画像は
湯弐様からお借りしました。
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
「ここか・・」
「ロマと警官隊が衝突した場所か。昨夜あんな騒ぎがあったのに、随分と賑やかだな。」
キットとナイジェルがそんな事を言いながらサザークを歩いていると、一人の女が彼らの前に現れた。
「お兄さん達、ちょっとうちに寄っていかないかい?」
胸元が大きく開いたドレスを着た女の職業を、二人は何となく察した。
「姐さん、何か知っているのかい?」
「知っているも何も、ロマはうちのお得意さんでね。」
「それじゃぁ、昨夜の騒ぎについては?」
「ハーリントン伯爵様が、サザークの治安を良くしたいが為に、ロマを一掃させる運動を進めているようだよ。」
「どうして、伯爵がそんな事を?」
「さぁね。」
「もしかして、暴動というのは伯爵の狂言かもしれないな。」
キットは現場近くにあるカフェで紅茶を飲みながらそう言うと、一冊の手帳を鞄から取り出した。
そこには、彼が取材して来た事件を纏めていた。
「凄いな。これは何だ?」
「あ、それは・・」
ナイジェルは、キットが手帳の端に自分の顔を落書きしている事に気づいた。
「見逃してくれ・・」
「ふん、いいだろう。」
「ありがとう・・」
「それにしても、ハ―リントン伯爵といえば、カイトの父親か・・何だか、因果めいたものを感じるな。」
キットとナイジェルがサザークからジェフリーの屋敷へと戻ると、客間から軽やかな笑い声が聞こえて来た。
「どうした、誰か来ているのか?」
「ナイジェル、お帰りなさい。」
ナイジェルが客間のドアをノックすると、中から見知らぬ女が出て来た。
「はじめまして、わたしはマリー。カイト様のドレスを仕立てに来ましたの。」
そうナイジェルに名乗った女―マリーは、榛色の瞳でじっと彼を見た。
「俺の顔に何かついているか?」
「いいえ。ただ、あなたは女装に向いていらっしゃるなぁと思いまして。」
マリーの言葉を聞いたキットが堪らず噴き出すと、ナイジェルに肘鉄を喰らい、その場に蹲った。
「やはり、カイト様にはペールブルーのドレスが似合いますわね。」
「そうかなぁ?」
「ペールブルーも似合いますけれど、他にもクリーム色や薔薇色、菫色も似合いますわ。アクセサリーは・・そうね、真珠のネックレスが似合いますわね。」
そう言うとマリーは、宝石箱の中から美しい真珠のネックレスを取り出した。
それは、エメラルドが先についているものだった。
「これは・・」
「カイト、このネックレスに見覚えがあるのか?」
「あの時、手放した、母さんの形見・・」
孤児院を救う為、海斗が断腸の思いで手放したネックレスは、再び彼女の元に戻って来た。
「これは、わたくしが質店から買い取りましたのよ。何でも、このネックレスを売りに来たのは若いお嬢さんだったようで・・まさか、そのお嬢さんがカイト様だったなんて!」
「このネックレスは、俺の母親の形見なんです。」
「まぁ。道理で、そのネックレスがカイト様に似合っていると思いましたわ。」
マリーは海斗の涙を、優しくハンカチで拭った。
「さてと、これから何着かドレスを作りませんと。そうね、ウェディングドレスも。」
「そんな、俺は・・」
海斗がそう言って頬を赤く染めると、ジェフリーが突然海斗の前に跪いた。
「カイト、俺と結婚してくれないか?」
「え?」
「俺は、生涯を共にするのならお前以外考えられないと思ったんだ。」
ジェフリーはそう言うと、海斗の左手薬指にダイヤモンドが鏤められたペリドットの指輪を嵌めた。
「本当に、俺なんかでいいの?」
「俺は、お前無しの人生は考えられない。」
ジェフリーは、そう言った後海斗を抱き締めた。
「嬉しい・・」
「まぁ、ご結婚おめでとうございます!」
マリーはそう言ってハンカチで鼻をかんだ後、首に掛けていたメジャーで素早く海斗のウェストを測った。
「カイト様の為に、最高のウェディングドレスをおつくりしますわ!」
「頼んだよ、マリー。」
玄関ホールでマリーと熱い抱擁を交わしたジェフリーと海斗は彼女達を見送った後屋敷の中へと戻ろうとしたが、その時彼らの前に四頭立ての馬車が停まり、その中からジェフリーの母・エセルが降りて来た。」
エセルはじろりと海斗を睨みつけると、彼女の頬を平手で打った。
「あなたね、わたしの息子を誑かしたのは!」
「やめろ、母さん!」
「いい事、わたしはあなたを決してロックフォード家の嫁とは認めないわよ!」
「認めてくださらなくても結構です!」
「まぁ、生意気ね!」
エセルは海斗の言葉に憤慨すると、そのまま馬車の中へと戻っていった。
「ごめん、ジェフリー、俺・・」
「謝るな。」
アーリントン家で開かれた舞踏会に、エリザベスは婚約者のジョーゼフと出席した。
―まぁ、あの方・・
―厚顔無恥もいいところだわ。
貴婦人達の非難の視線の先には、ペールブルーのドレスと、真珠のネックレスをつけた海斗の姿があった。
「カイト、そのネックレスはわたしの・・」
「いいえ、これは俺の母の形見です。」
「このっ・・」
「腐った性根は相変わらずだな、エリザベス。」
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