素材は
コチラからお借りしました。
「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「それで、君は・・」
「少し考える時間をください。」
「わかった。」
歳三はホテルから出ると、溜息を吐いた。
いきなり同性と結婚してくれと言われても、“はい、そうですか”とすんなり受け入れる訳ではない。
しかし俊郎の頼みを断れば、色々と困った事が起きるのは目に見えている。
一体、どうしたらいいのだろう―歳三はその夜、一睡も出来なかった。
「トシ、顔色が悪いぞ?」
「あぁ、ちょっとな・・」
「後で話、聞くぞ?」
「ありがとう。」
昼休み、歳三は勇と共に屋上でコーヒーを飲みながら、昨夜俊郎とホテルで話した事を勇に告げた。
「そうか・・」
「俺、どうしたらいいのかわからねぇんだ・・」
「迷ったり悩んだりしている時は、とことん迷ったり悩んだ方がいい。」
「勝っちゃん・・」
「そういえば八郎君は、“昔”からトシの事が好きだったなぁ。」
「あぁ・・」
試衛館で勇と共に汗を流していた頃、八郎は良く遊びに来ては、自分からまとわりついて離れようとしなかった。
京に居た時も、戦が始まり蝦夷地へと向かった時も、八郎はいつも歳三の傍に居た。
「今度、俺が八郎君と話をして・・」
「それは駄目だ。あいつは、あんたの事を“昔”から恋敵だと思っているからな。」
「そうか・・」
「俺が、何とかする。」
歳三は八郎をその日の夜に自宅へと招き、彼に手料理を振る舞った。
「楽しみだなぁ~、トシさんの手料理。」
「八郎、話がある。」
「ねぇトシさん、勇さんには話したの、僕との結婚の事?」
「あぁ。八郎、俺はお前ぇとは結婚しねぇ。」
「何で!?」
「俊郎さんから、お前の精神状態を聞いた。“あの時”、お前を俺が抱いたから、その所為で・・」
「トシさんの所為じゃないよ。僕が、トシさんを想い過ぎたからいけないんだ。」
「八郎・・」
「トシさん、ごめんね。」
「いや、いいんだ。」
「食べよう、折角作った料理が冷めたら勿体ないよ。」
「わかった。」
「トシさん、これからは“良い友人”として僕と付き合ってくれる?」
「あぁ、いいぜ。」
八郎の顔を見て、歳三は少しずつ安心した。
日曜日、歳三は“真由美”としてめぐみママの自宅マンションに来ていた。
「いらっしゃい、待っていたわよ~」
「ママ、お邪魔しまぁす。」
めぐみママのホームパーティーには彼女の上客が来ていたが、その中には本田の姿はなかった。
「あの、本田さんは?」
「本田さんは、今日は“お仕事”で来られないそうよ。最近、忙しいみたい・・」
「へぇ・・」
本田の“仕事”を色々と調べた歳三は、彼が違法ドラッグの取引をしている事を掴んだ。
そして、彼が今日“仕事”で横浜の倉庫へ向かっているという情報を知った。
「すいません、少しお手洗いに・・」
「トイレなら、ここを出て左よ。」
「ありがとうございます。」
歳三はそう言ってリビングを出ると、めぐみママの部屋へと向かった。
『トシ、聞こえるか?』
「あぁ。めぐみママは、秘密の手帳を何処かに隠していると思うんだが・・」
歳三はそう言いながらめぐみの部屋を物色したが、めぼしい物は見つからなかった。
「真由美ちゃん、こちらグレイウルフの佐々木さん。」
「はじめまして。」
そう言って歳三に握手を求めて来たのは、ワイルド系の男だった。
「君、カワイイね。今夜、付き合わない?」
「もう、佐々木さんのいつもの悪い癖が出たわね。」
「お邪魔します。」
「え、いいの?」
「真由美ちゃん、佐々木さんには気を付けてね。」
「え?」
「あの人、“女喰い”で有名だから。」
「わかりました。」
佐々木のマンションは、都内の一等地にあった。
「さ、入って。」
「お邪魔します。」
「ねぇ、真由美ちゃんってさ、彼氏居るの?」
「さぁ、どうかなぁ~?」
歳三がそう言いながら佐々木の方を見ようとした時、佐々木にスタンガンを当てられ、気絶した。
(クソッ、やられた!)
歳三が目を覚ますと、そこは何処かの廃ビルだった。
「目が覚めたかな、お姫様?」
「てめぇ・・」
「お前が、“警視庁の姫”か。噂には聞いているぞ、目的の為ならばどんな手を使ってでも悪を裁く正義の味方だと。」
「俺を、どうするつもりだ?」
「それは、教えねぇなぁ・・」
佐々木が歳三に薄ら笑いを浮かべながら銃口を向けた時、廃ビルに捜査官達が一斉に雪崩れ込んで来た。
「姫、ご無事ですか!?」
「誰が姫だ!」
「申し訳ありません、副長!」
「斎藤、こっち頼む!」
「はい!」
その後、カルティエのママとグレイウルフの佐々木は、違法薬物取引と人身売買の疑いで逮捕された。
数ヶ月後。
「楽しみだなぁ、トシさんと京都旅行!」
東京駅でキャリーケースをひきながらそう言って笑顔を浮かべている八郎の姿を見た歳三は、渋面を浮かべていた。
「観光で行くんじゃねぇんだ。」
「え~、でも大学時代以来久しぶりだもん!」
「え~と、ホテルは・・おい、何で俺とお前が同じ部屋なんだ?」
「細かい事は気にしな~い!」
(何だか、嫌な予感がする・・)
京都に着いた途端、歳三は八郎に新選組の名所巡りをさせられ、大量のみやげ物を買わされた。
「はぁ、疲れた・・」
「トシさん、お休み。」
その日の夜、八郎は隣で熟睡している歳三の左手薬指に、指輪をはめた。
(終)
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