カテゴリ:経営者のための連続コラム
とある駅蕎麦でアルバイトする知人からこんな話がありました。
「22時の閉店時間になったので閉店した。 閉店業務を始めようとしたころ、男性が入ってきたので『閉店です』と答えたのだが、 『2分前だろ!』と怒って暴れだした」と言うのです。 私はこの話を聞いてとても複雑な気持ちになりました。 そして、成長の時代に我々が犯した大罪を実感したのです。 その大罪とは「便利さの満足」を売るということです。 10年以上前に「新宿さぼてん」が成功したのは、 まさにこの「便利さの満足」の追求で評判を得たからです。 当時は、閉店間際のお客様こそお金をしっかりいただけると、 閉店前のチャンスロス撲滅に努めていました。 今のようにコンビニエンスストアもそんなにない時代ですから、 ここで、できたての弁当が買えるか買えないかは お客様にとってお金以上の価値があったのです。 それまでは、閉店前に見込みで弁当を作りおきし、 売れ行きを見ながらディスカウントするというのが通例のやりかたでした。 しかし、閉店業務を見直し、中間清掃をして、 閉店間際でもしっかりとできたてをお作りして対応するように システムを変えました。 当時、そこまでやっている店はあまりありませんでした。 したがって、とても評判になりました。 お客様の中には「あまりものでいいのよ」と言っていただける人もいたほどです。 閉店間際でもフライをわざわざ揚げてできたてで提供しましたから、 「ここまでしてくれないでいいのに……」 お客様にはそう思っていただけたのでしょう。 当時の商品を受け取るお客様の顔は嬉しそうで、 ほとんどのかたが「悪いね……」とか「助かったわ」と言ってくれ、 特別なサービスに感謝の意を表してくれました。 また来店前や夕方に電話予約してくれる人も数多くいました。 「従業員さんの帰りが遅くなっては悪いから」 というお客様の思いやりが伝わってきました。 このような思いやりは店のスタッフも嬉しく、 店とお客様はいい関係が築けていたのです。 店はお客様の潜在的な願望を汲み取りサービスに組み込みます。 その一歩先のサービスがお客様に感動すら与えます。 しかし、いいサービスはどこの店でもやるようになります。 そうなると、お客様にとっては当然のサービスになるのです。 24時間営業の弁当屋が当たり前になり、 コンビニエンスストアの店舗数が郵便局の数を上回るようになると 便利さの消耗戦になります。 もはや、感謝される一歩先のサービスでなく、 単なる「便利さ」の奴隷となってしまいます。 顧客満足という大義名分のもと、果てしない便利さが考案され、 いつしか、夜間の救急診療に軽い風邪で診療に訪れるコンビニ受診者、 とりあえず居酒屋に大人数で予約を入れて電話もなく来店しないコンビニ予約 などいったコンビニ現象というのに波及しています。 俗に言うモンスターカスタマーが激増し、 従業員が感謝されことなど当然なくなりました。 いや、場合によっては怒られてしまうような時代となってしまったのです。 感謝の満足というのはお客様と従業員の対等な関係から生まれ、 お互いが相手を思いやる気持ちから生まれるものです。 ものが豊かになり便利になり、心の豊かさが求められるようになって、 商売の姿勢は市場性ではなく、すなわち、 対等な人間関係に基づいた正当なサービスで 人のいかにたつかという原点に立ち返る時期に来ているのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.07.21 22:21:03
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