6741746 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2010.07.17
XML
 大きな感動は誰にでもとてもわかりやすく、
ある意味、こまかな説明は不要です。

 しかし、小さな感動は人によって感じかたが違いますので、
その点が難しさです。
 人は過去の経験やその経験の積み重ねからできた価値観をもっていますからね。
その価値観によって感じかた変わってしまうのです。

 私はコンサルタントですから様々な相談がきます。
 その中で多いのがワインを売ることです。

 地方でワインバーを始めて「(東京などの都会と違って)地方にはワインを
わかる人が少ない」と嘆くオーナーがいます。
そのオーナーは
「リーズナブルでこんなにおいしいのになぜ(お客様が来ない)?」
と、思っているようです。
 しかし、地方ではワインを飲む富裕層か、全くワインを飲まない人かしかおらず、
その中間はほとんど存在おりません。
そのことが今一歩わかっていないのです。

 もし、富裕層を狙うのであれば、
このオーナーは富裕層の心理がわからないといけません。
 富裕層は経験も知識も豊富です。
ワインの価格は正直ですから、安さより、1万円以上払ったとしても、
本当においしいことのほうが重要です。

「誰でも予算が関係なければDRCのモンラッシェを飲むでしょう」

 したがってその人の基準にあるワインよりおいしいものを
提供しないといけません。

 そのためにはお客様を圧倒する経験と知識が必要になります。
例えば、自分でワイナリーを巡って本当においしいものを提供できるレベルであるとかですね。

 逆に、まったく飲まない人に飲んでもらうことを考えるなら、
「この地域の人にワインの美味しさを広める」という大義のもと
ある意味、”ワインの幼稚園”から始めてないといけません。
 まったく価値観のない人には、
まず慣れることからはじめて、だんだんわかってきてやっと、
次のステップに入ります。
 やっとわかってきたころ、面白さが増すような仕掛けが重要です。
つまり、店は商売でなく学校を目指さないといけません。

 そのためには、まず自分の時間をお客様に差し上げないといけません。
そして、ある程度勉強してもらう期間の販促費として
ワインをおいしく飲んでもらうのにお金を使わないといけません。

 そう、最初はお客様が少ないわけですから、
やりたいことをやるのはとてもたいへんなんです。

 例えば、経験や知識のないお客様ですから、
最初は大きな感動を与えて興味を持ってもらうことは大切です。
最初に仕入れ値で1万円以上する高価なワインを
イベントで飲んでもらったらいいでしょう。
DRC社のラターシュやモンラッシェは香りが
抜詮(ばっせん)した瞬間の香りが違います。
この香りはだれでもおそらくわかります。
そこからはじめるのです。

 そして、しばらくして
「こないだのワインはめったに飲めませんが、となりの畑のレ・ゴーディショ(Les Gaudichots)なら1万円弱で飲めるんですよ」と誘うのです。

 そして、興味を持っていただいたなら、
味の違いを認識していただき、
「やっぱり高いワインは違う」と少しずつ知識をつけてもらい勉強してもらうのです。
決して、いきなり、足し算引き算を飛ばして関数を教えようとしてはいけません。最初は、わかりやすい違いでいいのです。

 そして、オリの落としていないレ・ゴーディショと落としたレ・ゴーディショを飲んでいただき、ブルゴーニュは飲み方でかわることを認識してもらいます。
だんだん、だんだん、わかりにくい部分に勉強を移していきます。
このような地道な繰り返しがお客様にワインを文化として定着させるのです。

実は地方でのワインバーで扱うワインという商材は新しい文化であり、
日常生活でほとんどの人が飲む習慣がないものです。
したがって、まず、馴染んでいただき、
ワイン自体をあたり前に感じていただく必要があるのです。

 それから、本来自分がやりたい手ごろでおいしいワインを飲んでいただくという作業に写ります。

 つまり、大きな感動からはじめて小さな感動と組み合わせをしてやりたいことにたどり着くように考えないといけません。
だから、難易度が高いのです。
今、ないものを地方にもっていくときに共通するんですが、
ワインバーという業種が無いから「需要がある」という市場性ではじめるのではなく、
「ワインの楽しさをこのエリアの人に知ってもらいたい」という
熱い思いからはじめるべきものなのです。
このような場合、選択肢の多い時代ですから、
大きな感動と小さな感動を同時組み合わせて提供すべきなのです。

 では、実際にワイン文化を地方に定着させたモデル的な店を紹介しましょう。
千葉の佐倉市の郊外にリストランテ・カステッロという店です。
この店のオーナーの山田なおきさんがこの地にきたときは、
一ヶ月に数本しかワインを注文するお客様がいませんでした。
20年以上経った今ではワインを月に700万円売ります。
 それは、山田さんが、グラスワインからはじめて、
ワインの勉強会をしたりして、じっくりと時間をかけてワイン文化を広めたからです。
もちろん、従業員の間でも勉強会をします。
もの凄い高いワインを開けることもあります。
そして、ワインの最大の楽しみである料理との組み合わせマリアージュを
お客様に教えました。

 私も以前、ひらまつレストランのワイン会があり、参加しました。
フランスのモンペリエにありますジャルダン・デ・サンスの
オーナーシェフのプルセル氏が来日して、
シャトーヌフ・デュ・パプのシャトー・ボーカステルのワインと料理を
あわせました。

