傷だらけの天使 第26話「祭りのあとにさすらいの日々を」
宇宙の果てまで燃え尽くさんばかりの怒りの炎で一睡もできず。傷だらけの天使 第26話「祭りのあとにさすらいの日々を」突然、巨大な地震が発生。津波が襲い、ビルが崩壊していく。夢か、現実か。ビルの屋上で倒れている辰巳に綾部貴子が声をかける。「もう日本はダメよ!この国が私に何をしてくれたって言うの?私はいつも裏切られたわ。もう、たくさん。もうたくさん!」。綾部事務所に修が駆け込む。勝手に車を処分されたからだ。しかし事務所には誰もなく、膨大な書類が散乱。代わりに海津警部(西村晃)の姿があった。綾部事務所は本州四国間の海底トンネル開発の利権に絡んでいた。しかも決まっていたはずのルートが変更になった。裏でこの問題の中枢に関わり、重要な役割を果たしていたという。修には何のことかわからない。「お前みたいな走り使いには、本当のことなんか言うわけない。綾部貴子は本物の悪の世界の女だ」。警察が令状を持って駆け込んだが既にもぬけの殻だった。容疑は公文書偽造、恐喝、背任横領。ペントハウスに戻ると建設会社の修の帰りを待っていた。ビルの所有権が綾部貴子から代わり、ビルの取り壊しが決定したという。享に連絡するため、勤め先の自動車修理工場に電話をするが退職していたと告げられる。修は綾部事務所の経理を担当していた弁護士事務所や付き合いのあった暴力団事務所を訪ねるが、いずれもあしらわれてしまう。むしろ綾部事務所と関わりを持たないほうが良いとまで忠告される。その夜、ネオン街でオカマのモナコ姐さん(カリオストロ伯爵)と再会。新しく構えた店に案内される。店に入ると享が男相手にストリップもどきのショーを演じていた。激昂する修。「享!水くせえじゃねえか!!金が欲しかったらオカマでも何でもやってもいいのか!!」「だってさあ~!お金のありがたみを教えてくれたのは兄貴でしょう~!」。それでも修の怒りは収まらない。享をボコボコにする。「兄貴~兄貴~!」。そこへモナコ姐さんが割って入る。「ばかばか!あんたばかよ!享ちゃんの気持ちも知らないでさ!」。ポケットからくしゃくしゃの写真を取り出す。「綺麗だろう?この町。スモッグもなければ地震もない。こんな町で兄貴と健太ちゃんと3人で出直したい。それにはまとまった金がいる、だから石にかじりついても頑張るからって。あたしはもう聞いてて涙が出ちゃって・・・可愛いじゃないの!立派じゃないの!誉めてやっておくれよ修ちゃん!」。絶句する修。「ウフフ、兄貴~」。そこへ酔っぱらった客たちがなだれ込む。土地成金のバカ息子たちだ。相手をしてやると結構な金になる。享は客たちに煽られ噴水に飛び込んでおどける。「亨、あんまり割のいい仕事じゃねえなあ。もうしばらくの辛抱だぞ。綾部のババアとっつかまえたらよ、金持ってくるからよ。そしたら東京、離れような」。そんなこんなで修は怪しい中国人から綾部貴子が横浜港から船でナホトカへ脱出することを聞かされる。辰巳は別ルート。「あんたのパスポートも作ってあげようか?」。さらに綾部事務所の秘書・京子から夕方4時に横浜、大桟橋で綾部貴子が待っているとの伝言を聞かされる。修だけ連れて行くつもりらしい。ペントハウスで旅支度をする修。健太の写真を握りしめる。そこへ享が戻ってくる。修は享にしばらくの間、健太を預かってほしいと頼む。「どっか行くの?」。激しく咳き込む享。「どうしたんだお前?」「風邪だよ・・・。水をくれ!水を!」。日曜日なので医者も薬局も開いていない。「こんな時に風邪ひきやがって・・・!」。気にしながらも荷物を抱えて修は立ち去ろうとする。恨み事を言い続ける享。「兄貴は口がうめえからなあ~。俺も連れてってくれよ~。健太ちゃん、どうすんのよ~」「だからさっきも言っただろう!このままじゃな、みんな、共倒れになっちゃうんだよ!」「やだよあんなションベン垂れよお~。兄貴ちょっと待って~あと少しだけ話してっておくれよ~・・・口ばっかしじゃねえか兄貴はよぉ~」「てめえ、ふざけんなよなあ!俺が絶対帰ってこねえと思ってんのか!」「ああ、わかったよ、今度こそ兄貴って人間がわかったよ。調子ばっかし良くってよ、結局自分のことしか考えてない、血も涙もない人間なんだよ・・・わかんなかった俺がしょうがねえんだけどよ。しょせん赤の他人同士なんだから。病人を粗末に扱いやがってよ。嘘つき・・・」。ひとり屋上で仰向けになる享。ポケットに馬券が入っていたことを思い出す。「ラジオを聴かなきゃ・・・ラジオ、ラジオ・・・」。這いつくばって部屋に戻ろうとする。修はタクシーに乗って横浜港へ向うが、日曜日でもやっている薬局を探してほしいと告げる。「今の風邪は注意しないとすぐ肺炎になるって、ラジオで言ってましたからね。急性肺炎になったら一晩でコロリだそうですよ」と運転手(ゲバー署長)が話す。そして享は死んでいた。「おい!冗談じゃねえぞ・・・亨。え!亨っ!」。その頃、辰巳は一人綾部貴子を見送っていた。逃走の果てのみすぼらしい姿。「貴子さん・・・」。約束の時間に修は来なかった。海津警部と乱闘する辰巳。「逃げたいんだ!逃げたいんだ!」。泣きながら風呂を沸かす修。「亨・・・お前風邪で死ぬなんておかしくて涙も出ねえよ・・・。お前ホントにバカだよお。俺・・・もうどこにも行かねえから・・・亨よ。寒いだろう?風呂入れてやるよ。な?風呂。あったかいだろう?亨あ・・・。今、女抱かせてやるからな」。ヌードグラビアを享の身体にペタペタ貼り付ける。そしてビルの解体業者がやってくる。「出て行けってよ・・・」。亨を背負う修。「まだよぉ、まだ墓場には行かねえからよ!新宿のトルコとかよ、川崎のトルコとかよ、俺、今日おごってやる!一杯!行くぞー!」。ドラム缶乗せたリヤカーを押して夢の島を進む修。ドラム缶には享が入っている。夢の島にドラム缶を置く。逃げるように走り去る修。夢のような過去は 消えゆく一人だけで ただ歩く もう誰もいない誰もいない 一人だけでただ歩く風が運ぶ春は よけていく一人だけでまだ歌う この俺を笑う誰もいない 一人だけでただ歌うお・わ・り