素材は
NEO HIMEISM 様からお借りしております。
イグノー酒店は、カバリュスの遺体が発見された現場からすぐ近くにあった。
「すいません、誰か居ませんか?」
クリスティーネとフィリスが店の中に入ると、店の奥から男の悲鳴が聞こえた。
「どうしたのかしら?」
「見に行ってみましょう。」
「あぁ。」
二人が店の奥へと向かうと、そこには木箱の下敷きになっている男の姿があった。
「大丈夫ですか?」
「これが大丈夫だって言えるのかよ?」
フィリスは慌てて男を下敷きにしている木箱を退けた。
「助かったぜ。空の木箱だったから良かったものの、ワインなんか入っていたら擦り傷だけじゃ済まなかったな。」
「あなたが、ナイル=イグノーさん?」
「あぁ、そうだが・・あんたら記者かい?」
「いや、俺達は川であんたが見つけた遺体の知り合いでね。ちょっと話を聞きたくて来たんだよ。」
「そうかい。今コーヒーを切らしちまって、紅茶しか用意できねぇが、いいか?」
「構いませんわ。」
数分後、店主・ナイルによって二人は店のテーブル席でナイルと向き合って座った。
「あの遺体を見つけた時、俺は丁度店の裏口にやって来る猫に餌をやろうとして、運悪く見つけちまったって訳よ。」
「さっき、近所のお婆さんから、遺体は酷い状態だったとか・・」
「おうよ。その所為で俺は上からも下からも垂れ流しちまって、災難だったぜ。」
ナイルはそう言うと、ズボンのポケットから美しい首飾りを取り出した。
「これは遺体が握っていたから、警官隊が来るまでに俺がかっぱらって何処かへ売り飛ばそうとしたんだが、縁起が悪いったらありゃしねぇ。」
「その首飾り、わたくしに譲って頂けないかしら?」
「いいってことよ。お代は取らねぇよ。」
「ありがとう。」
ナイルの店から出たクリスティーネはフィリスと共に辻馬車に乗り込むと、ナイルから受け取った首飾りを見た。
「これは、王妃様の首飾りだわ!」
「何だって、本当か!?」
フィリスがそう言ってクリスティーネが持っている首飾りを覗き込むと、それは紛れもなくアンジェリーナに盗まれた首飾りだった。
「鎖の一部が少し切れているわね。」
「あぁ。もしこの首飾りをカバリュスが死に間際に引きちぎったとしたら、あいつを殺した犯人は一人しかいない。」
フィリスはそう言うと笑った。
「どうしたの?」
「アンジェリーナがとうとう尻尾を出したと思ってな。」
「そのアンジェリーナだけど、突然姿を眩ませたそうよ。一体何処に行ったのかしら?」
「さぁな。だが、俺達はアンジェリーナに反撃する機会が来た、というわけだ。」
「そうね。」
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