一週間の自宅謹慎中、歳三は身体が鈍らぬよう、素振りをブリュネ邸で行う事にした。
朝の空気の中で素振りを行っていると、なんだか試衛館の頃に戻ったようだった。
『イジカタさん、おはようございます。』
『ブリュネさん、おはよう。』
歳三が素振りを終えてリビングルームに入ると、ブリュネがそう彼に挨拶した後、一通の手紙を手渡した。
『この手紙は、先程あなた宛に届きました。』
ブリュネから手紙を受け取ると、差出人の名前は、“チヒロ=レイノルズ”と書かれていた。
『ありがとう。』
ブリュネから手紙を受け取り、歳三は自室で千の手紙を読んだ。
『拝啓土方歳三様、ブリュネさんからあなたが軍で性的嫌がらせを受けた事を知り、あなたが心配で手紙を書きました。僕は毎日が忙しくて目が回りそうですが、何とかやっています。どうか、こんな事で屈しないで下さい。』
歳三は微笑んだ後、千からの手紙を大切そうに机の引き出しの中にしまった。
「大奥様、失礼致します。」
「フランツ、あの子はどう?」
「彼は良くやってくれていますよ。日々努力していますし、勉強家です。」
「そう‥彼はきっと、良い意味でこの国を変えてくれることでしょう。」
「わたしも、そう思っておりますよ。」
シャーロットはフランツと共に窓の外を見ると、そこには庭園でレイノルズ家の猟犬と戯れている千の姿があった。
『犬の扱いがお上手でいらっしゃいますね。今まで犬を飼育された事が?』
『いいえ、でも動物が好きなんです。』
『そうですか。犬は賢いですからね、動物好きな人はすぐにわかるのでしょう。』
レイノルズ伯爵家の猟犬番・ジョンが千とそんな話をしていると、邸の中から背が高い乗馬服姿の青年がこちらにやって来る事に気づき、慌てて彼は目を伏せた。
『誰かと思ったら、青い血を汚した女の息子じゃないか。』
青年はそう言うと金色の睫毛を揺らしながら、蔑んだような目で千を見た。
『初対面だというのに、失礼な方ですね。あなた、お名前は?』
『使用人風情が、僕に偉そうな口を利くな。』
青年はそう言って千を手に持っていた乗馬鞭で叩こうとしたが、その前に千が彼に足払いを喰らわせた。
『ごめんなさい、足が滑ってしまいました。』
『貴様、よくも・・』
『チャールズ、一体何の騒ぎなの!?』
『大奥様、これはご機嫌麗しゅう・・』
『お前の顔など見たくもない、さっさとここから出ておゆき!』
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