ウルトラQ 第28話「あけてくれ!」
乙武氏、以前から只者ではないと思っていたが。ウルトラQ 第28話「あけてくれ!」夜のドライブに出かけた淳、一平、由利子。しかし淳と由利子はゲスいのでドライブインに一平だけ残して出発。大量の買い物を抱えたまま取り残された一平は絵にかいたような三枚目。「ドアホッ!」「死ねや!」と激昂する一平。ふと夜空を見上げると小田急ロマンスカーそっくりの列車が走り抜けていた。ラブラブで車を走らせる鬼畜たち(淳と由利子)の前に中年男・沢村が倒れていた。淳は車に乗せるととりあえず一の谷博士の研究所へ向かう。ところが踏切で通過する電車を待っている最中、突然沢村は意識を取り戻し「あけてくれー!俺は降りるんだー!」と錯乱する。場面が変わって電車の中。沢村は誰も乗っていない車両の中で「あけてくれー!」と叫びまわっていた。そこに現れた車掌さん。「切符を拝見します」「えーと・・・どこにやったかなあ?最近物忘れが多くて。えへへ」「無賃乗車ですね」と別の車両に連れられる。車掌は沢村をSF作家・友野の元に案内する。友野曰く、この列車は現実の世界から別の世界へ逃げ出すためのジャンプ台のようなものだと。時間と空間を突き抜けて理想郷に向かう。そこにはつらい仕事や冷たい家庭もない。派閥争いや受験戦争もない。列車の窓には過去の映像が次々と映し出される。会社の上司、昔の家族。沢村の出征か?小さかった娘が自分を追いかけてくる。それを見て沢村は急に現実の世界に戻りたくなる。「あけてくれー!ここから降ろしてくれー!」。その後、一の谷研究所で保護されていた沢村は家族に引き取られる。妻から激しく叱責される。沢村は俯いたまま。その姿が余計に妻を苛立たせる。そんな両親を見て娘は絶望する。「やめて!お父さんもお母さんも嫌いよ!」。沢村は乗っていた車を降りると会社に向かう。もうすぐ退社時間。しかも無断欠勤が続いていた。上司は沢村を罵倒する。沢村は自分の机に座りしばらく何かを考えると、上司に「お世話になりました」とだけ告げて立ち去る。そんなこんなで沢村と同じような経験をした人たちが何人もいることが判明。そんなこんなで淳と由利子は友野を訪ねるが自宅にいたのはお手伝いさんだけ。もう一年も帰っていないが原稿だけは必ず届くという。何の成果も得られず帰ろうとしたところ、車の中に友野の原稿が置かれていた。原稿には自分が異次元の世界へ行くことになった経過が書かれていた。友野もまた現実の世界と人間関係に嫌気がさしていた。今乗っているエレベーターがこのままどこまでも深く降りて、別の世界にたどり着かないか。そしてエレベーターの扉が開くとそこは別世界だった。科学が発達し、差別も苦しみもない、まさに理想郷。こうしてあらゆるものとの関係を断ち切った友野は異次元の世界に住み続けることとなった。家庭と仕事を捨てた沢村は当てもなく夜の道をさまよう。頭上には異次元の世界に向かって列車が走り去っていく。「おーい!連れて行ってくれー!俺も連れて行ってくれー!」。お・わ・り久しぶりに全話鑑賞。ふり幅の広さは『緊急指令10-4・10-10』といい勝負。怖い話はとことん怖いがトホホな話も結構多かった(「甘い蜜の恐怖」「宇宙指令M774」「206便消滅す」とか)。ドラマ面の完成度は東宝系スタッフよりもTBS系スタッフのほうが高いことも再確認。当時円谷プロは東宝の資本提供を受け系列会社に位置付けられていたが、ウルトラシリーズに関してはTBS主導で作られていた様子。他局での円谷作品がやたら野暮ったいのに対してウルトラシリーズを始めTBSが共同制作したもの(「怪奇大作戦」とか)だけ突出して洗練されているのはTBSの企画力とセンスなんだろうなあ。ということで「ウルトラQ」これにて終了。