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“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

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2010.07.18
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 「このエリア(地方都市)の人にパスタをラーメンのように食べる店を作りたい」
数年前にこんなこと言っていたイタリアン帰りのオーナーシェフがいます。
 先日このオーナーに合うことがあり、現在の商売の状況を聞きました。
すると、全く違うことをするとおっしゃっていました。
実はこのオーナーとある商業施設に出店して苦戦しているようです。
だから、違うことをしようとしているのかもしれません。

 そのオーナーは今、借金を返さんとやりたいことから売れそうなことに
興味が動いているように見えます。
 確かにお金が必要なことはわかりますが、
皮肉なことに借金を返すことから遠ざかっているように見えます。
今風の言葉を使えばブレているのです。

 私がブレているというのは理由がありまして、
その根はこれも今の日本の外食産業の状況にあります。
市場が成長しているならば、
客層自身が自分の都合のよいように拡大解釈してくれますから、
最大公約数的な使い勝手のよい店をやっていれば市場性がよいです。
そのために、見た目、それなりにやっていればよいわけです。

 しかし、市場が成熟してしまうと消費者は
一番自分の好みにあう店や使い勝手がよい店を選ぶようになります。
いわば、好みや趣味やお客様自身の都合で店を選ぶようになりますので、
万人受けする店は選ばれなくなります。
 例えば、ファミリーレストランなどは選ばれなくなった店の代表でしょう。
市場が成熟して、よっぽど立地に恵まれているか、
見込客や来店したお客様に「好きだ」「この店いいな」
と、思ってもらえる店でない成立しない時代になったのです。

 そのためにお客様に自分の店が向かう方向を指し示す必要があります。
つまり、自分がやりたいこと、やるべきことは小さな感動の原資になるのです。

 実は私が「新宿さぼてん」の現場にいたころは
中食の市場が拡大していた時代ですから、
私の会社や私のやりたいことは多く店を出すことでした。
当時、年商100億円という数字を掲げていました。

 しかし、あるクレーム処理を行ったきっかけから、
私は私自身のやるべきことに気づき、商売の目的を持つようになりました。
その結果、自身の取扱商品によっては年商100億円など難しくないことを知ったのです。

 では、そのお話をしましょう。

 「さっき、とんかつ買ったんだけどさー、とんかつ一枚足りないよ!」
 オープンしたてで運営が落ち着いていない売場にこんな電話が入りました。
偶然、受話器をとった私はいつものようによくあるクレームの処理を
行おうとしていました。

 「入れ忘れの豚カツは次回のご来店のときでもよろしいですか?」

 この言葉は魔法の言葉です。
お客様のお話をじっくり伺ってお詫びを申し上げ、
頃合をみてこの言葉を切り出せば、
多くのお客様は「(仕方ないわね)わかりました」と答えが返ってくるからです。
首尾よくこの答が返ってきた暁にはお客様のお名前を聞き、
次に来店されたときに入れ忘れの商品をお渡しして、
“クレーム処理”が完了していました。

 テイクアウト専門店では、商品の入れ忘れは日常的によくあるミスで、
このような苦情の電話も多かったのです。
私はそれまで、悪いなとは思っていながらあまり重要ことだとは思っていませんでした。

 しかし、このお客様は違っていました。
「ばかやろー! カツが1枚足りないと食事ができないだろ!」
その電話は男性のお客様がひどく怒っていたのです。
誰かに届けてもらおうと、売場のスタッフを見ると開店したばかりで、
みんながとても忙しそうした。
もちろん“苦情処理”に向かうことができそうにありません。
しかたなく、私は自分が入れ忘れのお客様のご自宅に入れ忘れたとんかつを詰め、
タクシーで届けることにしました。

 到着して、「怒ってんだろうなぁ。なんか嫌だな・・」
と、重い気持ちを胸に玄関のチャイムを押しました。

 「ピンポーン!」
音は住宅街の暗闇に響きます。
「ばかもーん!」磯野波平のようなコワ~いお父さんが出てきそうです。
扉が開くと、意外にも奥様が玄関先に出てきています。
にこにこしているようにも見えます。
その上、「あら早かったのね。ありがとう」とおっしゃいます。
その後ろから、小さなお嬢さんができて「とんかちゅ、来たぁ?」と言いました。

 苦情処理としてはなんでもないことでしたが、
私は大きな出来事でした。

 というのは、たった1枚のとんかつの到着を
お客様が食事をせず待っていたことを発見したからです。

 確かに、4枚のとんかつを注文したにもかかわらず、
1枚を入れ忘れると3枚で、それを4等分して食事はできません。
だいたいそういう場合は、お父さんかお母さんが食べないことになります。

 そうすると食事は楽しくないはずです。
 しかし、このことはずっとひとり暮らしをしていて子供もおらず、
家族団らんから遠ざかっていた私には思いもつかないことだったのです。

 つまり、この苦情処理を行ったおかげで、
「私にとってはたかだか1枚のとんかつだが、
お客様にとっては楽しい食事の大切な道具であり、
私たちは、家族団らんの大切な道具を売っている」
ことに気づくことができたのです。

 実は後日談があって、
私のエリアを担当しているエリアマネージャーを呼び、
この苦情の話をしました。
そして私の気付きについて話し、
入れ忘れが発生した場合の対応として
「タクシーで迅速に届ける」ことにしたのです。

 スタッフから「忙しくて届けられないときはどうするんですか?」
と、いう質問がありました。
それに対して私はこう答えたことを記憶しています。

 「これから買う人よりも、買ってくれた人に対する誠意が大切。
店の営業をストップしてもいいから、入れ忘れた人間が届けなさい」

 今思うとスタッフはしぶしぶ従うという状況だったのかもしれませんが、
私の管轄ではこの対応が徹底されたようです。
また、店の営業がストップすることもありませんでした。

 そして、この徹底で入れ忘れが格段に減りました。
しかし、それだけには留まりません。
私が管轄していた約20店舗は、どの店もみるみる売上が上がったのです。
もちろん、この時代でしたから、
他のスーパーバイザーが管轄していたエリアも売上は伸びていましたが、
その勢いが違いました。

 そうなった理由は簡単です。
持ち帰りの店は忙しいとどうしてもお客様を捌くことに
集中してしまいます。
すると、数にばかり目がいき、お客様が何を求めて来店して、
どうすれば楽しい食卓をお手伝いして喜んでくれるかを
考えなくなってしまいます。
その典型がそれまでの苦情処理だったのです。

 入れ忘れ多ければ、そのたびにお客様の心の絆を失うため、
ファン層減らしかねません。
しかたなく買うお客様はいますが、
「新宿さぼてん」が旬じゃなくなれば買わなくなります。
結果的に開店して数ヶ月経つと売上が頭打ちになるのです。

 逆に楽しい食卓のお手伝いをして喜んでもらうことを常に考え続けると
売場は進化します。
それが、あるときにお客様の心に響き、確かなファン客になるのです。
そうなると、お客様がお客様を呼びます。

 私が、スーパーバイザーから店舗開発に人事異動になったときに
私の担当していたエリアは月商1億円、月間経常利益1千万円になっていました。

 お客様が増えず売上が上がらない理由の一番目は伝えたいことがないことです。

 あなたが商売を通して何をしてお客様の役にたちたいのかを
考える必要があります。
いや、私のようにお客様が教えてくれることもあるでしょう。
「お客様をどうしてあげたいのか」それをまず、考える必要があるのです。

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Last updated  2010.07.18 08:56:45


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