テーマ:旅のあれこれ(9971)
カテゴリ:お菓子ツアー06~07
ツッカベッカライ・カヤヌマのお店の外壁には、格調高い双頭の鷲の紋章が飾られています。
双頭の鷲は、ハプスブルク家(オーストリア・ハンガリー帝国)の紋章であると同時に、東ローマ帝国、神聖ローマ帝国などの国でも紋章として使われていました。 先日、江戸東京博物館で開催されている『ロシア皇帝の至宝展』に行ってきましたが、そこでもロシア帝国の紋章として双頭の鷲が展示されていました。 今でもウィーンに行くと、そこかしこでこの紋章を目にします。 東と西を見据える二つの頭。 これを見ると、広大な領地を治める帝国の堂々たる歴史と伝統を感じますね。 ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ ツッカベッカライ カヤヌマのクッキーの説明書には、オーストリアのユーゲントシュティールという芸術様式の精神を、お店のイメージやお菓子づくりなどに反映させ、洗練された文化の再現をお届けします、とあります。 オーナーシェフの栢沼(かやぬま)氏はこの様式を「芸術の境界を捨て去り、素材の特製と機能に逆らわずに、形を求めていこうとするもの」と説明されています。 …? 私の記憶では、ユーゲントシュティールは、フランスのアール・ヌーボーと似た様式だったような。 優美な曲線、装飾過多とも評される貴族趣味…。 少し調べてみたくなりました。 1880年代から、「生活を芸術に」という思想の芸術家ウィリアム・モリスを中心に、英国で アーツ&クラフツ運動 が広がりをみせます。 産業革命の結果として、大量生産による安価な粗悪品が出回るのを憂慮したモリスは、中世の手仕事に帰り、自然を手本に美しいデザインを考案し、実用品に取り込むことによって生活と芸術を一致させようとしました。 ウィリアム・モリス『Blue Rose』(トレイ) 『ウィロボー』(カーテン生地) 英国発のこの運動はフランスのアール・ヌーボー、ドイツ・オーストリアのユーゲントシュティールへと大きな影響を与えていきます。 19世紀末から20世紀初頭にかけ絵画・彫刻・建築をはじめ家具のデザインや工芸品他、幅広い範囲にわたり、この世紀末芸術 ユーゲントシュティール が流行しました。 ユーゲント(青年)シュティール(様式、~風)の語源は、ドイツで19世紀末に創刊された雑誌の名前。 代表的な建築は、オットー・ワーグナーのマヨルカハウス、ウィーン地下鉄のカールスプラッツ駅の駅舎、黄金のキャベツと呼ばれる金色のドームののったオルブリッヒのセセッション(分離派会館)等。 2004年6月 ウィーン マヨルカハウス 外壁にマジョリカ焼きのタイルがついた集合住宅 現在でも普通に人が住んでいるというのは驚きですね。 絵画では、ウィーンではグスタフ・クリムト、エゴン・シーレ。 アールヌーボー で有名なのはアルフォンス・ミュシャ。植物の模様から長くゆるやかな曲線をとりいれ、優美な女性の姿と融合させた絵は現在でも人気を誇ります。 クリムト『接吻』 ミュシャ『百合』 パリの地下鉄の花模様の飾りもアール・ヌーボーの優美な姿を今に伝えています。 2006年8月 パリ シテ島 メトロ乗り場 その他、フランスのガラス作家のエミール・ガレ、アメリカの花瓶やランプシェード作家のティファニーなどもアール・ヌーボーを代表する人たちです。 エミール・ガレ 薔薇文レッドランプ (この写真はミーシュ・コマンによる限定復刻版) なるほど、ツッカベッカライカヤヌマの精神も「生活を芸術に」 日用品にも芸術を取り入れて… お菓子ツアー[14] ウィーンの薔薇模様にはハプスブルク家御用達の300年の歴史が に続きます お菓子ツアー2007春 もくじ へ お菓子と芸術はつながっている!と思われたら ↓を押して応援して下さいね☆ いつもクリックありがとうございます♪ 一日一回カウントされます。よろしくお願いしま~す。 薔薇ブログ 6月3日 「愛らしい妖精」は濃いピンク色の薔薇 へ 2007年 ガレットのパリ5日間お菓子の旅 もくじ へ 《お菓子作りの道具と材料》 (楽天)Homeへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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芸術ですね。。。
生活の中で生きる芸術は格調高い。 でも本物が自然に生活の中に取り込まれていると 心も豊かになりますね。 みんながみんなそんな生活は出来ませんけど・・・。 クッキーも上品で、ラッピングも贈り物にいいですね。 普段は見られませんから♪ (2007.06.05 15:27:30)
「生活を芸術に」という運動が、ヨーロッパからアメリカまで広がったのは興味深いことですよね(スペインのガウディまで、この流れの一環という説もあります)。
戦争と同時にあっという間にその流れが終わってしまったというのも、はかないことですが…。 植物など自然の形をヒントにモチーフを考え、実用品を芸術に高めていく、という試みは素敵なことですね☆ ツッカベッカライカヤヌマの格調高いクッキーから、どんどん知りたいことが増えてきて、面白いレポートになってしまいました。 本当に、自分のためだけに買って帰るには惜しいクッキーですが、それを楽しむのも心の贅沢?(なかなかできませんね~) (2007.06.05 16:14:43)
カヤヌマからこんなに深く掘り下げて知識を深めているガレットさん、尊敬します★
今月の講習会、8日が申し込みの〆なの。抽選に当たるように祈っていてくださいね。あのカヤヌマの美味しさの秘密が知りたい。。。 (2007.06.05 16:34:04)
…実は、もう一つ、カヤヌマから派生するテーマがあるんですよ♪
次の記事をお楽しみに~。 カヤヌマの講習会、えこすさんがあたりますように!!!せっかくこのタイミングであるのですから、なんとしても運を引き寄せてくださいね。 カヤヌマの美味しさの秘密はどこにあるのか?知りたいですね~~~~。 (2007.06.05 17:04:34)
『生活を芸術に』
実現させるのは難しいけど、お茶を飲むとき、いい茶葉を使い、素敵なカップアンドソーサーで優雅な気分で飲む、という簡単なことからはじめたいと思います。 ユーゲントシュティールのこと、聞いたことあるのですがすっかり忘れていました。 勉強になりました。 (2007.06.06 00:02:35)
ガレットさんの記事はホント凄いです~!
