「降って来たわね。」
「えぇ、そうね。酷くならない内に狩りを切り上げましょう。」
雨が降りしきる中、ルチア達は森の中を馬で駆けていった。
だが、狩りの効果は散々なものとなった。
「もう切り上げましょう。」
「そうですね。」
ルチアは角笛で狩りの終了を告げるよう係に命じたが、彼は突然暴れ出した馬を押さえるに必死でそれどころではなかった。
「どう、どう!」
「一体どうしたの?」
「わかりません、急に暴れ出してしまったので・・」
「ルチア様、向こうに休める場所があります!」
「そこで休みましょう。」
一行は、森の向こうにある狩猟小屋へと向かった。
「ここなら当分、雨風をしのげそうね。」
「はい、ルチア様。」
ルチア達は、嵐が過ぎ去るまで狩猟小屋に避難する事になった。
「何か食べられる物を持って来ます。」
「わたしも行こう。」
「二人とも、気をつけてね。」
ルチアはそう言って厨房へと向かうアンダルスとガブリエルを見送った後、窓の外を見た。
嵐は、まだ止みそうになかった。
一方、森の中では嵐を避ける為、木の洞穴に避難している民族衣装の男達は、向こうから“魔物”がやって来る気配を察知した。
「どうしたの?」
「何か良くないものが来る。」
「わたしに任せて!」
男の隣に居た腕に入れ墨を彫った女が、背負っていた矢筒から一本矢を抜き、弓を引き絞った後それを“魔物”に向けて放った。
「当たったわ!今の内に逃げましょう!」
「あぁ・・」
男達は洞穴から出ると、“魔物”から逃れるように、ルチア達が居る狩猟小屋へと向かった。
その厨房では、アンダルスとガブリエルが運良く食糧庫の中に保存されていた、腐っていない食べ物を見つけて歓声を上げた。
「早くルチア様にこの事を知らせないと!」
「君はここに居ろ。わたしがルチア様に伝えて来る。」
「わかった。」
ガブリエルがルチア達が居る居間へと向かったのを見送ったアンダルスは、外から誰かが扉を激しく叩く音がしたので、火掻き棒を掴んで彼は恐る恐る勝手口の扉を開けた。
「やっと会えた、姫様。」
「あなた達、どうしてここに?」
「アムリカ、ここなら安全だ!」
女の背後から厨房に入って来たのは、あの民族衣装の男だった。
「ねぇ、あなた達は何者なの?」
「わたし達は森と共に生きる、アウルの民です。」
「アウルの民?」
「エルムントから、あなた様のお話を良く聞いておりました。」
「お師匠様を知っているの?」
「知っているも何も、エルムントは我ら民族の末裔です。彼は音楽の女神と森の精に愛された逸材でした。自己紹介が遅れました、わたしはアムルと申します。」
「アムル、何故僕を“姫様”と?」
「それは・・」
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