画像は
湯弐様からお借りしました。
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
「ジェフリー、あんたが今、どんな風に社交界で噂をされているのか、知っているのか?」
「さぁ、俺は社交界の事に疎くてな。」
「“ハ―リントン家の私生児を囲っている放蕩者”だとよ。」
ナイジェルはそう言うと、ジェフリーに新聞の社交欄を見せた。
そこには、海斗とジェフリーに対する悪辣なゴシップが載っていた。
「こりゃ酷い。ありもしない事を上手くさも本当の事のように書いているな。この記事を書いた奴は、記者よりも作家の方が向いているのかもしれないな。」
「ふざけているのか!?」
「いいや。ナイジェル、俺達に会いに来たのは、それだけじゃないだろう?」
「あぁ。」
ナイジェルはソファの上に腰を下ろすと、ジェフリーに一通の招待状を手渡した。
「来週末、アーリントン家で舞踏会が開かれる。あの人は、父親は・・カイトと出席しろと言って来た。」
「そうか。」
「俺は、これで失礼する。」
「ナイジェル、もう夜は遅いんだからここに泊まったらどうだ?」
「いいのか?」
「いいも何も、俺達は家族だろう?」
「わかった。」
海斗が寝室で眠っていると、外から大きな音が聞こえて来た。
(何?)
海斗がカーテンを開けて窓の外を見ると、向こうから黒煙が上がっていた。
「カイト、起きているか?」
「うん。それよりもジェフリー、あれ・・」
「何だか、嫌な予感がするな。」
ジェフリーがそう言った時、ナイジェルが居間に入って来た。
「ジェフリー、どうやらサザークの近くで騒ぎがあったらしい。何でも、ロマと警官隊が衝突したそうだ。」
「どうして、そんな事が・・」
「さぁな。今日はもう遅いから寝よう。」
翌朝、海斗達の元に一人の新聞記者がやって来た。
彼は、クリストファー=マーロウと名乗った。
「キット、良く来てくれたな。朝早くから済まない。」
「いいって事よ。それよりも・・」
クリストファーことキットは、そう言うとナイジェルの顎を掴んで自分の方へと振り向かせた後、その唇を塞いだ。
その直後、キットは暖炉の前まで吹っ飛んだ。
「もう一度こんな事をしてみろ、次は拳だけでは済まないと思え!」
「たかがキスでそんなに怒る事はないだろう。」
「黙れ、今すぐその舌を引っこ抜いてやる!」
「落ち着け、ナイジェル。」
ジェフリーは怒り狂うナイジェルを宥めると、ダイニングルームへと向かった。
「カイトはどうした?」
「まだ部屋で寝ている。昨夜は遅くまで仕事をしていたみたいだからな。」
「そうか。それよりもジェフリー、この家に使用人は居ないのか?」
キットは焼き立てのトーストにジャムを塗りたくりながら、厨房の方を見た。
「あぁ。使用人を雇う金がないからな。」
「じゃぁ、この料理は誰が・・」
「ジョー!」
「お呼びですかい、旦那。」
カツカツと義足を大理石の床に響かせながら、厳つい顔をした男がやって来た。
「彼はナイジェルが個人的に雇っている料理人のジョーだ。言っておくがキット、彼は俺とナイジェル、カイトの言う事しか聞かない。」
「そうか・・」
大きな肉切り包丁を握りながら自分の方を睨みつけるジョーに、キットはジャム塗れのトーストを一口齧った後、ジョーから目を逸らした。
「おはよう、ジェフリー、キット。そちらの方は?」
「俺はクリストファー=マーロウ、ロンドン・タイムズの記者をしている傍ら、戯曲を書いている。まぁ、キットと呼んでくれ。」
「カイト様、どうぞこちらへ。」
「ありがとう、ジョー。」
「アップルパイをお持ち致します。」
「ジョー、俺にもひとつくれないか・・いや、冗談だ。」
ジョーに睨まれ、キットはそう言って軽く咳払いすると、紅茶を一口飲んだ。
「それでキット、昨夜の事はわかったのか?」
「あぁ。サザークでロマ達が集会を開いていると、何者かの通報を受けた警官隊が駆け付け、小競り合いになり・・といった具合だそうだ。」
「一体、何があったんだろう?」
「それは今から取材しようと思っている。どうやら、この事件には何か裏があるような気がしてならないんだ。」
「キット、俺も一緒に行っていい?」
「俺も一緒に行こう。お前にカイトは任せておけないからな。」
「俺はそんなに信用出来ないか?」
「あぁ。」
朝食を済ませた後、海斗は身支度をした。
「カイト、入ってもいいか?」
「どうぞ。」
海斗はジェフリーが部屋に入って来た時、コルセットを締めようと悪戦苦闘している所だった。
「中々刺激的な格好をしているな?」
「からかう暇があったら、手伝ってよ!」
「わかったよ。それよりも、いつまでも男の俺がお前の着替えを手伝う訳にはいかないから、そろそろ侍女の一人か二人位雇わないとな。」
「そうだね・・」
「そんな悲しい顔をするな、カイト。」
そんな事を話しながらジェフリーが海斗のコルセットを締めていると、そこへナイジェルがやって来た。
「ジェフリー、少し見て貰いたい書類が・・済まない、カイト!」
ナイジェルは顔を赤くしながら、海斗の部屋から出て行った。
「どうした、ナイジェル?熱があるのか、顔が赤いぞ?」
「何でもない。」
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