「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
土方さんが両性具有設定です、苦手な方は閲覧なさらないでください。
歳三は電車が病院の最寄駅に着くなり、むずがりそうになっている勇太を抱えて、駅の多目的トイレへと駆け込んだ。
便座の上に腰を下ろし、ネクタイを外してワイシャツの胸元を寛がせた歳三は、勇太に母乳を与えた。
彼を出産してから、何だか自分の身体が変わってしまっている事に歳三は気づいた。
授乳を終えた彼は、マザーズバッグからワイシャツを取り出した。
ワイシャツを着る前に晒しをきつく胸に巻き、勇太を抱いて多目的トイレから出た。
(この出口から左へ曲がればいいんだな・・)
そんな事を思いながら歳三がスマートフォンで病院までの道を確めていると、彼は誰かとぶつかりそうになった。
「済まない、怪我は無かったか?」
「あぁ・・こっちこそ、よそ見してて・・」
そう言って自分にぶつかってきた赤髪の男の顔を見た歳三は、彼が学生時代の友人・原田左之助である事に気づいた。
「左之、久しぶりだな?」
「土方さん、その子は?」
「あぁ・・こいつは・・」
原田にどう勇太の事を説明しようかと歳三が考えていると、原田は気を利かせて歳三にこう言った。
「こんな所で立ち話も何だから、後で落ち着いた所で話そうぜ。」
「あ、あぁ・・」
気まずい空気の後原田と互いの連絡先を交換した歳三は、そのまま病院へと向かった。
病院のロビーは、朝早い時間帯だというのに沢山の人で溢れていた。
「すいません、乳児健診に来たのですが・・」
「小児科は4階になります。」
「ありがとうございます。」
受付で小児科の場所を聞いた歳三がエレベーターに乗って4階に向かうと、扉が開いた瞬間、乳幼児特有の甲高い泣き声と、母親達の怒鳴り声が歳三の耳朶に突き刺さった。
何とか長椅子の空いているスペースに腰を下ろすと、見慣れないスーツ姿の彼に、母親達はヒソヒソと何かを囁き合っていた。
(面倒臭ぇな・・)
そんな事を思いながら歳三が健診の順番を待っていると、そこへ先程駅で別れた原田と赤ん坊を抱いた女性がやって来た。
「土方さん、また会ったな。」
「原田、何で・・」
「左之助さん、こちらの方はお知り合いなのですか?」
赤ん坊を抱いた女性はそう言うと、円らな黒い瞳で歳三を見た。
「土方さん、紹介するぜ。こいつは俺の嫁さんの紗奈と、息子の茂だ。」
「嫁って、お前結婚していたのか?」
「まぁな。それよりも土方さん、健診の後ランチでもどうだ?」
「わかった。」
歳三は急激に喉が渇いて来るのを感じた。
歳三が乳児健診の後に原田達に連れられて入ったのは、キッズカフェだった。
店内には子供が遊べるスペースがあり、授乳室もあった。
「駅で会った時、この子事俺が尋ねた時に、土方さん明らかに態度がおかしかったよな?何か事情があるんだろう?」
「左之、実は・・」
歳三が勇太の事を原田に話そうとした時、勇太が突然火をついたかのように泣き出した。
勇太のおむつが濡れているのかと歳三が彼の尻を触ったが、そこは濡れていなかった。
「済まねぇ、あの・・」
「話は後にしよう。」
歳三が授乳室に入ると、中に居た数人の母親達が彼に訝しげな視線を送って来た。
居たたまれない思いで歳三が勇太の授乳を終えると、一人の母親が突然彼に向かって話しかけて来た。
「ねぇ、もしかして土方君よね?」
「どちら様ですか?」
「やだぁ、あたしの事忘れちゃった?中学の時、クラスが一緒だった・・」
彼女の言葉を聞いた歳三の脳裏に、過去の忌まわしい記憶が甦った。
「この子、もしかして土方君の子?やだぁ、可愛い。」
「息子に触るな!」
歳三は勇太に触れようとする女の手を邪険に振り払うと、そのまま授乳室から出て行った。
「どうしたんだ土方さん、顔色悪いぜ?」
「ちょっと嫌な奴に会っちまった。」
「そうか。」
「左之、この子は・・勇太は俺が産んだ子なんだ。」
「父親は?」
「死んだ。」
「あんた、嘘吐く時はいつも目を合わそうとせずに頭を掻く癖があるよな?」
「ったく、お前ぇはいつも鋭いな・・」
歳三はそう言って苦笑した。
「それで、この子の父親は誰だ?」
「・・お前も知っている人だよ。」
「近藤さんには、この事は・・」
「知らせてねぇ。俺はあの人の家庭を壊すつもりはねぇ。」
「一度、近藤さんと話し合ったらどうだ?今は違うとしても、昔は愛し合っていた仲だろう?」
「俺の家族は、勇太だけだ。」
「何か困った事があったら、連絡してくれ。」
「あぁ、わかった。」
原田達とキッズカフェの前で別れ、歳三が帰宅すると、奥から仲居の鈴木理沙が何やら慌てた様子でやって来た。
「歳三様、良い所に帰って来ました。」
「どうした、何かあったのか?」
「芹沢様が歳三様にお会いしたいと・・」
「芹沢さんが?」
「はい。」
「わかった。」
スーツから着物に着替えた歳三が芹沢の待つ部屋に入ると、そこには高校の同窓会の夜にワンナイト・ラブを過ごした金髪紅眼の男が芹沢の隣に座っていた。
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