『お元気そうで良かったです。』
『ねぇステファニー、隣の方は?』
『はじめまして、ジョージ様。わたしはステファニーの婚約者・エドガー=セルフシュタインと申します。』
エドガーがそう言ってジョージに挨拶すると、彼は憧れの目でエドガーを見た。
『プレゼントは、後でお渡ししますね。』
『わかった!』
パーティーは、盛況だった。
「あなた、どうしてわたくしがあの子の誕生日をお祝いしなければならないの?」
「そう言うな。」
「あの子、何処か薄気味悪いったらありゃしない。あの女にそっくりね!」
「やめないか、こんな日に・・」
継母と父が自分の事で言い争っているのを偶然聞いてしまったジョージは、今にも泣きそうな顔をしながら自分の部屋へと向かおうとした時、彼は廊下でエドガーとぶつかってしまった。
『どうしたんだい、そんな顔をして?誰かにいじめられたのかい?』
『僕、要らない子なの?』
『そんな事はないよ。』
ステファニーからグレイ家の複雑な家庭環境を聞いていたエドガーは、そう言うと彼に微笑んだ。
『どうして、お母様は僕を嫌うんだろう?』
『ジョージ、君にはお母様が二人居るだろう?それはとってもうらやましい事なんだよ。』
『本当?』
『あぁ、本当さ。』
エドガーと共に客達の前に現れたジョージは、もう泣いていなかった。
「今日は楽しかったわ、あなた。」
「ジョージにプレゼントは?」
「そんなもの、はじめから用意していないわ。ねぇあなた、わたしやっぱりあの子を受け入れる事は出来ないわ。」
「あの子をひとりでフランスへと送り返すつもりか?あの子は物じゃないんだぞ!」
「だったら、孤児院にでも入れて下さいな!もうこれ以上、あの子の顔を見るのはうんざりなの!」
グレイ夫人がそう言った後、外から突然悲鳴が聞こえて来た。
「一体、何が・・」
グレイ氏が寝室から出ようとした時、一発の銃弾が彼の胸を貫いた。
「あなた!」
グレイ夫人が慌てて夫の元へと駆け寄ると、彼は息絶えていた。
「金を出せ!」
「やめて、殺さないで!」
グレイ夫人はそう言って強盗達に必死に命乞いしたが、無駄だった。
『今の、何の音?』
銃声を聞いたジョージが部屋から廊下へと出ると、そこは血の海だった。
「お父様、お母様!」
彼が両親の寝室へと向かうと、二人共死んでいた。
(何で、どうしてこんな事に・・)
突然の両親の死にショックを隠せず、その場に固まったまま動かないジョージのこめかみに、冷たい物が押し当てられた。
「声を出すな、出したら殺す。」
(誰か、助けて・・)
「跪け。何、すぐに両親の元へ送ってやる。」
ジョージは死を覚悟した。
だがジョージのこめかみに銃を押し当てていた強盗は、何者かによって倒された。
『ジョージ様、お怪我はないですか?』
『ステファニー・・』
ジョージはステファニーの顔を見た瞬間、安心して気を失った。
「あなた達は、強盗の顔を見たんですか?」
「えぇ。強盗は三人組ですが、一人はわたしが倒して、残り二人は家の裏口から逃走しました。」
ステファニーは、グレイ家に駆け付けて来た警官達に逃走した強盗犯二人組の人相を教えた後、毛布にくるまって震えているジョージの方を見た。
「ジョージ様はこれからどうなるのですか?」
「彼は、孤児院に行く事になりだろうね。」
「そんな・・」
「ジョージ様を、わたし達が預かってもよろしいでしょうか?」
「それは、構いませんが・・」
警察の事情聴取を終えたステファニーとエドガーは、孤児となったジョージを連れて宿泊先のホテルへと向かった。
『ジョージ様、もう大丈夫ですよ。今夜は一緒に寝ましょうね。』