暗闇仕留人 第27話「別れにて候」
冷麺は楊夫人。暗闇仕留人 第27話「別れにて候」黒船が横浜沖に再来航。威嚇の空砲ぶちまくりで江戸は大騒ぎ。貢は何かを思い立ち大切にしていたオランダ語の辞書・グラマチカを手放そうとしていた。主水は貢にこれからどう生きて行けばいいか訊ねる。世の中の動きは自分たちが思っている以上に早い。その早さについていけないのだ。幕府の大方は攘夷派が占めているが、黒船を追い返すほどの技術や国力もない。その頃、江戸城では開国か攘夷か激論が交わされていた。中でも良識派の若年寄・松平玄蕃頭(戸浦六宏)はアヘン戦争に敗北した清国を例に出して開国を強く主張していた。貢は玄蕃頭の娘(西崎みどり)に絵を教えていた。また玄蕃頭の考えを支持していた。ところが玄蕃頭は女とアヘンが大好きッ子という別の顔があり、根岸屋(山崎加代の父親)と結託し、高台にある妾の屋敷からまっすぐに海を眺めたいという理由だけで、高台から海の間にある貧乏長屋をぶっ潰す計画を企んでいた。早速根岸屋チームが取り壊しを開始。飾り職の鶴吉(浜村純)と娘のおはつだけが立ち退きに応じようとしなかった。そこで根岸屋チームは長屋に火を着けて全焼させるが鶴吉は抵抗を続ける。ある夜、貢が居候している出会い茶屋に三人組の男客が現れる。ホモ?一人は何だか泥酔しているのか抱えられている。ところが川へ転落、貢が助け出すが既に死亡。男は鶴吉で大量のアヘンを投与されていた。主水と大吉は貢から話を聞くが、主水によると根岸屋と玄蕃頭は繋がっているため、奉行所が動いたとしても揉み消される。「よくそんなことで十手持ちが務まるな?」と不満を口にする大吉に対して「務まらねえからお前えたちと組んでるんじゃねえか。銭でも貰って恨みを晴らしてほしいと言われてるなら話は別だぜ。鶴吉のことは忘れるんだ」。しかし貢は銭を貰ったとしても今回の仕事は断ると言う。「近頃何もかも嫌になってきた。もう少し考えてみたい。俺たち何のために生きているのか。何のために今まで人殺しをしてきたのか」。主水は貢の話を聞く。「前から考えていたことなんだ。なあ八丁堀、俺たちは今まで何をしてきたんだい?世の中動いている。この川だってオランダやアメリカやイギリスの都ロンドンのテームズ川にだって繋がってるんだぜ」「なるほどなあ・・・だからどうだってんだ」「だから俺たちは何をしたかって言ってるんだ。少しでも世の中よくなったか?俺たちにやられた奴らにだって妻や子がいたかもしれないし、好きな奴があったかもしれないんだ」。一方、人情派の大吉とおきんはおはつに父親の鶴吉から何か託されていなかったか聞き出すが「別に何も」。しかしその夜、おはつは書き置きと鶴吉から預かった四両を残して根岸屋へ向かっていた。鶴吉は自分に何かがあれば仕留人に恨みを晴らしてもらうよう託し、しかも本当の悪は根岸屋ではなく松平玄蕃頭だと伝えていた。それでも仕事を引き受けようとしない貢と主水、大吉がディスカッションを交わす。「前にも言ったろ。この仕事はやめだ」「相手が松平玄蕃頭だからか?娘に絵を教えたからか?なあ糸井、人にはそれぞれ生き方がある。そりゃまあそれでいいだろ。だがなお前えがこの稼業に足を突っ込んだ時にどんな腹の括り方をした?俺たちは人間のカスだ。しかしカスはカスなりに生き方がある。それがこの稼業だとお前えそう腹に決めなかったのかい。糸井、この銭は受け取ってもらうぜ。今日まで無事に生きてこられたのはこの銭のおかげなんだ。お前えの身体の骨の髄までこの銭の匂いが染みついてることを忘れんなよ。お前え一人が格好つけようとしたってな傍から見りゃそりゃお笑い種だぜ」「そりゃそうかもしれん。しかしな今度やろうという相手、松平玄蕃頭その身辺は確かに清廉潔白であるとは言い切れんものがあるかもしれん。しかしな彼の幕閣における見識、国を開こうとする勇気は今の幕府にとっちゃなくてはならんもんなんだ。その人の一面だけを捉えて糾弾するのは間違ってるとは思わんか?」「何言ってやがんだこの野郎!その松平や根岸屋に殺された鶴吉や犬みたいに追い立てられた連中の恨みはどう思ってんだお前えは!いつからそんな腰抜けになりやがったんだよ!」。翌日、貢は仕事を引き受ける。但し「八丁堀に伝えてくれ。これで最後だ。最後にさせてもらうってな」。その夜、おはつは根岸屋を通じて玄蕃頭に差し出される。主水は屋敷の見張り役をぶっ殺し、大吉は根岸屋の心臓を捻り潰す(※レントゲン撮影&心電図)。そして貢が玄蕃頭を仕留めようとするが玄蕃頭の一言に手が止まる。「分からんのか!わしを殺せば日本の夜明けが遅れるぞ!」。その瞬間、玄蕃頭に斬られ、玄蕃頭は駆け込んだ主水と大吉にダブル仕置される。主水は大吉に貢を生き返らせるよう指示。大吉が貢の心臓をマッサージ(※レントゲン撮影)、心臓が動き出し貢は眼を開くが「すまなかった・・・」とだけ言うと絶命する。「俺たちもここで別れようぜ。今が潮時なのかもしれん。糸井がそれを教えてくれたんだ。さあ糸井を送ってやろうぜ」。主水は布に包まれた貢の胸元にグラマチカを入れる。「糸井はなこれと一緒に海の向こうへ行きたかったんだ。行って来いよ、海の向こうへな・・・」。主水たちは貢の亡骸を海に流す。その後、主水は日米会談の警護役に抜擢される。降り始めた雪を見ながら物憂げな表情を浮かべる主水、妙心尼に別れを告げて旅に出る大吉、おきんはおはつに見送られながら江戸を発つ。その時、巡礼の旅に出る玄蕃頭の娘とすれ違ったことに気づかないまま。大海原の沖へ流れていく貢の亡骸。お・わ・り