タイムスリップを題材にした小説ですが、平成から来た主人公・孝史と、蒲生邸の女中として働くふきとの心温まる交流や、孝史を蒲生邸に連れて来た平田の秘密、そして蒲生家の人々の姿が細かく描かれていて、ページを捲る手が最後まで止まりませんでした。
未来から来た人間にとって、戦争へと突き進んでゆく日本の歴史を何とか改変しようとするのは当たり前ですが、平田が言ったように、個人が死力を尽くしても歴史は変えられないものです。
終章で、現代に戻った孝史とふきが約束の日に雷門で再会することは出来ませんでしたが、ふきの手紙を読んだ孝史の心の中には、いつまでもふきが生き続けているのだろうなと思いました。