必殺仕置屋稼業 第28話「一筆啓上崩壊が見えた」
また騙されちゃった。必殺仕置屋稼業 第28話「一筆啓上崩壊が見えた」吉原に身を売ることになったおさよを強請る卯之吉。市松は卯之吉を始末するが、誰かに見られてしまう。卯之吉は殺し屋の元締・睦屋佐兵衛の息子だった。父親の睦屋に殺しを頼んだ依頼人の弱みに付け込んで強請集りをする外道。おさよの父親・与平(藤森教授)も被害者の一人で、おこうが与平から卯之吉殺しを請け負った。問題なのは市松が主水たちとは別に他の殺し屋からの仕事も請け負っていること。市松は以前、睦屋から仕事を請け負ったことがあった。今回のことが睦屋に知れたら市松だけでなく主水たちの命も狙われる。主水は市松にしばらく身を隠せと言う。印玄にも市松を守ってやれと言うが「俺たちを売るようなそぶりを見せたら構わねえから…殺せ」「市松はそんな男じゃねえよ!」。ある日、おこうは中村家を訪ね、せんとりつに出張髪結い。主水は頼んだ覚えがないとおこうを連れ出すと、市松が殺しの現場を見られたと告げる。睦屋はあらゆる手を使って命を狙ってくるに違いない。「あの世に銭を持って行ける訳でもないし、今のうちにパッと使って道楽でもするんだな」。そんなことよりおこうは主水に髪結い代を請求する。たまには奥方孝行するよう気を利かせたが、嫁の出来の悪さに閉口「あんな嫁はん早よう縁切って糞ババアと一緒に追い出しなはれ」。追い出すと言っても出て行くのは養子の主水。「出て行ったらよろしいがな。わてが面倒見てあげまんがな」「え?髪結いの亭主か…はは悪かねえな」。ある日、村野様は主水を連れて市松を訪ねる。目安箱に市松が人殺しだという訴状があったからだ。この半年間、江戸で次々と変死体が上がっている。村野様は密かに下手人を探していた。さらにその夜、竹トンボを削り出していると卯之吉の兄・徳太郎(ブラック指令)に襲撃される。翌日、子どもたちに竹トンボを披露。ほのぼのしたやり取りに見張っている印玄もほのぼの。その直後、市松は睦屋の配下・伊蔵たちに捕まってしまう。激昂した睦屋は市松を何度も殴りつける。「俺はお前エを殺してやりてえ!だがお前エ一人を殺しやしねえ。お前エに殺しを命じた奴、その中を一人残らず殺さにゃあ俺の気が済まねえ!」。しかし元締と仲間の名前を言えば命は保証する。猶予は三日間。市松は印玄につけられていることに気づいていた。「もし俺が裏切るようなそぶりを見せたら…殺せと言われているんだろう?八丁堀ってのはそういう男だ」「八丁堀がどうだろうとお前エは裏切るような男じゃねえ。俺はそう信じてるんだよ!」「信じてる!?・・・だが俺は死にたくねえ」。それでも信じていると訴える印玄に「八丁堀に言ってくれ。八丁堀の命は俺が握ってるってな」。そんなこんなで与平とおさよは睦屋に拘束され、卯之吉を殺した仕置屋の名前を言うよう拷問を受ける。与平があっさり口を割ったことを知った主水と捨三はおこうの許へ。おこうは伊蔵に連れ出されるところだった。そこへ主水が強引に割り込み、盗人の疑いで番屋へ連行して命拾い。しかし盗人の疑いを掛けられると商売あがったりとぼやく。「お前エ金と命とどっちが大事だ?」「どっちも大事だす。せやけど中村はん、あんたとわてとちょっとした道行でんな」と暢気なことを言う。そこに心中騒ぎが起こる。河原に与平とおさよの遺体が打ち上げられていた。「お前エも寸でのところでああなるところだったんだぞ」。その夜、おこうは素直に牢へ入る。しかしおこうと繋がっているのは主水だけ。おこうが口を割れば主水が危ない。市松は場合によってはおこうの口を封じるべきだと主張。「俺の口だって封じるつもりでいるんだろう?そうだろう八丁堀」。決断できない主水。「それは・・・いずれ俺が決めよう」。翌朝、牢からおこうの姿が消えていた。盗人は火盗改めの管轄のため連行されたというが、実際には睦屋に監禁され拷問を受けていた。責め殺されるならまだ楽だ。主水の名前を吐かせるまで、殺さずに責め続けるだろう。印玄はおこうを助けに行くと言うが、主水は正体を明かすことになると止める。おこうを見殺しにするのか?ここでも主水は決断できない。市松も姿をくらましたまま。印玄は主水と捨三を残して単身睦屋の屋敷に向かう。その頃、市松は仲間の名前を言う代わりにおこうを引き渡すよう睦屋と交渉していた。睦屋は市松の真意を見抜くとピストルを突き付ける。一方、責め続けられるおこう「市松さん・・・わてのことなら心配いりまへんで・・・」。絶体絶命と市松とおこう。その時、屋根裏に潜んでいた印玄がおこうを吊り上げる。その瞬間、市松は伊蔵を仕留める。