今日、何読んだ？

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飛騨いにしえ殺人事件 長編旅情ミステリー【電子書籍】[ 木谷恭介 ]​

　そもそもリアリティのないミステリーはだめだね。
　登場人物が警察庁と聞いて、それは役所でしょう、と言っているのに本作の探偵役になる警部殿が、警察庁にも特別な部署があるのです、と切り返しゴム印のついた警察手帳を見せるってか。
　あーあもうこの段階で読む気力を失った。
　ただ観光ガイドなら面白い読み物かもしれないけれど。
　それから作者が奥書で飛騨は下下の国などと解説しているところも面白い。
　本編は全くつまらないのに本編に書かれてある観光ガイド的な書きっぷりなんかは魅力的だから、この人は紀行文学でも書いておればいいのにと思った。
　それはともかくそもそも捜査官に事件の関係者が同行するものかね。
　そういうおかしなところ探しゲームだということか本作は。
　例えば円空に関する解説もわかりやすいし彫師、塗師の関係もきちんと取材している。
　なのに肝心なミステリーがいまいちなのが残念だ。
　今どき探偵役の目の前で毒を飲むやつがいるものか。
　つまり著者は有り余る能力を持っていながらことミステリーに関しては素人中の素人ということになる。　
　ミステリーの読み手を唸らせることなどほぼ不可能なことなのだ。
　だから先に書いたとおりいっそのこと紀行作家などになればいいのにと思う。
　そうでなかったら探偵役を警察官にしなければいいのだ。
　警察官を祭文語りにしてしまえば解決だったのではないのか。
　ああそれにしても本作を読んだ時間がもったいない。
　そう思われないように多くの作家は努力しているんだろうが…。