カテゴリ:経営者のための連続コラム
「ちょっと面白い寿司屋があるんですよ」金沢の私の友人が超繁盛寿司店の
「松の」に連れて行ってくれました。 店の前に立ち、その外観はなかなか雰囲気のよさそうな寿司屋です。 ガラリ戸を開けて、中に入ると、「ちょっといい寿司屋に入ったな」という印象です。 しかし、私のいきつけの高級店とは光景がちょっと違っていました。 ほとんどが若いお客さんなのです。私や私の友人はかなり年齢層としては高めです。 「よおぅ」オヤジさんは同業者で顔なじみの友人とかるく挨拶し席につきました。 辺鄙な場所にも関らず、とても賑わっており、オヤジさんは「ごめん、ちょっと待っててね」と一声かけてきました。 「何で、こんな場所でこんなに流行るんだろう」私は考えていました。 カウンターの上にあるお品書きには2100円、3150円、4200円と 松竹梅のメニューが書いてありました。 「がってん寿司」や「銚子丸」のように値段に段階のある回転寿司チェーンの 客単価(ひとりあたりの使う金額)が1800円くらいですから、ちょっと高めです。 私はあれこれ考えていました。 オヤジさんは軽快に何かをつぶやきながら、手を動かします。 そして、となりの三人組のお客様の目の前にカニの軍艦がおかれました。 「どーん!」といった感じでしょうか、軍艦にのったカニはゆうに6本はありました。 いよいよ私たちの順番になり、「何にします?」とオヤジさんが聞いてきたので、 友人が上寿司3150円を注文しました。 まず、真鯛が出されました。 その真鯛は明治の板チョコを半分に割ったような大きさ (ちょと大げさかもしれませんが)です。 その真鯛は新鮮なので固くて、もごもごします。なかなか噛み切れません。 二つ目に提供された平目も、その次の鰤も同じように大きな切り身がのっていました。 私は「そうか!あのパターンか」私は大分の繁盛店「錦寿司」の 大将を思い出していました。 このやりかたはデカネタというカテゴリーで一時この業界では大流行しました。 実は、このデカネタのような、わかりやすいやりかたが序章でお話しました大きな感動です。 一時期流行したというのは、ただネタがでかいだけでは、 いずれはお客様のこの大きな感動になれ、最終的には自分の好みの店に納まり、 来なくなるからです。多くの店はこのように消滅したのです。 後のセミナーでじっくりお話をしますが、日本の外食産業は成熟期に入りました。 市場が成長しているならば、次々に新規客が訪れます。 新規客が主体であるから、大きな感動が重要です。 そのために、見た目にわかりやすいことが重要です。 しかし、大きな感動は劣化します。 いずれは興味がなくなります。 あんなに多くの人が通っていた派手なサービスが消えたのは飽きなんです。 では、なぜ、この松のはお客様に支持されているのでしょうか? それが、深さです。 深さとはぱっと見では店のやっていることが見えず、 「(何だかわからないが)また行きたい」と思う要素です。 この深さが「好きだ」「この店いいな」と感じされる原資になります。 その深さは、店が与えて行くものなのですが、 お客様自身の知識、経験の蓄積から生じます。 つまり、お客様の知識、経験の蓄積が小さな感動の原資となります。 そのために、店側には知識、経験や技術の蓄積が必要になります。 いわば、お客様にお店側の知識、経験や技術を無理のないようにひとつひとつ 手渡します。 そして、お客様自身に知識、経験が蓄積していきます。 その知識や経験などを受け取ったときに小さな感動が芽生えるのです。 この松ので待っているときにとなりのカップルに「これ冷めちゃったから」と 玉子焼きをサービスしました。お腹の加減をみてサービスすることは すし屋でよくあるのですが、この松のはそうではありませんでした。 私たちの寿司のコースも最後になりかけたころ巨大な玉子焼きの握りが 熱々で出てきました。 「こんなに忙しい店なのに、玉子を焼くために一人つけている!」 私は小さな感動を覚えました。 つまり、サービスで出した玉子焼きは本当に冷えてしまったからだったのです。 多くの店は忙しいという理由で玉子は焼いた既製品を買うでしょう。 せいぜい、開店前に焼いておきます。 しかし、この松のはお客様のために、その都度焼くのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.07.18 01:12:07
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