素材は
NEO HIMEISM 様からお借りしております。
(何故、この娘が・・)
アンジェリーナが扇子を握り潰しながらクリスティーネを睨みつけていると、アンジェリーナの視線に気づいたクリスティーネとフェリペがやって来た。
「陛下、とても素晴らしいダンスでしたわ。」
「アンジェリーナ、今宵の其方はいつにも増して美しいな。」
「まぁ陛下、お世辞がお上手ですわね。それよりもクリスティーネ様がいらっしゃるなんて珍しいわね。あんな事があったというのに・・」
アンジェリーナの挑発にクリスティーネは涼しい顔をしながらこう答えた。
「陛下がわたくしの事を誤解していたようですの。」
「まぁ・・」
「余はクリスティーネが王妃の指輪を盗んだと勘違いしていたのだ。その事で世間を騒がせてしまった。」
「陛下、わたくしは陛下の事を恨んでなどおりません。」
「アンジェリーナ、今回の事件は全て余の勘違いだったのだ。それ故クリスティーネはもう自由の身となった。」
「まぁ・・」
アンジェリーナとクリスティーネの目が一瞬合った。
クリスティーネは口端を歪めて笑った。
「上手く陛下を誑し込めたのねぇ・・」
「何をおっしゃっているのか、わかりませんわ。」
クリスティーネはアンジェリーナの手を掴むと、人気のない場所へと移動した。
「何故、父を殺したの?」
「あなたの父親は、知り過ぎた。」
「知り過ぎた、何を?」
クリスティーネがそう言ってアンジェリーナに詰め寄ると、アンジェリーナは邪険にクリスティーネの手を払った。
「余計な詮索はしない方がいい。」
「あなたは何故、私を憎むの?」
「お前は闇の恐ろしさを知らない。」
アンジェリーナはクリスティーネに吐き捨てるかのようにそうい言うと、舞踏会のざわめきの中へと戻っていった。
「お帰りなさいませ、お嬢様。舞踏会はどうでしたか?」
「疲れたわ。陛下が今回の事件についてみんなに説明してくれたけれど、みんな信じてくれるかどうか・・」
「大丈夫です、お嬢様。」
「そうね。」
舞踏会から数日後、クリスティーネは久しぶりに外出した。
「ねぇ、あの方・・」
「一体どのような神経をなさっているのかしら?」
「よく外を歩けるものだわ。」
クリスティーネがカフェでコーヒーを飲んでいると、向こうのテーブルで自分の事を見つめながらヒソヒソとそう話している貴族の令嬢達の姿に気づいた。
舞踏会でフェリペが事件について皆に説明してくれたものの、自分が王妃の指輪を盗んだ事を信じて疑わない者が居る事を、クリスティーネはひしひしと感じていた。
「お嬢様、お客様です。」
「お客様?」
帰宅したクリスティーネが客間へと向かうと、そこには親友・レイチェルの姿があった。
「クリスティーネ、大変だったわね。」
「えぇ。レイチェル、わざわざ来てくれてありがとう。」
「今日はあなたにこれを渡しに来たの。」
レイチェルはそう言うと、一通の手紙をクリスティーネに手渡した。
「これは?」
「生前、王妃様があなたに渡して欲しいと頼まれたものよ。」
「王妃様が、わたしに?」
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