素材は
NEO HIMEISM 様からお借りしております。
「わたしに何のご用かしら?」
「そんな事、既にお前なら知っている筈だ。」
アンジェリーナを客間に通した途端、彼女はクリスティーネを壁際まで追い詰めた。
「王妃の日記帳を何処へやった?」
「そんな物、知りませんわ。」
「どうやらお前の所へ来たのは無駄足だったようだ。」
アンジェリーナはそう言って舌打ちすると、そのまま客間から外へと出て行った。
「お嬢様、大丈夫ですか!?」
アンジェリーナと入れ違いに客間へ入って来たスンヒは、そう言いながら慌てて主の元へと駆け寄って来た。
「ええ、大丈夫よ。スンヒ、アンジェリーナは王妃様の日記帳を狙っているわ。日記帳を何処か安全な場所へ移さないと。」
「そうですね、でもお嬢様、一体何処へ隠すのですか?」
「予め決めていた隠し場所があるのよ。ほら、“木を隠すなら森の中”と言うでしょう?」
そう言ったクリスティーネはいたずらっぽく笑った。
「姉上、お帰りなさいませ。」
「マックス、どうやらあの小娘は王妃様の日記帳を持っていないようだ。」
「これからどうなさるのですか、姉上?」
「それは今、考え中だ。」
「先程、カバリュス様がいらっしゃいました。今後の事を話し合いたいそうで・・」
弟の口からカバリュスの名を聞いた途端、アンジェリーナの頭にある事が閃いた。
彼とはかつて、王妃殺害計画を企てた事があった。
「姉上?」
「マックス、お前に手伝って貰いたい事がある・・」
カバリュスは、馴染みの娼館でアンジェリーナが来るのを待っていた。
「カバリュス様、お久しぶりですわね。」
「マダム、アンジェリーナはまだ来ないのか?」
「あら、待ち人ならこのドアの向こうにおりますわ。」
娼館の女主人はそう言ってカバリュスをアンジェリーナが待つ部屋へと案内した。
「珍しいな、お前が娼婦の振りをして俺を待つとは。」
「さぁ、久しぶりに楽しもうか。」
アンジェリーナはそう言うと、カバリュスに抱き着いた。
「お前の身体は最高だ、アンジェリーナ!このまま天国へ行っちまいそうだ・・」
「お前が行くのは天国ではなく、地獄だよ。」
「な・・」
アンジェリーナの顔を見ようとしたカバリュスは、突然胸の激痛に襲われた。
「お前、さっきのワインに何を入れた?」
「カバリュス、お前は色々と知り過ぎた。」
アンジェリーナは、カバリュスが自分の上で苦しみながら死にゆく様を、何もせず黙って見ていた。
「姉上、マックスです。」
「お入り。」
アンジェリーナはカバリュスの遺体の上から退くと、ベッドの近くに置いてあったガウンを羽織った。
「カバリュス様は・・」
「マダムを呼んでおいで。客が腹上死したと伝えろ。」
「は、はい!」
アンジェリーナは少しずつ冷たくなりつつある男の屍に背を向けて、部屋から出た。
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