必殺からくり人 第13話「終りに殺陣をどうぞ」
えー鯖という字はフィッシュ偏にブルーでしたっけ? 長嶋茂雄 必殺からくり人 第13話「終りに殺陣をどうぞ」藤兵エはとんぼに匕首を渡すと仇吉を迎えに出かける。仇吉は曇りに呼びつけられていた。先代の元締・蘭兵衛を殺したのは曇りだ。仇吉はそのことを持ち出すが、曇りは先日の狙撃未遂事件を引き合いに出し、さらに事件以来姿を見せなくなった時次郎に会いたいと言い出す。「時次郎が俺や幕府のお偉方を狙ったとなるとちいとばかり話が面倒なことになる」。或いは仇吉たちに配下へ加わるよう迫るが「私たちは涙以外とは手を組みません。涙がこぼれるような依頼しか引き受けない」と断られる。「涙?がはははーそんな甘っちょろい考え方をしてるから先の元締は死んだんだ。その考え方を変えねえ限りあんたも同じようになるぜ」「昔からお上と結び付く殺し屋は臆病者。あんたたちが考えている程、花乃屋の一党、甘っちょろくて弱いかどうか」「試してみろというんだな?」「勝負!」。こうして花乃屋チームと曇りチームの全面抗争が始まる。まず屋形船で仇吉の許へ向かっていた藤兵エが襲撃される。川の中で大乱闘。何とか敵を倒して船に戻るが、別の手下たちに何度も銃で撃たれた上に滅多突きされる。「姐さん・・・迎えに行きますからね」。仇吉は藤兵エの最期を見届ける。その頃、とんぼにも曇りの手下たちが迫っていた。「お母さん、藤兵エさん・・・」。一人仕留めたものの次々と襲ってくる。そこに仇吉が駆け付け難を逃れる。しかし戻ってきた屋形船には変わり果てた藤兵エの姿があった。仇吉はとんぼに蘭兵衛と時次郎の位牌、三味線を持たせて花乃屋を後にする。その頃、へろ松は父親・藤兵エが死ぬ正夢を見て大騒ぎしていた。「また寝ぼけやがって!」と天平は呆れるが、曇りの手下たちが迫っていることに気づく。三人仕留めたものの小屋に爆弾を放たれて大爆発。天平は視力を失ってしまう。さらに手下たちが襲いかかる。「右や!左や!真っすぐや!突っ込め!」へろ松のサポートで辛うじて仕留める。翌朝、仇吉ととんぼは敵に追われながら天平の小屋に辿りつく。無残な瓦礫の山になっていたが天平とへろ松の死体が見当たらない。二人共生きていると確信する。仇吉ととんぼが死んだと思った天平は復讐を誓う。めそめそするへろ松。絶体絶命の花乃屋チーム。仇吉はとんぼに大坂・曽根崎新地の清元信光という三味線の師匠を尋ねるように言うと一人で仇を討ちに行く。「皆死んじまったらからくり人がいたってこと誰も知ってくれないじゃないか。どうしても曇りだけは殺す。殺さなくちゃならない」「無理よ!」「無理でも生かしちゃおけない。悪いお母さんだったね」。長唄を口ずさみながらとんぼを乗せた小舟を押し出す。「あかあさん・・・おかあさん・・・おかあさーん」何度も叫ぶとんぼ。そして天平もへろ松に支えられて曇りの屋敷に向かっていた。「お前は行くんだよ!」「天平さん!」。門を爆破すると松明を持って勘だけを頼りに単身乗り込む。「曇りを出せー!」。大勢の手下に囲まれ、松明と花火を闇雲に振り回す。「曇りを出せー!」。花火に火を点けて手下たちに迫るが、躓いたはずみで自爆してしまう。爆発音を聞いた仇吉は次々と襲ってくる手下たちを倒しながら天平を探すが見つからない。姿を現す曇り。「曇りさん一緒に死んで貰いますよ」。曇りの向けた銃口が仇吉を狙う。仇吉の撥が曇りに突き刺さると同時に、曇りの撃った銃弾が仇吉を貫く。遠のく意識の中、八丈島を抜け出した時の記憶がよぎる。蘭兵衛、藤兵エ、天平、時次郎。一人小舟に乗っていたとんぼはへろ松と再会を果たす。「天平さんが死んじゃった。俺らこれからどないしたらええんやろ・・・」。いつまでも泣いているへろ松。三味線を弾くとんぼ。「明治の初め上方で清元の名手として名をはせた信寿はとんぼのこと。その姿といい撥さばきといい仇吉そっくりであったといいます」。年老いた清元信寿が三味線を弾いている。お・わ・り「金」をもらって恨みを晴らすのが必殺シリーズの基本設定。但しからくり人は一切「金」を受け取らない。代わりに「情」が仕事の動機となる。しかし、そのことが半ば仇になり全員殉職という前代未聞の結末を迎える。しかも曇りチームとの抗争はただの私闘であり殺し屋のセオリーからも大きく逸脱している。他方、必殺シリーズの顔・中村主水は「金」を仕事の絶対条件としている。ゆえに闇の世界に居座り続けることができた。殉職した殺し屋のほとんどが「情」で悲惨な末路を辿ったことを考えると中村主水の存在が際立つ。我々の仕事も同じです。それにしても『必殺からくり人』を観るたび壮絶過ぎて溜息しか出てこない。