カテゴリ:経営者のための連続コラム
立春の連続講座 飲食店の繁盛のための“おいしさの設計”の原理原則 第9回
~『四方よし通信』2013年12月号より 4 低価格からの脱却の原理 ~お客様を“餌生活”から救出せよ! おいしさの旅の入口は5つしかない! 和牛の卸問屋で働いていた人を店長にして、和牛にこだわった焼肉屋を始めた方がおります。 しかし、素人経営ですから、そうそううまくいきません。 私の著書のファンであったその方は、私のコンサルティングを依頼されました。 私が「何で焼肉屋を始めたのですか?」と聞きますと、「焼肉屋ってさあ、良い肉を使ってもタレで食べさせるじゃん?良い肉を提供するなら素材の味がわかる塩で食べないともったいない。そういう焼肉屋をやりたいなって…」 「“塩”で食べさせないといけない」。 これは、売り手と買い手の間に発生する“おいしさの捉え方”のギャップと言えるでしょう。 このギャップを解消することこそ飲食ビジネスでは大切です。 続いてはおいしさの構成要素を見ていきましょう。 動物の本能をくすぐる魅惑の“満腹中枢の刺激”すなわち、“おいしさの餌という性質”については既に触れました。 この餌という性質は正常な人間であれば誰にでも感じる要素であり、この要素を熟知していないと店舗展開はできません。 赤ちゃんは「オギャー」とお腹が空いたことを母親に教えて、母乳を飲み食欲を満たし安らぎを得ます。だんだん色々なものを食べるようになりますが、お菓子やジュースにハマるのは満腹中枢の刺激が強烈だからだと言えるでしょう。 小学生になって回転寿司屋や焼肉店など行き、お腹いっぱいの幸せを感じるでしょう。 家庭での食育が大切なのは、食への教育がないと満腹中枢の刺激と言う“おいしい餌という性質”で満足してしまうからです。 さて、“おいしい餌”で充分満足していても、生きている限り、様々なきっかけでおいしさのバリエーションを経験していきます。 そして、様々な要素に魅力を感じるようになります。 高校生や大学生くらい(場合によっては中学生くらい)になるとインパクトある見た目に魅力を感じるでしょう。 インパクトある見た目とは、『CoCo壱番屋』の1キロカレーなど、過去に経験したことがない見た目の強烈なインパクトのあるアイテムです。 これらのメニューに触れ、年齢相応の“ごちそう感”にふれ、“なんとく“おいしさ”のバリエーションを広げます。 寿司業界でも“デカネタ”という専門用語があるように、“デカメニュー”や姿造りなどで人気のある“まるごとそのままメニュー”の見た目の凄さはわかりやすい“ご馳走感”があります。 インパクトある見た目はわかりやすく、“おいしさ”の構成要素と言えます。 マスコミの情報もおいしさに影響を与える要素です。 マスコミという権威が流す情報は消費者においしさ(既成事実)としてアンカリングするからです。 特にグルメ食材はマスコミや雑誌などに登場するので、おいしさの要素としてアンカリングされます。 マスコミや雑誌などで登場する情報と言えば、有名シェフや有名店がありますが、同様においしさの要素としてアンカリングされていきます。 有名店での偽装問題がマスコミで取りざたされることがありますが、このアンカリングで容易に消費者を信じ込ませてしまうからです。 最近ではグルメ口コミサイトの“食べログ”での高得点も、消費者に“おいしい”とアンカリングしてしまう要素だと言えます。 “インパクトある見た目”、“マスコミでよく登場する情報”、“グルメ食材”、“有名シェフ”、“有名店”というのは、誰にでもわかる、定番の要素です。 グルメ食材の代表を下記に記します。 グルメ食材 蟹、雲丹、いくら、国産の本マグロのトロ、神戸牛・近江牛・飛騨牛・松阪牛などの銘柄牛、松茸、フカヒレ、フォアグラ、キャビア、トリュフ つまり、おいしさには本質的な味の要素以外の要素がままあり、“餌としてのおいしさ”から踏み出した“おいしさの多様性”への一歩が、“見た目のインパクト”“マスコミの情報”“有名シェフ”“有名レストラン”“ベタなグルメ食材”であるケースが多いのです。 その後、つき合った人や生活環境から“見た目の美”“病気のリスク回避”“調理技術の差(天才的)”“産地の違い”“ランクの違い”“価格の違い”“部位の違い”“希少食材(ブランド価値低い)”“生産者の思い”“調理技術の違い(微差)”と価値観を広げていきます。 ちなみに、同時に比べないとわからない“調理技術の差”や“お客様に喜んでいただくことを想像して手間暇を惜しまずかけていること”はほとんどの人がわからないことです。 一般大衆でハレの利用シーンでお客様を集客するには、これらのグルメ食材やご馳走感を感じる要素を駆使して、看板商品やチラシ商品のメニュー開発が非常に重要になります。 これができないと、“おいしさの構造”がわからないマーケティング関連専門家の“お客様にわかってもらいましょう”系のアドバイスを不覚にも受けることになり、誇大表示、場合によっては「虚偽表示」につながってしまうのです。 頭で感じるおいしさと、食生活に落とし込まれるおいしさにはかなりの“時差”があります。お客様の食生活に多様なおいしさを落とし込むための“おいしさの教育のマーケティング”については後程、お話しすることにしましょう。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.02.25 10:59:08
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