天皇の世紀 第十三回「壊滅」
自分の星に帰ろうぜ。天皇の世紀 第十三回「壊滅」新藤兼人と吉村公三郎コンビによる一本。『天皇の世紀』はどれもこれも異色作だらけですが、今回はほぼ全編に渡ってナレーションで処理。結構な異色作です。そのためドキュメンタリー感がやたら強く、原作者の大仏次郎がイメージしていたものはこんな感じだったのかも。舞台は再び水戸藩。徳川斉昭の懐刀・藤田東湖の四男である藤田小四郎(権藤一佐)が主人公。藤田小四郎は頭が良くて優秀だが所謂やんちゃ。たぶん水戸藩のエグザイルと呼ばれていたと思う。世間の波に乗って尊王攘夷を掲げていたが、違うブームが来ていたら違う波に乗っていたのではないかとも思う。そんなこんなで水戸藩で最もヤバイ男に成り上がり。いつまで経っても横浜港を鎖港しない幕府のやり方に腹を立て、元治元年に筑波山で挙兵(デビュー)、天狗党を結成する。ただし「オレまだ23歳。ベテランにプロデュースしてほしいなあ~」と徳川斉昭と共に謹慎処分されていた武田耕雲斎(加藤嘉)を首領格に招聘。さらに水戸町奉行・田丸稲之衛門もリーダーとして招聘。当初二人とも固辞したが、藤田小四郎のガッツに「お前さんには負けたぜ(笑)」と言ったかどうかは知りませんが、行動を共にすることに。そして暇な町人や農民、頭の悪いフーリガンなどが続々と加わって1400人以上の大軍団に膨れ上がる。「お前らやり過ぎやん!」と怒った藩主・徳川慶篤は田丸稲之衛門の兄・山国兵部を派遣するが山国も軍団入り。もう奴らを止められない。日光東照宮を参拝して「オレたち幕府族」と見せつつデカイことをやろうと画策。でも金が無くなってきたよ。つうことで、なんとあちこち(桐生や足利あたり)の町人や商人を脅して金品を調達、断ったら逆ギレ。放火、殺人、略奪と極悪三昧。ただの暴徒です。これには「うまくないね~」と水戸藩は本格的な排除に着手、幕府も追討軍を派遣する。ついに幕府軍と天狗党の戦闘が開始するが、立派なプロデューサーを招聘しても血の気が多いだけの素人集団に勝ち目はなく敗走を続ける。さらに虐げられてきた地域の皆さん(桐生や足利あたりも含む)も反撃を開始。天狗党の連中をボコボコに殺って殺るぜ。「こうなったら一橋慶喜公に拝謁して朝廷に尊王攘夷を訴えようぜ!」と訳の分からないことを実行しようとするが、肝心の一橋慶喜(松橋登)から「誰が会うか!ボケ!」とNGを喰らう。「こうなったら京都へ行こうぜ!尊王の志士たちと合流だ!」と一応尤もらしいことを実行しようとするが、幕府は諸藩に「あいつら殺れよ」と命令、あちこちの街道は封鎖される。止むを得ず日本海ルートの越前から京都入りを目指すが、なんだか京都もヤバそうすっよ。そこで長州行きも検討されるが、一橋慶喜にも見放されたこともあって「もう無理ッス」と加賀藩に投降する。当初、加賀藩では手厚く対応されていたが「何を甘やかせとんねん!」と幕府激昂。たちまち真冬の肥料小屋やぶち込まれる。尊王攘夷を掲げながら、実際には思想も鼻くそも無い。散々好き勝手なことをした報いとして当然である。その後、形式的な裁判を経たのち井伊直弼を暗殺された恨みつらみの彦根藩の皆さんによって次々と斬首、352名が処刑される。こうして水戸藩内部の凄惨な内部抗争は収束する。お・わ・り『天皇の世紀』は時間と金をかけ過ぎたため、今回を持って打ち切りとなります。モーレツに面白かったのに残念。幕末の日本って今の中東みたいな状態だったのね。大河ドラマのようなマイルドな描写が限界なんでしょう。そもそも幕末ものは、色々と不味すぎて映像化できない。打ち切りの本当の理由はそっちだったのかもしれません。