カテゴリ:美術館・展覧会
18~19世紀にかけて活躍した宮廷画家 ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ Pierre-Joseph Redouté の描く 薔薇の絵 は、優しい色合い・ふんわりとしたタッチで知られ、薔薇に興味がある人はもちろん、それ以外の人もどこかで一度は目にしたことがあると言っていいほど色々な場面で装飾に使われています。
植物画家として名をなしたルドゥーテは、マリー・アントワネットに仕え、フランス革命後には、ナポレオン1世の皇后ジョゼフィーヌの元でマルメゾンの庭園に収集された膨大な数の薔薇を描きました。 水彩画をもとに作られた銅版画をまとめた『バラ図譜(Les Roses)』は、芸術・植物学の両面から多くの人々を魅了し続け、当時の薔薇を知る貴重な手がかりとなっています。 ルドゥーテ生誕250周年を記念して東急文化村ザ・ミュージアムで開催された「薔薇空間」を、最終日の前日、駆け込みで見てきました。 ↑これらの薔薇は、16世紀頃出現したといわれるケンティフォリア系 左は ロサ・ケンティフォリア・クレナータ Rosa centifolia crenata 現存しているかどうか不明 右は ロサ・ケンティフォリア・ブラータ Rosa centifolia Bullata レタス・ローズという色気のない別名が。(葉が縮れた感じになるため) 今回は、ルドゥーテの『バラ図譜』に描かれた全169作品に加え、他に画家二人と写真家一名の作品も展示されていました。 まずは、ルドゥーテの作品の数の多さにびっくり。そして、私を含め、鑑賞している皆が「きれいね~」「すごいね~」「素敵~♪」と、一様にほわ~~んとした幸せオーラを放っていたのが面白かったですね。 花の中でも薔薇は特別。薔薇好きな人って多いのではないか、と改めて思いました。 私が最も注目したのは、マリー・アントワネットが肖像画の中で手にしている薔薇。 この薔薇も、しっかりルドゥーテにより描かれています。 ↓右 左はヴィジェ・ルブラン(Vigée-Lebrun)夫人によるマリー・アントワネットの肖像。 手に持つ薔薇の名前は、ロサ・ケンティフォリア Rosa centifolia 意味は「100枚の花弁を持つ薔薇」。 ロサ・ケンティフォリア(オールドローズ) 現存し、ダマスク系の強い香りを持つため香料採取用の薔薇として栽培されることがあり、現代の薔薇の多弁化に影響を与えているとされています。 当時の画家がこぞってこの薔薇を描いたというだけあって、重なりあう花びらが生み出す微妙な色のグラデーションがとてもロマンティック 同様に花びらが多いモダンローズのピエール・ド・ロンサールと比べてみて下さいね。 2008年6月2日 他に歴史的な薔薇は、1455~85年の30年間にわたって英国で王位継承を巡り争われたばら戦争の、紅薔薇を旗印としたランカスター家、白薔薇を掲げたヨーク家の各々の薔薇も今回の展示の中にありました。 ランカスター家の紅薔薇 ロサ・ガリカ・オフィキナーリス Rosa Gallica officinalis ヨーク家の白薔薇は ロサ・アルバ・フローレ・プレーノ Rosa alba flore pleno ではないかと言われています ルドゥーテは、大輪で華やかな紅薔薇を格調高く描き、純白の薔薇は白い紙に印刷するのが難しいため周りに葉や蕾を配し、花びらの白を浮き立たせています。 ルドゥーテの描く薔薇は、細部に至るまでとても緻密に描かれています。 ただ、超・写実的だから人気があるのではなく、首の傾げ方の風情、今にもひらっと風になびいて動き出しそうに見える様子が、単なる写生を越え芸術の高みへと入り、見る人の心を捕らえるのかな、と感じました。 ルドゥーテの薔薇は、まさに他の誰が描く薔薇の絵とも違った、独特の趣があります。 やっぱり彼の描く薔薇が大好きです。 『バラ図譜』 ルドゥーテ 薔薇に夢中!と思う方は ↓を押して応援して下さいね☆ いつもクリックありがとうございます♪ 《ガレットのお菓子日記》 Home 2008年 春の薔薇 もくじ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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うっとりと思い出させてくださるレポート嬉しく読ませていただきました。
