カテゴリ:経営者のための連続コラム
さて、パフォーマンスできる環境が作れたら、次は、あなたが監督となって、実際にスタッフにパフォーマンスしてもらい、納得したものを作ってもらいます。
いい演技に欠かせないのが、役作りです。あなたのスタッフが納得した演技をできないとするなら、ミス・キャストか、あるいは、素質はあるが役作りができていないか、そのどちらかになります。 脚本によって設定も変わり、それにふさわしいスタッフの選出が重要となるでしょう。 私の経験の中から、ミス・キャストの例をお話しましょう。 とある地方の老舗ホテルにある、客単価一万円を超える高級中国料理レストランの診断を依頼されたときの話です。 このレストランは、地方の指定政令都市にある老舗の高級ホテルの経営する、地元の財界人や名士などが接待などで使うお店です。料理は味のインパクトを押さえてあり、時間をかけて食事ができ、話の邪魔もしないバランスの良いものでした。 ここまでなら、それなりのホテルの高級中国料理レストランの脚本を、ふつうに演出しています。 しかし、ひとつだけ間違っていた演出がありました。 キャスティングです。 ごたぶんにもれず、この老舗ホテルでも経営構造の改革を行っています。 一般にサービス業は、売上に対する比率が高いために人件費の比率を下げるのが常套手段です。 まず、一日のワークスケジュールを作り、無駄な労働時間を削減します。 次に、労働単価の高いスタッフを低いスタッフに替えていきます。 わかりやすいやり方が、社員を減らしアルバイトにするというものです。 そして、給料の高いベテランのサービスマンを減らし、専門学校を出た社員中心にします。 確かに、マニュアル化して、社員やベテランが行うのと同じレベルサービスができれば、場合によっては単価を下げられるわけですからいいように思いますよね。 でも、実は、ここに誤りがあります。 ファミリーレストランが社員を減らして市場を広げた原動力は、経費を下げたということよりも、提供する食事を、ハレの場面から日常生活の食事に落とした、ということの方が大きかったのです。 しかし、老舗のホテルはどんな場面でも非日常を売らないといけません。でないと、ビジネスホテルに負けてしまいます。どんないいシステムを導入しても、キャスティングが一流でなければ、一流ホテルとは言えないのです。たとえば、年末に行われる紅白歌合戦を考えてみてください。紅白歌合戦が、ギャラの低い芸人で成立しないのと同じです。 この店の客層は五〇歳以上の地元の名士や財界の人です。そして、商談、会合などにおもにこのレストランが利用されます。当然、求められるのは、その商談や会合が円滑に進められるように、アレンジしたり、サービスしたり、会話できるホテルマンなのです。 若いスタッフですと、お客様とスタッフの会話が噛み合いませんし、失礼にあたる場面も多くなります。 たとえば、「ネクタイ素敵ですね」と言ったとしましょう。 キャバクラでは、それもいいかもしれません。でも、このような店は違います。初対面の大の大人に言う言葉ではないでしょう。 でも、スタッフが五〇歳代の女性だったらどうでしょう。 自然に聞き流せるはずです。同じ言葉でもTPOがあるわけですね。このTPOを決める要素、実はキャスティングなんです。 キャスティングの結果いかんで、お客さんが食事をする目的を演出できなくなるのです。 サービスの技術はいくらでも磨けます。動きも若い人のほうがスピーディディです。ただ、お客さんは早く料理を出すことでも、見事なサービス技術も求めておらず、最高の接待という場を作って欲しいだけなのです。 宴会が減ったとおっしゃっていましたが、不況というのは会議のいいわけであって、実際は、見えない宴会需要を場違いな演出で失ったことが大きいのではないか、と申し上げさせていただきました。私なら、商工会議所のOBで顔が利く人を受付に入れ、動きが遅くてもいいからベテランの男女のパートを配すると申し上げました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.11.11 16:42:01
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