみだ。(6/24記)





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最終更新日  2024.09.01 05:00:14
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