何年か前にも文化村でありましたよね?そのときコンパクトなTaschenのRosesという本があり、座右の著となって、うっとり眺めております。わたしのお庭マンマルメゾンには「ルドウテ」というイングリッシュローズもお迎えし、一季咲きなので、後回しにしたエンブレスジョゼフィーヌやナポレオンもそろそろお迎えしようかな~と思っています。マルメゾンの庭師アルディの奥様に捧げられたマダムアルディはもうお越しです。お友達の画家さんもルドウテのバラに魅了され、今年は水彩で植物画に挑戦されるとはりきっておいでです。バラはほんと魅了される人多いと思いますよ~、特にオールドローズの優しさ、香りはお薬だったというわけがわかるようです。ピエールドロンサールにも香りがあれば最高ですのにね~・・・ (2008.06.19 11:13:54)
>何年か前にも文化村でありましたよね?そのときコンパクトなTaschenのRosesという本があり、座右の著となって、うっとり眺めております。
↑ 文化村では、素敵な催しがありますね。私は薔薇の絵画の展覧会に行くのは今回が初めてです。図録を買い、眺めてはため息、それこそうっとりとしています♪ >わたしのお庭マンマルメゾンには「ルドウテ」というイングリッシュローズもお迎えし、一季咲きなので、後回しにしたエンブレスジョゼフィーヌやナポレオンもそろそろお迎えしようかな~と思っています。 ↑ 薔薇の名前には、歴史上の人物もあり、その人柄を想像してしまいますよね。 なんと!うちの庭にも「ルドゥーテ」の薔薇があったそうですが、夫が薔薇を育てた最初の年に咲き、そのまま滅びてしまったようです。その頃私はガーデニングに興味がなかったので、「ルドゥーテ」がいたことに気づかずにすぎてしまいました。 どんな花だか見たかったです! (2008.06.19 11:33:24)
薔薇空間展も、書く人が詳しいと、こんなに魅力的な内容が伝わるのね~と感心してしまいました。項目をクリックして、薔薇のページもうっとり拝見しました。バラクラに行ったり、家で育てている人にぜひこのページをおススメしたいです。
消毒や肥料、とげと格闘しながらの枝の管理、つぼみも時期でなければつんでしまうなど、品種によって誤差はあれど、薔薇を育てるのは本当に大変そうというイメージです。 でも咲いた花たちのなんと立派で美しいことかと思います。 (2008.06.19 19:47:13)
私も行きました。薔薇の香りのする空間素敵でしたね。ガレットさんのブログを読んで、ウンウンとうなずいていました。
ルドゥーテの白い薔薇のアンティーク版画を持っていらっしゃる方がいて、白い薔薇を白い紙に印刷するのは難しいと展覧会の説明に書いてあったのをみて、「そうかあの版画は普通のよりも価値があるのね」と一人でつぶやいていました。 (2008.06.19 21:03:04)
美しい薔薇を美しいままに絵に表現する・・・
素晴らしいですよね~。 これはまさしく見るものを魅了してしまうはずです! また機会があったらぜひ私も行ってみます!(^^) 本も欲しいな~・・・(*^^*) (2008.06.19 21:03:51)
こんばんは。
我が家のバラでどうしてもうまく咲かせることが出来ない種類のものもこのように花びらが薄く幾層にも重なり合って繊細なものです。(写真で見ると) 雨に当ててはならないと聞いているのですが、こんなにも手こずるとは思いませんでした。 この絵は独特の空間画とでもいうのでしょうか。ぷっくりとした蕾も可愛らしい感じですね。 (2008.06.19 21:52:05)
