腰下まである長い金髪をなびかせながら、シンは剣を振るい、次々と敵兵を倒していった。
(絶対に、この国の人達を死なせはしない!)
敵を斬る度に、シンの全身に返り血が飛び散り、彼が身に纏っていたドレスは緋に染まった。
シンは休むことなく剣を振るうが、敵の数が多く、斬ってもキリがなかった。
「はぁ、はぁ・・」
肩で息をするほど激しく体力を消耗させながら、シンは剣を大理石の床に突き刺し、呼吸を整えていた。
「居たぞ、あいつだ!」
「逃がすな!」
バタバタと慌ただしい足音が聞こえてきたかと思うと、シンはあっという間に敵兵数人に囲まれてしまった。
(畜生・・)
突き刺した剣を抜き、シンはそれを振ろうとしたが、腕が痺れ始めた。
(こんな時に・・)
シンは何とか敵を1人倒したが、血に濡れた剣は重く、腕の痺れは増すばかりだった。
「息が荒いな。」
「これなら俺達にも勝ち目はあるな。」
2名の兵士達はそう言うと、シンに斬りかかった。
吐き気を堪えながら、シンは彼らを斬り伏せた。
彼らの全身から噴き出る血が、シンの金髪を緋に染めた。
シンは力尽き、床に蹲った。
「殺せ、あいつを殺せ!」
シンは立ち上がろうとしたが、眩暈が急に襲ってきて視界が歪み始めた。
(駄目だ、こんなところで・・)
ふらふらとしながらも、シンは敵に向かって剣を振るおうとしたが、敵兵の1人に剣を払われてしまった。
「これで終わりだ!」
耳元で敵兵の興奮に掠れた声が聞こえ、シンは死を覚悟した。
その時、視界の片隅に、なびく漆黒の髪が映った。
「全く、心配して来てみれば、こんなに暴れよって。」
「あ、あんたは・・」
シンがゆっくりと顔を上げると、そこには妖狐族の皇子・コウが立っていた。
「迎えに来たぞ、我が花嫁よ。」
黄金色の瞳を輝かせながら、コウはシンに手を差し伸べた。
「お母様、そのひと、だぁれ?」
背後から声がしてシンとコウが振り向くと、そこには呆然とした表情を浮かべながらシンを見つめているセトナが立っていた。
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