平安時代を舞台にしたファンタジー小説なのですが、怨霊が集まる「えんの松原」が舞台となっており、「えんの松原」に集まる「黒い鳥」の正体と、東宮・憲平が抱く優秀な弟に対しての激しい劣等感、そして彼が出会った音羽という少年との交流を描いた作品です。
憲平には双子の妹がおり、彼女はこの世に生まれてこなかった。
宮中には陰謀が渦巻いており、その陰謀に嵌められた者たちが怨霊と化してしまったというのは判るような気がします。
菅原道真公がこの作品に少し紹介されてましたが、彼は優秀であったが故に政敵に疎まれ、嵌められ、大宰府で非業の死を遂げ、怨霊となってしまった。
憲平と音羽が迎える結末は温かいものでしたが、作品を通して人々が心の奥底に抱く劣等感や恨み、憎しみ、そして希望や喜びといった感情をひしひしと感じました。