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カテゴリ:・・表現よみ(音読・朗読)指導の実際
読解をしないで音読という国語の授業がはやっています。 読解を軽視した音読は、読解の力もつかないし、音読(朗読・表現よみ)も薄っぺらなものになってしまいます。この風潮は、国語科教育の危機とでも言えるのではないでしょうか。 このことについて、考え、提案をします。 国語科としての表現よみ(朗読)の意義
1 はじめに
昔から、「読書百ぺん、意、自ずから通ず」ということが言われて来ました。これは読解と暗誦の利点についての長い間の一定の見方です。たしかに、読まないより、読んだほうが意味は通じる事は確かです。 しかし、百回読んでも、通じない場合があります。いわゆる、歯が立たないという状態です。これには、基本的なコトバなどがまったく分かってない場合がそうなります。英語の単語の意味がまったく分からないのにそれを読んでいるような状態です。 こういうことを続けていると、子どもは、読むことが嫌いになってしまい、読むことの苦手意識ができてしまいます。 また、「とにかく、名文を暗誦しろ、後で、役に立つから」などとも言われて来ましたが、これは、意味が理解できていた方が、どんなにか楽しく、自然に体に入ることでしょうか。
2 表現よみは、表象化・情感化するので、生き生きした読解になる A 表象化・情感化の重要性 表象化・情感化が表現よみの実践報告で、どのように使われているか、見てみましょう。 佐山幹夫さんは、『子どもと教育』(ルック・2004年5月号)で次のように使っています。 「『ちく たく てくは一年生だ』で、物語文のおもしろさは、お話が次はどう展開するか、その現場に居合わせたように、はらはらどきどきしながら(表象化・情感化)読むところにあります。」 私は、田村 操さんの実践を引用して次のように述べたことがあります。 単語が分かり、文構造も分かり、内容を理解して、表象化・情感化しながら音声化すると、体で感じて、感覚的にも分かるようになる。これが、ここで述べる表現よみが目指すことばの理解のことなのです。 教科書の文学作品の指導で、作品の理解は、ほとんど、しないで、すぐに、音読をするというのがありますが、これなどは、活動主義といわれています。・・・中略・・・・ 文学作品の言葉・文・文章には、感覚的な面(視覚・聴覚・嗅覚・皮膚感覚・味覚・・・いわゆる五感)がともなっています。ですから、文学作品の言葉、文、文章を読むと、これらを感じる事になります。 それと同時に、情感がわき起こります。このことを情感化といいます。表現よみでは、表象化・情感化を深めながら音声化をします。そして、このことは、話しの展開を楽しむこと、批判すること、人生を考えることを豊かにしてくれます。・・・中略・・ 次は、田村 操さんの実践です。 「くじらぐも」 なかがわ りえこ 作 ・子どもたちとくじらが同じことばのやりとりをして 「天までとどけ、一、二、三。」 と子どもたちがジャンプし、 くじらが「もっとたかく。もっとたかく。」 と応援するところは、子どもたちが大好きです。 だんだん高く跳ぼうとして声を大きく、高くしながらはりきって表現します。 動作化も含めながら、作品の中の子どもたちの動作や気持ちをあたかもその場に一緒にいたかのごとくに理解することができたからです。
「天までとどけ、一、二、三。」 「もっとたかく」 を表現よみの指導をすることで子どもたちのジャンプの状況(様子)が視覚に浮かんできます。 また、聴覚にひびいて聞こえて来て、自分の体も飛び上がるような感じになります。 そして、子どもたちの心情も伝わってきます。 つまり、五感を働かせて読み、表象化・情感化を深めていっているのです。 応援するくじらの声、気持ちも伝わって来ます。これも、表象化、情感化されたからです。そして、田村さんは、「作品の中の子どもたちの動作や気持ちをあたかもその場に一緒にいたかのごとくに理解することができた」とも、述べています。
この表象化・情感化を深め生き生きした読解をするには、どのようにするか、この事が『表現読み』(ルック)1年~6年のシリーズで、それぞれの実践者(執筆者)が追求し、実践して、述べている重要な事です。 では、その表象化・情感化を支えるものは、何か。 B 表象化・情感化を支えるもの ア 分かる この分かるについてですが、子どもが自分の力で分かると、子どもにとっては、発見になります。この発見は、大きな喜びになります。そして、この事が、子どもが次にもやりたい、もっと続けたいという学習意欲になって現れます。では、このことを実践から、見てみましょう。
まず、1年生の入門期の実践報告(表現よみ・ルック)、『絵物語から』です。
