横溝正史シリーズⅡ 黒猫亭事件 後篇
ばか売れ。 横溝正史シリーズⅡ 黒猫亭事件 後篇「ボク金田一耕助デス」の名セリフと共にカメラ目線で前回のあらすじをおさらい。お繁が恐れていた「鮎子」は実在するのか?お繁の行動は却って周囲から疑惑を招くだけでは?金田一はお繁がかつて起こした殺人未遂事件の顔入り写真記事をゲット。それを持って鮎子が働いていたダンスホールへ。その頃、日和警部は重要参考人の日兆を再度取り調べ。マーシー級の覗き行為が趣味の日兆は黒猫亭をがっつり覗き。そんな中、見たこともない女が黒猫亭に出入りしてお繁の着物を着てお繁のように振舞っていたと証言。つまり殺された女はお繁だと。一方、女中・お君は顔は見ていないがお繁はずっと黒猫亭にいたと証言。覗きレジェンドの点で日兆の証言は信憑性が高い。日和警部は糸島とお繁になりすました「鮎子」がお繁を殺害したと推理する。しかし「それは物理的に不可能です。ガハハ」と金田一に否定される。「お繁と鮎子は同一人物です」「えー!」。ダンスホールの関係者にお繁の写真を見せたところ全員「鮎子」だと証言した。お繁はいつも着物姿を通してきたが、ダンスホールでは外人のようなバタ臭い姿に変貌。そのため別々の女のように思える。一人二役を演じたのは周囲の疑惑を招くため。まさに日和警部説がそれ。「それじゃ死体は誰なんじゃ?」。金田一は糸島が大陸から連れて帰ってきた小野千代子の行方を探す。千代子は女郎屋で働いていたが無断で足抜けしていた。気がつくといつも千代子とひそひそ話しこんでいる女がいた。お繁だった。死体は千代子の可能性が出てきた。さらに糸島もお繁が殺害、動機は十分ある。翌日、警察の張り込み中に日兆が自殺する。事件は迷宮入と思われたが、金田一は別の見立てをしていた。顔の無い死体は犯行の前日から姿を見せなくなった千代子。死体の傷跡から男の力と推測。共犯者は男と考えられるが糸島ではない。糸島には千代子を殺す動機がない。お繁は一年前から犯行を計画していた。「鮎子」と名乗ってダンスホールで働き始めたのはその手始め。あたかも「鮎子」によってお繁が殺されたかのように事件を見せかける。その身代わりにされたのが千代子。お繁は自分自身をこの世から抹殺したかった。「鮎子」は存在しないので警察に捕まる心配はない。事件は迷宮入り。そして自分を食い物にしてきた糸島を殺害するため、自分に惚れ切っていた日兆を利用。糸島が死ねば日兆は邪魔でしかない。日兆が自殺した理由はお繁の本心を知ったからかもしれない。一方、お繁には生涯で唯一本気で惚れた男・風間がいた。「でも自分を殺したら風間に会えないよ?」。それに昨夜張り込み中、黒猫に餌を与える手を見たが日兆ではなくて誰?全員日兆の寺へダッシュ。偶然見つけた防空壕から抜け出ると、寺の境内に「鮎子」の姿をしたお繁がピストルを手に待ち構えていた。何度も発砲。金田一だけを狙う。そこに駆けつけた風間を見てピストルから手を放す。その後、墓石の下から糸島の死体が発見される。黒猫の死体は単純な偽装工作だった。事件は解決したが金田一はもやもや。風間は戦争さえなければお繁は大陸にも渡らず、糸島と会うこともなく平凡な人生を歩んだのではないかと話す。しかし金田一は風間を厳しく断罪する。お繁は本気で風間に惚れていたが、風間は本気で応えようとしなかった。お繁を傷つけまいとしたが却ってお繁を殺してしまった。「この事件の主犯は風間さん、あなたのその優しさなんだ。そう思いませんか?」。翌日、雨の中護送されるお繁を見送る風間。お・わ・り登場人物が少ないせいか、終始金田一が事件の解決に介入。謎解きの面白さでは今のところダントツ。演出は東宝と松竹で狂ったように「狂った」ドリフ映画を撮りまくった渡邊祐介。器用で実力も高いので何でも撮れてしまう職人。しかも丁寧。ドリフ映画以上に見応えありました。