父親殺しの罪を犯した為、五香苑にて蟄居(ちっきょ)の身となった重興。
その世話をする為、五香苑で女中として働くことなった多紀は、重興の中に眠るいくつもの人格の存在に気づくー時代物でありながらも、人間の心の闇を描き出したミステリーでした。
出土村焼失の謎と、神鏡湖に沈んだ男児たちの遺体は、重興の父・成興が北見藩の為に企てた陰謀によるものでした。
成興は、息子を虐待していました。
虐待された子供は現実逃避をする為に別の人格を作り出すと言われていますが、重興は父から虐待を受けるたびに、「羅刹」という存在を生み出してしまい、彼は父親を手に掛けてしまったのでした。
真実が明らかになり、神鏡湖に沈められた男児たちの魂は、白馬に導かれて帰るべき場所へと帰りました。
犠牲となった者達は帰って来ませんが、清らかな白い雪がその者達の魂を癒してくれることでしょう。
作家生活30周年を記念する作品とあってか、大変読み応えがあった作品でした。