 冷たいポルチーニのジュレと温かい栗南瓜のスープとボーカステルの白の組み合わせと
松阪牛と松茸のグリエと年代ものの赤の組み合わせが出されました。
ワインと料理が合うというのはありますが、
素材を超えて1+1=2ではなく、1+1=100になるような
「こんなことができるのか」という感動体験をしました。
それくらいワインと料理のマリアージュは奥深いのです。

 カステッロを見て思うのは、最初は大きな感動からはじめて、
時間をかけて小さな感動を与え続ければ、
ふつうの人が飲む習慣がないワインだったとしても文化として必ずお客様は増えるのです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2010.07.17 17:49:48


PR

Freepage List

Profile

四方よし通信

四方よし通信

Calendar

Archives

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

【お台場】そじ坊で… New! TOMITさん

プロのつぶやき1267… 丁寧な暮らしさかもとこーひーさん

寿司ネタ♪ てくてく7281さん

超高効率作物とは! 食の匠のお助けまんさん

食べ歩き紀 ByeByeさん
竹田陽一ランチェス… ★竹田陽一ランチェスター 東京・西村のNo.1経営・裏のブログさん
釣って満腹! ~ボ… 秀龍さん
うまい営業・へたな… なにわの進藤さん
●Hokkaido & Travel … wind0625さん
HACCPコンサルと美味… HACCP加藤さん

Category

大久保一彦のひとこと情報

(1839)

ワイン会、フードなど大久保の教室

(141)

大久保一彦おすすめのおいしい店の情報

(214)

大久保一彦の商人のための情報

(171)

おいしい料理情報

(84)

食を考える

(73)

雑誌などメディア出演

(27)

大久保一彦が見たエンターテイメント

(34)

愛犬日記

(51)

(162)

よっしー

(97)

よっしーパート2

(112)

よっしーパート3

(179)

よっしーパート4(2010年3月17日以降)

(375)

よっち&こーちゃん

(369)

海外視察

(102)

カリフォルニアクイジーヌ

(5)

フランスの店

(30)

ジェームズオオクボセレクション【怪人のいる店】

(9)

世界のベストレストラン&ホテル100

(78)

世界のベストレストラン更新前の記事

(229)

大久保一彦の二つ星と三つ星の間

(279)

大久保一彦的二つ星のレストラン&ホテル

(222)

大久保一彦の二つ星西日本

(233)

大久保一彦の二つ星ワールド

(22)

大久保一彦の一つ星の店、ホテル

(267)

大久保の一つ星(愛知より西)

(241)

大久保一彦の一つ星の店、ホテル(海外編)

(22)

北海道のうまい店

(72)

東北のうまい店

(41)

関東のうまい店

(133)

東京のうまい店

(269)

目白・雑司が谷界隈の店

(27)

甲信越と東海地方のうまい店

(140)

北陸のうまい店

(77)

関西のおすすめ

(159)

四国と山陰、中国地方のうまい店

(75)

九州のうまい店

(101)

沖縄のうまい店

(28)

スイーツ研究所

(231)

Cafe研究所

(84)

カレー・スパイスの研究所

(4)

すし協同研究所

(38)

すし協同研究所・現地勉強会

(121)

会員向け日本料理研究会

(21)

魚アカデミー

(278)

鮨行天

(56)

『ラ・フィネス』『ミチノ・ル・トゥールビヨン』勉強会議事録

(32)

フランス料理店経営研究室

(33)

蕎麦店開業協同研究所

(70)

料理の技法や食の知識

(2)

ジェームズオオクボ的視点で選んだ心に残るあの店のあの料理(名物料理百選)

(19)

各地名産品及び各地名物料理

(176)

大久保一彦の野草のワークショップ

(30)

産地・生産者訪問

(127)

今日の大久保一彦のしごと

(1100)

経営者のための連続コラム

(1657)

飲食店は人づくり

(4)

修行について コーチの予備軍の方へ

(8)

これから開業の方向けコラム

(290)

飲食店開業講座

(65)

子供たちのためにコラム

(42)

偉人の言葉、今日の親父からの言葉

(28)

“経営思想家”大久保一彦の次の世代への哲学

(51)

補足◆【いつも予約でいっぱいの「評価の高い飲食店」は何をしているのか】補足◆解説

(11)

残念ながらブログ掲載後閉店してしまったお店

(158)

ジェームズオオクボのホテル&お宿見聞録

(276)

長山一夫器美術館(解説付き)

(107)

会員・塾生訪問

(122)

何でも食材ランキング(ブログ掘り下げ編)

(2)

ジェームズ昆虫記&ジェームズ植物記

(471)

中国料理研究

(61)

BAR研究

(1)

外食調査録

(78)

業態研究

(80)

ジェームズオオクボ書店

(12)

惣菜・弁当・食品売場研究

(362)

寿司盛り合せ研究

(66)

商品研究・料理研究

(820)

素材・材料開発研究

(38)

焼肉店訪問

(8)

ラーメン研究

(2)

スパイスカレー店・インド料理店・ネパール料理店研究

(29)

別冊四方よし通信

(7)

© Rakuten Group, Inc.