あいつと俺 第12話「裏切りの銃声-高知・安芸」
腐ったミカンジュース。あいつと俺 第12話「裏切りの銃声-高知・安芸」本作は最終回的エピソード。つまり「放送」は4話で打ち切られたが、本当は12話分まで放送を予定していたと考えられる。ただし11,12話に脇役レギュラー陣が一切登場していない点から10話の段階で「製作」の打ち切りが決定していた可能性がある。打ち切りの判断は現場のプロデューサーではなく編成の意向が多いと言われている。前回と今回を含め勝プロが1クール分無理に作らせてもらったのではないかと推測。もし打ち切りにならなかったら京都編、沖縄編、広島編など作られていたかも。最終回は東京だったり。舞台は拓ボンの故郷・高知。拓ボンへの勝プロなりの労いか。凡太郎は休暇を取り、故郷の高知へ帰省する。ただし家族はいない。凡太郎はおじさん・おばさん(岡島艶子※拓ボンは娘婿にあたる)夫婦に育てられた様子。その頃、府中刑務所から収監中の5人が脱獄。一人は捕まるが、残りの4人は現金や猟銃を奪う事件を重ねていた。捜査一課は4人を追うことになる。凡太郎は海岸で古い漁船を修理している松木と知り合う。松木は当初、警戒するが凡太郎の人懐っこさにすっかり打ち解ける。そして自分はムショ帰りだが、もう一度やり直したいと話す。そんなこんなで凡太郎はおじさん・おばさん夫婦に見合いを勧められ、相手の女性と良い雰囲気になる。若い友人と恋人のような存在を得る凡太郎。一方、松木の下に脱獄した4人が集まる。4人を手引きしたのは松木であり、以前から船で海外へ逃亡することを考えていた。しかし、先に出所して船を準備すると言っていた松木が用意したのはオンボロの漁船だったことに4人はブチ切れ。松木をボコボコにするが、一夜明けると友情パワーで仲直り。船の修理に取り掛かっていた。それを微笑ましく見る凡太郎。ところが帰り道の途中、見合い相手が郵便局員とデートの約束をしている場面を偶然見かけてしまう。凡太郎に気づく見合い相手。とっさに凡太郎は「悪いんだけど、僕まだ結婚は・・・すいません」と嘘をつく。そして船の修理は終わる。凡太郎も交え全員でドンチャン騒ぎするが、ふと悲しそうな表情を見せる凡太郎。その頃、4人が高知に潜入していることを聞きつけた花形チーフ率いる捜査一課のメンバーは現地入り。休暇中の凡太郎にも協力を要請する。そこで見た4人の顔写真は松木と一緒にいた若者たちだった。凡太郎のただならぬ雰囲気に気づいた平太は凡太郎から4人のことを聞く。凡太郎は海岸に向かうが既に船は出向していた。沖に進むに船に何度も戻るよう叫ぶが松木たちは応じない。そして花形チーフ率いる警察船舶との銃撃戦が始まる。凡太郎は戻るよう叫び続ける。予想以上の激しい抵抗に花形チーフは狙撃班を導入、松木らは次々に射殺される。海岸で一人肩を落としている凡太郎に平太が呼びかける。「おっちゃん・・・おっちゃん!」。凡太郎は応じない。「辞めようと、考えてるの?刑事を。自分には刑事は向かないと、思ってるの?俺どうすれば良いの?そんなの水臭いじゃないの!おっちゃん!」。凡太郎を殴りつける平太。ボロボロ涙を流し、嗚咽する凡太郎。翌日、凡太郎はおばさんに見送られ平太と東京に戻る。「おっちゃん、辞めないよな。辞めるわけないよな」。凡太郎は無表情でうなづくだけ。「地酒が美味いんだけど。東々亭のおやっさんに、お土産に買って帰ろうか」。お・わ・りちょっとだけ泣けた。似たような話が多いが、旧大映京都のスタッフで編成されているだけあって映画のように贅沢で丁寧に作られている点はさすが勝プロ。拓ボンの芝居も素晴らしいが、清水健太郎が想像以上に好感触。フィルムの保存状態が良いのかやたら画質と音声が良く、DVD化を前提にリマスタリングされたのかも。でも売れるかなあ。『あいつと俺』は傑作ながらも商業的には惨敗。4話で打ち切りという不名誉な烙印まで押される。しかし勝プロのチャレンジはつづく。