テーマ:暮らしを楽しむ(384479)
カテゴリ:経営者のための連続コラム
大きな感動は誰にでもとてもわかりやすく、
ある意味、こまかな説明は不要です。 しかし、小さな感動は人によって感じかたが違いますので、 その点が難しさです。 人は過去の経験やその経験の積み重ねからできた価値観をもっていますからね。 その価値観によって感じかた変わってしまうのです。 私はコンサルタントですから様々な相談がきます。 その中で多いのがワインを売ることです。 地方でワインバーを始めて「(東京などの都会と違って)地方にはワインを わかる人が少ない」と嘆くオーナーがいます。 そのオーナーは 「リーズナブルでこんなにおいしいのになぜ(お客様が来ない)?」 と、思っているようです。 しかし、地方ではワインを飲む富裕層か、全くワインを飲まない人かしかおらず、 その中間はほとんど存在おりません。 そのことが今一歩わかっていないのです。 もし、富裕層を狙うのであれば、 このオーナーは富裕層の心理がわからないといけません。 富裕層は経験も知識も豊富です。 ワインの価格は正直ですから、安さより、1万円以上払ったとしても、 本当においしいことのほうが重要です。 「誰でも予算が関係なければDRCのモンラッシェを飲むでしょう」 したがってその人の基準にあるワインよりおいしいものを 提供しないといけません。 そのためにはお客様を圧倒する経験と知識が必要になります。 例えば、自分でワイナリーを巡って本当においしいものを提供できるレベルであるとかですね。 逆に、まったく飲まない人に飲んでもらうことを考えるなら、 「この地域の人にワインの美味しさを広める」という大義のもと ある意味、”ワインの幼稚園”から始めてないといけません。 まったく価値観のない人には、 まず慣れることからはじめて、だんだんわかってきてやっと、 次のステップに入ります。 やっとわかってきたころ、面白さが増すような仕掛けが重要です。 つまり、店は商売でなく学校を目指さないといけません。 そのためには、まず自分の時間をお客様に差し上げないといけません。 そして、ある程度勉強してもらう期間の販促費として ワインをおいしく飲んでもらうのにお金を使わないといけません。 そう、最初はお客様が少ないわけですから、 やりたいことをやるのはとてもたいへんなんです。 例えば、経験や知識のないお客様ですから、 最初は大きな感動を与えて興味を持ってもらうことは大切です。 最初に仕入れ値で1万円以上する高価なワインを イベントで飲んでもらったらいいでしょう。 DRC社のラターシュやモンラッシェは香りが 抜詮(ばっせん)した瞬間の香りが違います。 この香りはだれでもおそらくわかります。 そこからはじめるのです。 そして、しばらくして 「こないだのワインはめったに飲めませんが、となりの畑のレ・ゴーディショ(Les Gaudichots)なら1万円弱で飲めるんですよ」と誘うのです。 そして、興味を持っていただいたなら、 味の違いを認識していただき、 「やっぱり高いワインは違う」と少しずつ知識をつけてもらい勉強してもらうのです。 決して、いきなり、足し算引き算を飛ばして関数を教えようとしてはいけません。最初は、わかりやすい違いでいいのです。 そして、オリの落としていないレ・ゴーディショと落としたレ・ゴーディショを飲んでいただき、ブルゴーニュは飲み方でかわることを認識してもらいます。 だんだん、だんだん、わかりにくい部分に勉強を移していきます。 このような地道な繰り返しがお客様にワインを文化として定着させるのです。 実は地方でのワインバーで扱うワインという商材は新しい文化であり、 日常生活でほとんどの人が飲む習慣がないものです。 したがって、まず、馴染んでいただき、 ワイン自体をあたり前に感じていただく必要があるのです。 それから、本来自分がやりたい手ごろでおいしいワインを飲んでいただくという作業に写ります。 つまり、大きな感動からはじめて小さな感動と組み合わせをしてやりたいことにたどり着くように考えないといけません。 だから、難易度が高いのです。 今、ないものを地方にもっていくときに共通するんですが、 ワインバーという業種が無いから「需要がある」という市場性ではじめるのではなく、 「ワインの楽しさをこのエリアの人に知ってもらいたい」という 熱い思いからはじめるべきものなのです。 このような場合、選択肢の多い時代ですから、 大きな感動と小さな感動を同時組み合わせて提供すべきなのです。 では、実際にワイン文化を地方に定着させたモデル的な店を紹介しましょう。 千葉の佐倉市の郊外にリストランテ・カステッロという店です。 この店のオーナーの山田なおきさんがこの地にきたときは、 一ヶ月に数本しかワインを注文するお客様がいませんでした。 20年以上経った今ではワインを月に700万円売ります。 それは、山田さんが、グラスワインからはじめて、 ワインの勉強会をしたりして、じっくりと時間をかけてワイン文化を広めたからです。 もちろん、従業員の間でも勉強会をします。 もの凄い高いワインを開けることもあります。 そして、ワインの最大の楽しみである料理との組み合わせマリアージュを お客様に教えました。 私も以前、ひらまつレストランのワイン会があり、参加しました。 フランスのモンペリエにありますジャルダン・デ・サンスの オーナーシェフのプルセル氏が来日して、 シャトーヌフ・デュ・パプのシャトー・ボーカステルのワインと料理を あわせました。 冷たいポルチーニのジュレと温かい栗南瓜のスープとボーカステルの白の組み合わせと 松阪牛と松茸のグリエと年代ものの赤の組み合わせが出されました。 ワインと料理が合うというのはありますが、 素材を超えて1+1=2ではなく、1+1=100になるような 「こんなことができるのか」という感動体験をしました。 それくらいワインと料理のマリアージュは奥深いのです。 カステッロを見て思うのは、最初は大きな感動からはじめて、 時間をかけて小さな感動を与え続ければ、 ふつうの人が飲む習慣がないワインだったとしても文化として必ずお客様は増えるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.07.17 17:49:48
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