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2019.04.30
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カテゴリ:文学
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本格ミステリ鑑賞術 (Key library) [ 福井健太 ]

 ミステリ史上何度も顔を出す作品が、アクロイド殺人事件、だ。
 フェアかアンフェアかの議論、犯人が語り手である手法など今日的なテーマがすでに約90年前に提起されているが、
 フェアとアンフェアをめぐる議論においてアガサ・クリスティ「アクロイド殺害事件」(1926年)が重要なテキストであることは論をまたない。
 エルキュール・ポアロシリーズの第3長編として上梓された本作は語り手を犯人にしたことで大きな議論を呼んだがクリスティは同様の仕掛けを「茶色の服の男」(1924年)にも用いていた。
 エドガー・アラン・ポー「お前が犯人だ」(1844年)サミュエル・アウグスト・ドゥーゼ「スミルノ博士の日記」(1917年)などの先例もあり必ずしも新規な技法ではなかったはずだ。
 ヴァン・ダインが「アクロイド殺害事件」をアンフェアと断じ,ジュリアン・シモンズが探偵小説十戒に反すると述べ,ドロシー・ L・ セイヤーズが擁護絶賛した経緯は当時の本格ミステリ界の偏狭さとそれを脱する価値観が生じつつあった状況を示している。

と著者がいうようになにも新規な手法ではなかったけれども新たなミステリ界の動きになった大きな作品であったことに間違いなさそうである。
 さて近日ミステリ評論の世界でテーマとしてよく語られているのが、叙述トリック、だ。
 基本的な認識としてはテキストに対する読者の解釈をなるべく衝撃的に覆すために言葉を重ねる技法が叙述トリックである。
 物語は時間経過に沿って綴られる。
 人物や状況の特殊性は明示される,紛らわしい表現は避けるといった普通の書き方を逆手に取り読者に偽の光景を想起させるわけだ。
 ミスディレクションの章で触れた中町信「空白の殺意」や法月綸太郎「雪密室」に見られるような巧みな言い回しによるミスリードもこの一種だろう。
 白人に見せかけた黒人と米国人に見せかけた英国人では印象が異なるようにそこではインパクトの強さが重視されるが元より厳格な定義があるわけではない。
 まず留意すべきポイントは叙述トリックの力場では著者が優位に立つということだ。
 我孫子武丸は「叙述トリック試論」(1992年)においてそれを,作者が読者にしかけるトリック,小説の暗黙の了解を破っており,全てアンフェアである,と端的に断じている。
​​​ というのが叙述トリックの一般論である。
 前述、我孫子武丸、の、叙述トリック試論、で紹介されている、二階堂黎人、の、猪苗代トリック、では最終行においてまさに叙述トリックのお手本の如き手捌きが披露され、京極夏彦、の、陰摩羅鬼の瑕、では犯人の死に関する概念により叙述トリックが深く静かに進行しているのだが、我孫子がいうようなアンフェアは認められない。
 そもそもこの技法をアンフェアというのなら読み手の資格がないとも言えるのではなかろうか。
 叙述トリックはある意味小手先とも感じられるが、騙される私が悪いと言える読み手になりたいものだ。





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最終更新日  2019.04.30 05:00:09
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