「視覚がとらえる「絵」という媒体から、子どもたちは、自分の五感を使って,感じ、考え、そしてコトバとして表現していきたいと考えます。・・・・・中略・・・・絵から感じ、発見し、発表できるようにしていきたいと考えます。 それは、「絵」という共通の存在をもとにして、その絵が表していることをみんなで探り出し、コトバで確認していくことが、学校で系統的に言語を学習していくための大切な第一歩だからです。 たった一つの言葉でも、状況や気持ちの動きによって言い方は違ってきます。又、同じ状況や気持ちの動きも幾つものコトバで表す事ができます。コトバの持つ概念も学習するほどに広がり、豊かになっていきます。後略・・・・・。」 ここには、コトバの学習の基本的なことが述べられています。 それは、 ・「五感を使って・言葉で確認していく」 ・「言葉の持つ概念も学習するほどに広がり、豊かになる・・・・・」 です。これらは、言葉を分からせるための基本的な出発点です。
1年生で、佐山さんは、『走るのだいすき』の詩の指導で『表現よみ』・1年(ルック)で、 「『足がはしる』って、どんなことか分かりますか。 「『胸もはしる』って言うのはどんなことか分かりますか」。 「『顔も走る』でどんなことか分かりますか。」 というふうにして、分からせるための投げかけをして、そのことについて発表させています。感覚で感じた体験をコトバで表現させているのです。
『声に出して読みたい日本語』『理想の国語教科書』の著者齋藤孝氏が「教科書の教材が易しすぎて・・・・」と述べていますが、そのような判断は、これらの報告からは、妥当ではないと言えるのではないでしょうか。 さて、分かりますと次に、声に出して読みたくなるものです。 そして、声に出して読むと、作品の理解が更に深まり、次に、また、声に出して読んでみたいという欲求になって現れます。このことは、「理解と音声化の同時指導」と名づけることにします。この事について、次に述べます。
イ 「理解と音声化の同時指導」
漢字学習では、その漢字を学習すると使ってみたいという気持ちに子どもはなります。 この欲求を大事にしたのが、漢字の「読み書き同時指導」の考えです。これが、昔から支持され、やられてきた理由です。この心理は、表現よみ(朗読)も同じです。こどもたちは、文章を理解したら、それを声に出して読んでみたいのです。 声に出して読んでみると気持ちがいいのです。これは「理解音声同時指導」と言えるのではないでしょうか。 5年生『わらぐつの中の神様』(『表現よみ』・ルック・5年)で、成瀬さんは、読み取った事を表現よみさせ、その音声化で内容を感覚的に感じさせる指導をしています。そのことで、理解が深まっている様子が伝わってきます。 (続きます) これは、下記のブログを読ませて戴き、これは、(総合的なことを書かねば・・・)と触発されて、始めました。
2009年08月05日国語の授業がおかしくなっている・・・かな!?(1)http://blog.livedoor.jp/rve83253/archives/1289937.html
2009年08月11日国語の授業がおかしくなっている・・・かな!?(2)http://blog.livedoor.jp/rve83253/archives/1290764.html
* コメントをお寄せ下さい。直接の返信は、していませんが、 ぼくは、勉強させて戴いております。感謝です。 下のマークをクリックして応援して、下さると有り難いです。 人気blogランキングへ (本日・・・5位) 次は、朗読・表現読みの本です。 上記の理論と実践の方法が作品にそって、書いてあります。
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結局、指導者が何も考えてないことを、表しているように、私は思います。
空空如・ 孔子は無学な人でも疑問をぶつけられると、知識をひけらかさずに、簡易な質問や応答をしながらその識見・知識を広げていき、質問者の良知・英知を刺激して、開悟させたそうです。その手はソクラティスも同じでしたね。 何か、マジメに教えてないように思います。むやみな音読の推奨は・・・ 再見! (2009.08.28 08:54:22)
投票日まで後三日
選挙カーが走り回り候補者の名前と政党名を連呼 仕事にならない。 東京12区では公明党代表の太田あきひろが 苦戦しているせいか創価学会が総動員され 形振り構わず各家庭を訪問し応援を要請している。 電話でのお願いも欠かさない。 辟易とし、逆効果だとおもいますが 如何でしょうか。 何時も有難うございます。 本日も心を込めて応援完了です。 (2009.08.28 09:00:39)
>「五感を使って・言葉で確認していく」
ただ読めば良いのだと感情も持たずに目で追い、口で発音するだけでは、たぶん何も残らないのではないかと思います。 私たちが良い言葉や良い小説に触れるとき、自然に気持ちがそこに入っていき、身体で心でそれを捕らえますよね。 そういう風にして読んだものは、ずっと後になってもその情景が現れたりするものなのですね。 (2009.08.28 09:57:04)
Good morning.