>薔薇空間展も、書く人が詳しいと、こんなに魅力的な内容が伝わるのね~と感心してしまいました。
↑ いえいえ、そんな☆ 「きれいでした♪」の一言で終わってもよかったのですが、“マリー・アントワネットが手に持つ薔薇がルドゥーテの絵にも描かれていて、しかも現存する”と知ってしまったからには、色々調べたくなってしまって。 こういう性格です☆ >項目をクリックして、薔薇のページもうっとり拝見しました。バラクラに行ったり、家で育てている人にぜひこのページをおススメしたいです。 ↑ ありがとうございます~。薔薇のページ、一気にご覧いただけたのですね。 実はFC2にもう一つブログを持っていまして、そちらを薔薇ブログにしていたのが、最近楽天がメインになってきたので、楽天にも薔薇コーナーを設けました。去年の薔薇のご紹介も、そのうちにしますので、またご覧くださいね。 薔薇は確かに手入れがたいへんです。 ほとんど夫がしてくれているので感謝・感謝ですが、私もお水をあげたり、丁寧に花ガラをカットしたりはしていますよ~。虫との闘いもありますし…(虫、苦手です!)。 薔薇を育てている人は、皆、それを乗り越え、美しい花を楽しんでいるのですね。 (2008.06.19 23:43:27)
>私も行きました。薔薇の香りのする空間素敵でしたね。ガレットさんのブログを読んで、ウンウンとうなずいていました。
↑ そうでした!香りのことを書き忘れていました~。 美しい薔薇の絵を眺めていると、コーナーコーナーにボックスがあり、近づくと色々な薔薇の甘い香りがしていましたよね。面白い試みですね。 >ルドゥーテの白い薔薇のアンティーク版画を持っていらっしゃる方がいて、白い薔薇を白い紙に印刷するのは難しいと展覧会の説明に書いてあったのをみて、「そうかあの版画は普通のよりも価値があるのね」と一人でつぶやいていました。 ↑ 趣味の良いお友達をお持ちでいらっしゃいますね。 確かに白い紙に白い薔薇の絵を印象的に描くため、ルドゥーテの工夫は素晴らしいですね。 私も、質の良い複製画を買いたいな、と思いましたが、一枚だけというわけにはいかず、こういう絵は最低2枚はないと格好がつかない…と迷い、買いそびれました。並べて飾ったら素敵ですよね。 (2008.06.19 23:48:35)
>美しい薔薇を美しいままに絵に表現する・・・
>素晴らしいですよね~。 >これはまさしく見るものを魅了してしまうはずです! ↑ 会場は女性が多く、一様に幸せな顔で「ほんとうに素敵~!」とつぶやきながら鑑賞している人をよくみかけました。 これだけ評判がよければ、また「薔薇」をテーマにした展示が行われるかも??楽しみですね。 (2008.06.19 23:51:03)
>こんばんは。
>我が家のバラでどうしてもうまく咲かせることが出来ない種類のものもこのように花びらが薄く幾層にも重なり合って繊細なものです。(写真で見ると) ↑ happyhouse33さんも“薔薇に魅せられた”一人なのね。その気持ち、わかります~。 去年美しく咲いていた薔薇でも、今年はあまり花がつかなかったり、思った場所に咲いてくれなかったり、本当に難しい! 多弁の花は上手く咲くと実に華麗なので、次のシーズンにはきれいに咲かせられるといいですね。 薔薇って生き物なんだわ~、とつくづく思います。 >この絵は独特の空間画とでもいうのでしょうか。ぷっくりとした蕾も可愛らしい感じですね。 ↑ 蕾・茎・葉にそれぞれに表情があり、柔らかな花びらをいい感じに引き立てています。 他の方が描かれた薔薇の絵も拝見しましたが、一種独特な軽やかさ・優しさのあるルドゥーテの絵に最もひかれました♪ 可愛らしさもあるんですよね~。 (2008.06.19 23:56:54) |
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