「どうしたの、カール?気分でも悪いの?」
そう言ってエリーゼは最愛の弟を見た。
「大丈夫・・」
カールはうつむいたまま、姉の後ろに隠れた。
「ごめんなさいルドルフ様、弟は人見知りが激しくて・・」
エリーゼは少しムッとした表情を浮かべるルドルフとそれを宥めるユリウスに詫びた。
「私達の方こそすいません。突然押し掛けたりして。」
「いいえ、ルドルフ様とあなた様はいつでも大歓迎ですわ。お茶の用意を致しますから、お待ちになって下さいませ。」
エリーゼはそう言って厨房へと入っていった。
「それにしても、豪華な調度品ですね・・私達が座っているこのソファ、いくらするんでしょうね?」
「そんなこと気にするな。」
赤いソファの両端には、金の植物文様が優美な曲線をベルベットの布地に沿って描かれており、座り心地は少し座ったら沈みそうなほどよかった。
そしてリビングに置かれてある壁時計には、ところどころにダイヤやルビーが嵌め込まれており、文字盤はプラチナだ。
ソファといい、壁時計といい、贅を尽くしたリビングを見渡して、これが貴族の家なのかと思った。
シュタイナー家のリビングに置かれてある調度品は、ユリウス達が一生働いても買えない代物ばかりだ。
エリーゼが着ていた薔薇色のドレスは、パリの一流の仕立屋がデザインしたドレスだと一目見てもわかる。
流行の最先端に身を包んだ姉と、シルクのパジャマを着た弟。
貴族は、ユリウス達庶民にとっては雲の上の人だ。
ルドルフはシュタイナー家よりも贅を尽くした調度品や宝石に囲まれて育ってきた。
だから豪華なソファに座っても、ユリウスみたいにもじもじしないのだろう。
「ルドルフ様、ユリウス様、お茶の用意ができましたわ。ダイニングの方へどうぞ。」
エリーゼはそう言ってルドルフとユリウスに微笑んだ。
ダイニングは白を基調とした、落ち着いた雰囲気の場所だった。
ダイニングには、深緑のドレスを着た黒髪の女性が蒼い瞳を細めてニッコリとルドルフとユリウスに微笑んだ。
「ルドルフ様、ユリウス様、紹介いたしますわ。義母のセリーヌですわ。」
「初めまして。我が家へようこそいらっしゃいました、皇太子様。」
セリーヌはそう言って椅子から立ち上がり、ニッコリと2人に微笑んだ。
「初めまして、マダム。お目にかかれて光栄です。」
「私もお目にかかれて光栄ですわ、皇太子様。今日はチーズケーキを焼きましたのよ。」
ルドルフとユリウス、そしてエリーゼとセリーヌの4人は、ダイニングで優雅なティータイム過ごした。
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