あらためて勉強になります(^o^)/ クリムトやエゴン・シーレ、オスカー・ココシュカなど、ウィーン世紀末芸術はとっても魅力的♪ カールスプラッツ駅など、日常生活の空間なのに、ホント芸術ですよね~! あと、最近知ったのですが、シェーンブルン宮殿の一角は、普通の市民がお住まいの賃貸住宅になっているんですね。 帝国崩壊後、住宅難の時代に貸し出して今に至るとのことですが、他の国ではあまり聞いたことがなく…(ウィーンって凄い!) これこそ究極の『生活を芸術に』!? 外国人は無理みたいですが、私も住みたい(笑) 生活芸術、とても恩師のようには参りませんが(^_^;)ぼちぼちいきます~ (2007.06.06 01:55:27)
こんばんは~。
ここに来ると 世界の歴史とお菓子の歴史 を学習出来ます。φ(..)メモメモス バラシイ。 ウィリアム・モリス・・・聞いたこと・見たことがあるって思っていたら 食器がセットでありました。(~_~;)デヘ これから 大事にします。 ほんとに お菓子と芸術はつながっている! デス。 (2007.06.06 01:57:04)
ガレットさんのブログって本当に教科書みたいに為になって面白いです。お菓子屋さんの紋章からウィリアム・モリスやミュシャにクリムトの名前まで出てくると思いませんでしたよ~。
ウィリアム・モリスが好きでいつか画集が欲しいと思っているんですよ~。ミュシャのも薄くて小さな本を持っているけど。アールヌーボーの植物モチーフのデザインや優しい色合いが好きです。 (2007.06.06 14:42:07)
『生活を芸術に』←これは、簡単そうでいて実は難しいテーマですよね。
>実現させるのは難しいけど、お茶を飲むとき、いい茶葉を使い、素敵なカップアンドソーサーで優雅な気分で飲む、という簡単なことからはじめたいと思います。 ↑ 紅茶の香りは、落ち着いた空間を演出しますね! 本当にほんのちょっとしたことから、雑然とした生活がアートに変わる…。難しいことですが、小物にこだわって楽しい生活にしていきたいですね~☆ (2007.06.06 17:04:26)
このあたりはtorteさんのお得意の分野ですよね?
私も好きな所なので、調べるのが楽しくて。なかなかコンパクトな記事にまとめられず、長くなってしまいそうで苦労しました。 torteさん 世紀末芸術(絵画)には、どこか退廃的な危うさがありますが、金箔を使って華やかにみえるクリムトと、自分の中へ中へ、深く入りこむエゴン・シーレが同じグループになっているのって面白いですよね。 エゴン・シーレは、実は苦手です。解説してくれる人がいれば別だったかも。 オスカー・ココシュカというのは未知の人。知らないことがまだまだ多い~。 >あと、最近知ったのですが、シェーンブルン宮殿の一角は、普通の市民がお住まいの賃貸住宅になっているんですね。 ↑ これ、知っています☆すごく面白いことですよね。現在は追加募集はないので、今から住もうと思っても住めないのだけれど、今現在お住まいの方は、住み続けられるみたいですね。 宮殿に住む!究極の住まいですね♪ (2007.06.06 17:32:15)
西洋史、大好きです。原点は「お姫様好き」なのかもしれませんが、今までバラバラに知っていた歴史の事実が、一つの流れにつながった時などは、感動しますね~。
英国に旅すると、必ずウィリアム・モリスの名は耳にします。 柳やお花の模様の壁紙やカーテン、タイルやカップ&ソーサー他、様々なものにそのデザインを見ることができますね♪ そのウィリアム・モリスがアールヌーボーに多大な影響を与えていたとは。 知れば知るほど面白くなってきます。 (2007.06.06 17:53:42)
…書いていて、途中で「文章、硬いな~。レポートみたい。」と思わないでもないのですが、え~い、いいや、書いちゃえ、と。
もとはお菓子からはじまり、色々な方向に発展するのって、楽しいですよ~。 ウィリアム・モリスの絵は、本当に上手に自然を表現していて、日本にもファンは多いですよね。私も大いに魅了されています。。 画集、素敵でしょうね~。見てみたいです。(絵の数は膨大?) ミュシャは、気づけば旅のお土産にミュシャカレンダーをいただいたり、実家にパネルがあったり、色々な場面でちょこっちょこっと目にしています。 サラ・ベルナールのポスターのシリーズもいいですが、お花と女性が組み合わせてある流れるような曲線の美しさが素敵! テーマも四季、音楽ほか連作になっているものもあり、こちらにも興味がひかれますね~。 (2007.06.06 18:12:55) |
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