It's cloudy here in Nagasaki. According to the weather forcast, it'll rain a little this afternoon. I've already supported your web site. Have a happy weekend. Thanks. (2009.08.28 10:18:12)
こんにちは。
表現読みの発展的段階では、「動作化」も取り入れることができるわけですね。もうここまで到達できたら、演劇できるレベルに近づいているのでしょうね。 修学旅行で東京に行った時に劇団「四季」劇場で生徒と一緒に鑑賞した「ライオンキング」を思い出しました。すごい舞台演技の迫力にで生徒・引率者全員感動していました。 今考えると、この鑑賞も国語教育の延長線上にあったのかと気づかせていただきました。 感謝の気持ちわこめて、ポチ応援です。 (2009.08.28 10:49:43)
実態は、声を出させるということもあまりできていないクラスがけっこう存在するのではないでしょうか。
声を出すということ自体が大事なことだと思いますので、意味がわかっていてもわかっていなくても、全然声を出さないよりはとりあえず声を出すということだけでもいいように思います。 そして、その前提の上で、内容がわかるとよりいいと思います。 論語を読ませることがいいのかどうかは分かりません(笑)。美しい文章は、確かに美しいので、わかってなくても覚える価値はあるかもしれません。これも、程度の問題ですね。 いずれにしても、論語を読ませるような余裕は、なかなかないですねえ…。 (2009.08.28 18:21:34)
いよいよ明日は投票日
前回の選挙は小泉純一郎が郵政民営化を叫び 自民党が300議席を越す圧勝 今回は鳩山由紀夫が政権交代を叫んでいる。 恐らく山が動き、民主党の圧勝が予想される。 私は何処に投票するかと云うと 皆様同様、勝ち馬に乗るのが好きです。 新型インフルエンザが猛威を振るっています。 手洗い、うがい、マスクをしてご自愛下さい。 何時も有難うございます。 本日も心を込めて応援完了です。 (2009.08.29 11:45:26)
拙ブログをご紹介いただきありがとうございました。
読解あってこその、表現読みですね。わたしも、初任者指導の中で、それを実感する場面がありました。その記事をここで、紹介させてください。 記事のタイトルは、『問題解決学習とPISA調査』の補足とあり、全然違うような感じですが、この記事の、1、音読が、今日さんのこの記事にかかわると思います。よろしくお願いします。 http://blog.livedoor.jp/rve83253/archives/1060486.html (2009.08.29 15:12:51)
Good evening.
ものすごい蒸し暑さの長崎です。 かえって雨のほうがましみたい。 クーラー20度設定もむなし。 それでもガッツ真心応援完了ですけんね。 Have a good weekend. Thanks. (August 29, 2009 17:35:41) (2009.08.29 17:52:28)
表現読みが子供にどれだけの世界をひろげるか、ということ、よーく分かります。孫の宿題に全文3回読むとか5回読んできなさい、というのがよくあります。そんな時私も一緒に1回だけ、時間をかけて表現読みをします。
おっしゃるようにただただ、何の脈絡もなくいくら回数を重ねても、子供の豊かな読みにはつながりません。豊かな表現読みの授業を受けれる子たちはどれだけ幸せでしょう! (2009.08.29 18:33:25)
こんばんは
やはり色々な要素が揃ってこそだと思いますね 薄っぺらな授業なんて、してる方も楽しくないし遣り甲斐がないでしょう 生徒も教師も楽しい授業にして欲しいです byマッチャ ☆応援♪ スイカに限らず 旬のものには意味がありますね (2009.08.29 23:26:06) |