悠がジェファーから連絡を受け、彼の父親が経営している会社の社長室へと向かうと、そこには全身高級ブランドに包んでいる女性が、エメラルドの瞳で自分を睨みつけていた。
「あの・・」
「あなたね、従妹を困らせている坊やは?」
女性はそう言うと、悠の頬を叩いた。
「あなた、自分がやっていることがどれほど人を傷つけているとわからないの!?」
「やめろ、フェリシアーナ!」
「まぁ、あなたによくもそんなことが言えたものだわね!あなたに傷つけられて、どれほどあの子が傷ついたか・・」
フェリシアーナはそう叫ぶと、突然エルメスのハンドバッグを逆さにして大理石の床にその中身をぶちまけた。
「これを見なさい!」
フェリシアーノは一枚の写真をジェファーの眼前に突きつけた。
それは、胎児の超音波写真だった。
「あなたが従妹に別れを告げたとき、あの子は妊娠していたわ!けど失恋の所為で自暴自棄になって中絶したわ。それで・・」
「それで俺の所為でコカイン中毒になり、砂漠のど真ん中に放り込まれたと?じゃぁどうして彼女が昨夜のパーティーに居たんだ?」
「それは・・」
「フェリシアーナ、もういいでしょう、止めて!」
フェリシアーナとジェファーが言い争っていると、スザンナが社長室に現れた。
「スザンナ、何も心配は要らないわ。わたしが何とかするから。」
「止めて、あなたの所為で問題がもっと拗れてしまうのよ、わからないの!?」
スザンナはそうヒステリックに叫んだ後、ソファにもたれかかるようにして座った。
「あなた、身体が本調子じゃないんだから、駄目じゃないの!さぁ、家に帰って横になりましょう。」
フェリシアーノはそう言うと、スザンナの手を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
「あなた達、わたしがこれで引き下がると思わないで頂戴ね。」
「一体何をするおつもりで?」
「あなた方に従妹に精神的苦痛を負わせた慰謝料を請求するわ。近いうちに裁判所から連絡が来るだろうから、首を洗って待っていなさいよ!」
フェリシアーノはジェファーの顔に唾を吐きかけると、足音荒く社長室から出て行った。
「全く、厄介な奴だ。従妹のこととなるとすぐに理性を失う。」
「まぁ、俺が悪いんだから、俺が何とか解決しますよ。ユウ、行こうか。」
「う、うん・・」
ジェファーに手を掴まれ、悠は彼とともに社長室から出て行った。
「済まないな、さっきのは痛かっただろう?」
「大丈夫。それよりもこれからどうするの?」
「まぁ、それはランチを取りながら考えるさ。」
ジェファーとともに会社があるビルから一歩出ると、無数のカメラが悠達を取り囲んだ。
「あなたが、ジェファーさんのフィアンセですか?」
「前の婚約者からジェファーさんを略奪したという噂は本当ですか!?」
マスコミに揉みくちゃにされながらも、悠は少し離れた歩道でフェリシアーノがほくそ笑んでいることに気づいた。
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Last updated
2012.12.25 00:02:23
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