今日、何読んだ？

このミステリーがひどい！【電子書籍】[ 小谷野敦 ]

　さて本書は私のようなミステリーリーダーにとって座右の書というものかもしれない。
　しかし著者は本当にミステリーとりわけ日本のそれを丹念に読み継いでいる。
　そして適確な評をくだしている。
　それがとても小気味よいのだが…。
　森村に関しては著者と私では全くその評価を異にしますな。
　そもそも著者は私のように森村を，乱歩，正史，清張の延長上に乗せない。
　そればかりか森村を謎だらけの作家とし，私が全く無評価の西京の作品，天使の傷痕，を日本ミステリーNO1に上げているのだ。
　それはともかく清張に関する評価は著者に同意する。
　たしかに清張は短編型の作家だ。
　ようするに長編だとぼろが出る。
　私が，原作vs．映画の関係で，原作を凌駕した映画は，清張の砂の器だけだ，と指摘しているところ，著者は本作における大問題を論じていて，つまり電波で殺人をしてしまうという話なのだが，フムこれは確かに余計な話だったなと私は思う。
　この話がなくとも本作は，原作がつまらない分映画がぐんと脚色して全く別物に仕立て上げたと言ってよろしいのではないかと，著者の論を読んで思った。
　著者の正史に関する論評も解せない。
　正史を乱歩の亜流とする。
　そんな訳はないのだ。
　私は正史をキチンを読み上げた。
　その前に乱歩も読み上げた。
　その過程でこの両者の一方が亜流だなどという評価は間違っている。
　ということで，乱歩，正史，清張，森村，それに西京を入れた私と著者の評価は合う，合わないで考えると，○，✕，○，✕，✕ということになりますな。
　特に西京に関し著者がNO1に上げている天使の傷痕に関してはあらためて読んで見る必要性があるけれど，西京は，多作家症候群の権化であり，刑事法（刑法，刑事訴訟法）に疎く，そのうえ警察組織に関する取材力もなし，あたしゃあ彼に関してはミステリーを論じるに値しないと思っているけれどね。
　とにかく，天使の傷痕を読んでから第二ラウンドとしよう。

※：本書でバカミスとしてあげていた横山秀夫の，６４，の電話帳作戦の無意味さは，私は全くそのとおりだと思う。本書で，バカミス，という言葉を知ったが，これから使える言葉だなと思った。