素材は
コチラからお借りしました。
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
(誰だ、こんな夜中に・・)
歳三がそう思いながらインターフォンの画面を見ると、そこには泥酔した八郎の赤ら顔が映っていた。
『トシさん、開けて~!』
「わかったよ、今開けるから!」
歳三がドアロックを解除すると、玄関先に八郎はへなへなとした様子で座り込んでしまった。
「おい、しっかりしろ。」
「う~ん・・」
八郎はそう唸った後、トイレへと駆け込んでいった。
「ほらよ、水。」
「ありがとう。ごめんね、急に来ちゃって・・」
「それ飲んだら、寝ろ。」
「うん・・」
翌朝、歳三が目を開けると、キッチンの方から良い匂いがして来たので、彼は寝室から出た。
「あ、トシさんおはよう。」
「八郎・・」
「今ご飯できるから待っていてね。」
八郎はそう言って、慣れた手つきでフレンチトーストを作り、それを皿の上に置いた。
「はい、どうぞ。」
「ありがとう。お前、料理できるのか?」
「まぁね。花婿修業の一環ってやつ?」
「へぇ・・」
八郎は嬉しそうに笑った。
「なぁ、昨日何があったんだ?」
「パパが、僕を結婚させたがっているんだ。僕は、トシさんと結婚したいのに・・」
「八郎、俺は・・」
「だから、トシさんは僕の事だけを見て欲しいなぁ。」
歳三は、八郎に何も言えなかった。
「じゃぁね、トシさん。」
「あぁ。」
警視庁へと登庁した歳三は、何やら生活安全課の方が騒がしい事に気づいた。
「土方さん、久しぶりだな。」
「あぁ。左之、何かあったのか?」
「それがよぉ、この前俺達が摘発したガールズバーの従業員の中に、芹沢さんの娘が居たんだよ。」
「それで、結婚を控えている娘の為に、“事件をなかったことにしろ”って言われたのか?」
「あぁ。ったく、上層部のご機嫌取りなんてごめんだね!」
「芹沢さんに睨まれたら、お前ぇ山奥へ飛ばされるぞ?」
「構やしねぇよ。何処へ行っても、俺は、俺だ。」
「そうか。今夜、飲みに行くか?」
「え、いいのか?」
「あぁ。ちょっとお前ぇに、相談したい事があるんだ。」
「わかった。」
その日の夜、歳三と原田は、行きつけの居酒屋に来ていた。
「とりあえずビールとフライドポテト、あとは枝豆だな。」
「あぁ。」
タッチパネルで注文した料理が来るまで、歳三と原田は互いに愚痴を吐き合った。
「芹沢には参るぜ!」
「あぁ、全くだ!」
「それにしても、珍しいな土方さん。あんたがこんな店で飲もうなんて誘うのは?」
「八郎の奴、俺以外の奴とは結婚しねぇと言いやがった。」
「そりゃ深刻だな。警視総監の息子が独身を貫くなんざ、あの親父さんが黙っていないと思うぜ。」
「もう、どうすりゃいいんだ・・」
「まぁ、伊庭さんとは少し距離を置くのが一番だな。」
「そうしてぇのはやまやまだが、八郎の奴、俺の家知ってるんだよ・・」
「厄介だな・・」
「あぁ。」
歳三がそう言いながらフライドポテトをつまんでいると、スマートフォンに着信があった。
画面には、“沖田千鶴”と表示されていた。
「もしもし、千鶴?どうした、こんな時間に?」
『総司さんが・・』
「わかった、すぐに行く!」
「どうした、何かあったのか?」
「さっき千鶴から連絡があって・・総司が、死んだ。」
「それは、本当か?」
「あぁ。」
総司が交通事故で亡くなったと歳三達が知ったのは、その日の深夜の事だった。
「土方さん、原田さん・・」
「何があったんだ、千鶴?」
病院の霊安室の前で歳三達が会ったのは、顔面蒼白になっている千鶴だった。
彼女の話によれば、総司は迷子を交番へと届けた帰り道に、事故に遭ったのだという。
「信じられねぇ、この前、会ったばかりだっていうのに・・」
「わたしも、信じられません・・こんな・・」
千鶴はそう呟くと、痛みに顔を歪めてその場に蹲った。
「おい、どうした?」
産婦人科へと運ばれた千鶴は、切迫流産しかかっていた。
「総司の子、なのか?」
「はい。総司さんにお腹の赤ちゃんの事を話したら、とても喜んでくれて・・」
「そうか。」
「わたし、これからどうすれば・・」
「今は、休め。」
原田と共に千鶴の病室から出た歳三は、総司が迷子を送り届けたという交番へと向かった。
「えぇ、確かにこの人が、迷子を届けに来ました。その後、あんな事故が・・」
「事故を目撃されたのですね?」
「はい。急に黒塗りの車があそこの坂道で急発進してこの人を撥ねた後逃げていったんだ・・」
「轢き逃げ、か・・」
「黒塗りの車に、こんな顔の人が乗っていたな。」
そう言った中年の巡査は、一枚の似顔絵を歳三に見せた。
そこには、総司の勤務先の大学病院の院長・山田大助が描かれていた。
「一体、どういう事だ?」
「総司の死は、事故じゃねぇ。あいつは、“口封じ”の為に消されたんだ。」
にほんブログ村