イラスト素材提供サイト:薔薇素材Mako's様
「失礼ですが、貴方の叔母様はどのような身分の方なのですか?」
「わたしの母は、アメーシア王国を統べる女王です。ヴィクトリア叔母様は、母の妹に当たります。」
「そうでしたか・・では、もしわたしの母が貴方の叔母様ならば、わたし達はいとこ同士ということになりますね。」
「ええ。」
アメリアと雪華がそんな話をしていると、台所に総司がやって来た。
「二人とも、ここに居たんだ。早くしないと朝餉のおかず、なくなっちゃうよ。」
「はい、解りました。」
二人が広間に入ると、そこにはおかずを奪い合う永倉新八と藤堂平助の姿があった。
「新八、俺のおかずを盗るなよ!」
「こういうものは、早い者勝ちなんだよ!」
新八はそう言いながら、平助が残していたおかずを箸で横からかっさらっていった。
「やめねぇか、新八、平助!幹部がそんな下らない事で争っていたら、隊士達に示しがつかねぇだろうが!」
歳三がそう言って二人を睨むと、慌てて新八は平助が残していたおかずを彼の皿へと戻した。
「いつも騒がしくて済まないね。」
「いいえ、いつもの事なのでもう慣れてしまいました。」
雪華は半ば呆れたような顔をしながら、そう言って朝餉を食べ始めた。
「どうしたの、アリシアちゃん?」
「いえ・・何だかこうして皆さんと食卓を囲むということが、今までなくて・・」
アメリアの言葉を聞いた歳三は、彼女がどんな家庭環境で育ってきたのかが容易に想像できた。
「そうか。これからお前は食事を広間で俺達と取ればいい。いちいちお前の部屋まで運ぶのは面倒だからな。」
「有難うございます。あの、後でお話ししたいことがありますので、お時間を・・」
「解った。」
朝餉の後、アメリアと雪華は副長室へと向かった。
「失礼いたします。」
「アメリア、俺に話してぇことってのは何だ?」
「セッカさんは、母親を探す為に変な男達に絡まれて、貴方に助けられたのですよね?」
「ああ、そうだが。それがどうかしたか?」
「実は、セッカさんが先程わたしに見せてくれた指輪と同じ物を持っている人を、わたしは知っているんです。」
「何だと、それは本当か?」
「はい。わたしの叔母のヴィクトリアが、セッカさんと同じ指輪を持っていました。」
アメリアはそう言うと、雪華を見た。
「その指輪がどんなものか、見せてみろ。」
「これです。」
雪華が歳三に首から提げているルビーの指輪を見せると、歳三は眉間に皺を寄せた。
「この指輪・・一度何処かで見たことがあるな。」
「本当ですか?」
「ああ。だが何処で見たのかは思い出せねぇんだ。雪華、悪いが俺がお前を助けた時の事を話してくれねぇか?」
「解りました。」
雪華がそう言って歳三と初めて出会った時の話をしようと口を開きかけた時、突然副長室の襖が勢いよく開いた。
「大変だ土方さん、会津藩の役人が屯所に来てるぜ!」
「会津藩の役人がここに来てるだと?それは本当か、新八?」
「ああ。何でも噂の真偽を直接土方さんに確かめたいんだとさ。」
「噂?どんな噂だ?」
「それが・・アメリアちゃんが、土方さんの隠し子じゃねぇかっていう噂が、京の街で広がっているらしい。」
「はぁぁ~?」
新八の言葉を聞いた歳三は、驚きのあまり声が裏返ってしまった。
作品の目次は
コチラです。
にほんブログ村