睦屋の撃った球が印玄に命中するが、印玄はおこうを抱えて屋根の上へ。待機している市松に向けておこうを降ろそうとする。その時、背後から徳太郎に刺される。それでも縄を離さずおこうを降ろす。滅多刺しされる印玄。市松がおこうを受け止める。印玄は徳太郎に刺されたまま徳太郎を離さず落下、市松の目の前で絶命する。「印玄・・・!」。女(母親)にトラウマを持つ印玄が女を助けるため、自分の殺し技で死んでしまう。しかも母親と同じ死に方で(※第13話参照)。市松はおこうを抱えて主水と捨三が待つ竹の湯へ。「印玄が死んだ!」「そうか…」「おこうを助けて・・・見事な死にざまだったよ」。おこうの意識は朦朧としている。主水の呼びかけに「誰が死んだりしますかいな、どっさり貯めたお金をあんたと使うまでは死にまへんで・・・死んだりしますかいな…中村はん・・・あんたあほや、ほんまにあほんだらや、あんな嫁さん早え別れはなれ」「それだけ憎まれ口が叩けりゃ死んだりはしねえぞ」「抱いて・・・わてを抱いて・・・中村はん、この稼業やめたらあきまへんで、いつまでも続けとくなはれや、いつまでも・・・この稼業続けときなはれや・・・」。おこうは息を引き取る。主水は必ず睦屋を始末すると言うが、この期に及んでも動こうとしない。「それじゃ死んでいったおこうや印玄はどうなる?皆手前エのつら晒して死んでいったんだ!」「だがな市松、俺が役人だからこそこの稼業は成り立っているんだ。俺のつらの皮が剥げてみろ。この稼業はやっていけねえぜ」。思わず飛び出そうとする捨三に「待て!死んだ奴は帰ってこねえぞ…捨三!ぎりぎり一杯生きるんだ」と諭す。市松は主水を睨み続ける。翌朝、市松が捕まってしまう。睦屋が番頭の伊蔵を市松が殺したと訴えたのだ。他にも証人がいるため番屋から小伝馬町へ移送、本格的な取り調べが決まる。睦屋は市松を助けるため必ず仲間が姿を現すと考え、番屋の周りを見張っていた。ある夜、主水はしれっと睦屋に声を掛ける。「実はあんたにお願いがあるんですがな」「お願い?何の」「市松のことなんですがね」「市松の?」「市松が殺しをやったのは人違いだとあなたから申し出てくれませんかな?そうすりゃ市松は無罪放免、獄門打ち首は取り消しになるんですがね」「そうか…あんたが仕置屋の元締だったのか…!」「中村主水だ!」睦屋は主水に始末される。市松の移送は明日。睦屋殺しで村野様たちはピリピリしている。牢屋で対峙する主水と市松。主水は今の状況ではとても牢屋から逃がすことはできないと告げる。「そんなことを言いに来たのか。小伝馬町に行きゃ調べが始まる。取り調べには拷問はつきものだ」「そりゃ俺だってお前エをこっから出してやりてえ。今すぐにもな。だが下手して俺の首が飛ぶようなことになってみろ?稼業に差し支えるんだ」「手前エの首が飛ぶのがそんなに怖いのか?」「・・・」「それはお前エの本音だろ?」「・・・」「何だかんだ言いながら結局手前エを一番大事にしているのはお前エじゃねえか!」。何も言い返すことができない。その夜、主水は屋台でそばを食べながら持ち帰り用の握り飯を注文すると再び牢へ。市松に竹串を渡す。「これはどういう意味なんだ?」「・・・」「どういう意味なんだ八丁堀!」「・・・」「死ねってことか?」「うん…死んでもらうぞ」「俺が口を割ればお前エも一緒に地獄へ落ちる」。市松に睨まれ視線をそらす主水。翌朝、雪が降る中、市松が小伝馬町へ移送される。市松の周りを主水たちが警護している。その時、子どもたちが遊んでいた竹トンボが飛んでくる。市松は足元に竹トンボが落ちると転んだふりをして拾い上げる。竹トンボの羽で縄を切り始め、主水が市松の後ろに回り込む。縄が切れる。後ろをつけていた捨三を主水が怒鳴りつける。列から離れようとする主水を同心が注意する。その瞬間、市松は同心から刀を奪って首に突きつける。同心は主水に市松を斬れと命じる。「いやしかし・・・」「構わん!斬るんだ!」と言われて刀を抜くが、捨三が後ろから主水を突き飛ばす。その弾みで市松逃走、姿を見失ってしまう。主水は物陰に潜んでいる市松に声かけると握り飯の入った包みを渡す。無言で受け取る市松。その後、主水は今回の失態で減俸の上、奉行所の中でも一番最低の牢屋敷見廻り同心に格下げが決まる。江戸から逃げ出せた市松は主水から貰った握り飯を口にする。頬張るとかちりと硬い音がする。握り飯の中に小判が入っていた。笑みを浮かべる市松。誰もいない奉行所で主水は書類を火鉢にくべていた。髪は乱れ、無精ひげを生やし、やつれている。しかし主水もまた笑みを浮かべていた。つ・づ・く!