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美味しさには、本当の美味しさと利用シーンに応じた美味しさがあります。
本当の美味しさは頂点の美味しさです。利用シーンの美味しさというのは、多くの人は常に完璧なおいしさは求めず、時間や費用、雰囲気やその人自身によって使い分けるものです。その場にあったおいしさが利用シーンのおいしさです。 例えば、家電製品を例に見ましょう。オーディオの機器は、プロ用の頂点の商品はかなり高いレベルです。音も最高で臨場感も違います。 しかし、そこまでのレベルを、CDを聞く人が必ずしも必要であるわけではありません。様々な機能や性能が付いていたらそれはそれでいいですが、一般ユーザーは音楽を聴くくらいなのでほとんどの機能や性能使いません。そのために、対価にあって、ある程度市場性があるスペックに機能や性能を“削り”商品として投入します。消費者にとっても、必要な機能や性能に絞り込むほうが使いやすいです。 食べ物も同様です。利用シーンの多くは完璧なものは求めていないので、その都度、必要なおいしさをお客様が選択をしているのです。前回、美味しさに関して文化の階段というお話をしました。美味しさには、まず満腹中枢を満たすという万人共通の土台があります。この土台があって、各場面で、必要なおしさの要素をオプションとして選択します。 例えば、マスコミで取り上げている情報、見た目がわかりやすい何かがある、トロや鮑など誰もがわかるグルメ食材を使っていると、単なる“餌”も立派に見えます。 この三つを上手に組み合わせているのが「俺のイタリアン」です。「俺のイタリアン」は三大珍味、大きなフォアグラを低価格でドーンと載せ、メディアの露出を高めている。 「美味さ」は多種多様でバリエーションがあります。育った環境や、食体験、旅行、社交で多様性を身に着けます。多様な価値観があれば、楽しみかたにもバリエーションがありますが、利用者自身に多様性がなければ、限られた“満腹中枢の刺激”という餌性で美味しさを感じるのです。 したがって、美味しさの設計時に、ターゲットする客層が利用シーンや利用タイミング、利用頻度や利用時間など、諸々の要素を考慮して、どのような美味しさを求めている人なのかをしっかりみきわめて、メニューに落とし込まないといけません。 そして、長い付き合いの接触の中で提案して、おいしさの多様性を身に着けていただきます。これが、美味しさの教育です。 実は、生涯顧客づくりの重要なポイントはこの美味しさの多様性を作ることです。餌という部分で食事をする人は美味しいと感じるストライクゾーンが非常に狭いです。 おいしさの多様性がないからです。 しかし、いろいろな食事を体験していくことによって、美味しいと感じるものが多様化していけば楽しみも増えます。店は接触する機会の中で新しい価値観を提供するのです。 例えば、アメリカに行くと美味しいものが出てこないというものがおっしゃる方がいます。確かに日本で食生活していて日本で食べているものが、アメリカでは全く違いますから、自分の持っている価値観からしてみればアメリカの食事は美味しくないということになりますが、アメリカ人もそういう風に感じているかもしれませんね。 しかし、アメリカに50回も100回も行ったらどう感じるようになるでしょうか?私のように海外視察に100回も行きますと、「さすがにこれは合わない」というものがありますが、それはそれで楽しむことができるようになっていきます。これが、接触回数が増えて美味しさの多様性が身についていくからです。 お客様の教育とは、多様なものを受け入れ、いろいろなものを楽しめるようにすることです。狭い生活しているのはつまらないですよね。そういう潤いにつながっていくことを提供するのです。 ~大久保一彦ファンクラブCD 次月号より お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.06.20 10:35:31
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